第4話 ふいに昔話をする君が向日葵のようで
「……そういやこの街、昔よりもSBSのジャンクショップ増えたな」
「──露骨に無視された……! あたしのスルースキル上がってる……」
少しずつ昔のようなテンションに戻っていく。そこに懐かしさと楽しさを感じながら、雷都もまだSBSをやっていたことに胸が弾んだ。もともと俺たちはSBS繋がりだからな。
「あっ! SBSっていえば、お前に見せようと思ってたもんがあるんだ」
無言で先を促す雷都を前に、隣のミノルとハルを一瞥した。小さく笑って、頷いてくる。
トートバッグに手を入れて、タイヨウを探した。……ある。この感触だ。
「これなんだけど──知ってるか?」
「……お前、これって」
手渡したタイヨウを受け取ると、しばらく検めてから雷都は俺を見つめる。気付くまでそれほど時間がかからなかったあたり、スペースシリーズのことは知っていたのだろう。
「買ったのか? 買うにしてもプレミアだぞ、これは」
「いや。最新式のSBSに襲われたところを助けてもらった」
「……誰かが遠隔でお前に渡したってことか?」
「っていうことだ。今のところ音沙汰なしだけど」
そこまで言って、少しハッとなる。今の俺、そういうふうに意識はしていないとはいえ、完全にプレミアを自慢するやつと一緒だ。ウザったがられるのは勘弁こうむりたい。
……まぁ、こいつらなら、あまり気にせずに聞いてくれそうではあるんだけどな。
「しかし、スペースシリーズか。奇遇だな」
「奇遇……?」
三人の声が揃う。しかしそれも気にせず、雷都はポケットからスマートフォン端末を取り出した。しばらく何かを操作していると、やにわに画面を俺たちに向けて見せてくる。接続された機体を示す欄に、“COSMOS”と映っていた。しかも、そのシリーズ名は──
「ええぇぇぇぇっ!?」
「ハルちゃん、流石にうるさいよっ」
「いやでもだって! これはしょうがないじゃん!」
衝動的に席を立ったハルをミノルが止める。一瞬だけ周りの視線がこっちに向いた。
雷都はそれを一瞥してから、いつもの寡黙な態度で俺のほうを見る。
「……この“COSMOS”ってのも、同じスペースシリーズなのか」
「あぁ」
「えっ、どこで手に入れたの? COSMOSって、シリーズの中でも最強の……!」
「ハルは昔から物知りだな。これは……まぁ、譲ってもらったものだ」
「譲ってもらえるなんて、雷都くんはやっぱり凄いなぁ……」
おおかた親戚にSBSをやっている人がいて……ということなのだろうか? それにしても、中学生にそんな代物を預けるなんてな。よっぽど信頼されてるんだろう。
けれど雷都はそこから話を広げるわけでもなく、ただ事実のようにそれを報告するだけで終わった。暑いから外に出るわけでもなく、ずっと休憩スペースの一角を占拠し続けて、くだらない話をして──昼になったらフードコートのご飯を食べた。そしてまた、夕方まで。
ひとつ思ったのは、雷都は昔と変わっているようで変わっていない。ただどこかに、あの事故についてのわだかまりを持っているような気がした。今日は一段と寡黙だったからな。
◇
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