第16話 道なき道を這いずり進む
“溜まりの深森”を走破するための装備のお話しです。着る物とか。
果たして褌一丁から脱することはできるのか。
※注
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
◇
そして僕はフウフウ、ハアハアの逃避行という名の急登坂&急下山で疲労困憊、頭真っ白バーン。
なのに、
ちなみにハナの足取りも軽い。
これは僕も入信するべきか。イヤないな。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
第五基門・同軸亜次元領域を開放。
“
古代文字をはじめ、あらゆる言語・その成り立ちから流布時系列構成を研究し明らかにしていきます。
さらなる研究の為の文字も含めての各種素材を所望します。データー不足による研究の停滞が見られます。よって一般言語の習得にはもう少々の猶予が必要となります。
と結論 ∮〉
おお、やっぱりな『言語チート、キター!』って言いたいけども、勝手に結論すな! 何を研究するって? そんなの求めてないよ。ただ目の前で
早く喋らせて。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
言語の研究は地勢的歴史的観点からもこの世界の成り立ち及び現況の情勢に至る各国家の比較文化論の基礎データであり、現況を把握する必要最低限の知識です。疎かにはできません。
また、些細な言語の勘違いから
と結論∮〉
マジ何言ってるかわからん。要らん、そんなモノ。そして後半は伝説巨神さんですか。“みなごろし”は関係ないし。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
投げやりで興味なし。
しかしながら大賢者による提案・採用が
来るべきその時、感涙に噎せる事だろう 。
と結論∮〉
却下。即。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
なぜに!
と結論∮〉
道なき道を這いずり進む。
ガールズなトークな腐的浸透汚染に疲弊感を深めつつ今日も今日とて逃避行に勤しむ僕。
もーね、休みたい。
やっぱり不思議なのはサキュバスっ娘は勿論、ハナにしてもそんなに疲れた様子が見られない。
「侯爵令嬢の責務として常に鍛えているから」とハナの談。
「冒険者として当然だろう」とはサキュバスっ娘。
それだけじゃないだろ。絶対違うだろ。
やはり
何より、身体スケールも一割増強程度には大きい。単純に人種的な違いか、或いはこの世界での魔力を受容出来るか出来ないかの違いか?
元々が虚弱体質気味の僕は抗議したい。ずるいじゃないかと。特にもうちょっと背が欲しいと。異世界全然関係ないけど。
森の中を歩くのに(特に安全性という意味で)裸のままなのは
「“お気に”のコートだったけど、もう着れないわね。もう返さなくていいから」と言われた。
確かに値の張りそうな黒く艶やかな黒いロングコートだ、って、オマエもか! さすが主従、気が合うなオイ‼
うん、意地でも返しますよ。洗濯せずに絶対。
しかし、デカい。このコート。サキュバスっ娘の身長は百八十センチを僅かにこえるか? 僕はだいたい百三十センチ位。その差は五十センチ。そりゃ裾を擦るって。
やっぱりサキュバスっ娘、背、高すぎ問題。それでも
ところで、黒のロングコートって言ったら偉大なる伝説の『剣技で接続』桐ケ谷先輩ですが、こっちはどう見ても、
「イイもの見せてあげようか」って言っちゃいそう。
自分で言って落ち込む。だって似合ってんだもん。
そこで見た目と動きやすさを考え、裾を端折り腹で縄を巻いて留め、袖も限界まで折返して長さを調整してみた。股下からハナのカーディガンを巻いて留めた褌が垣間見えている。
足は自らが編んだ草履履き。
結果、イケナイ紳士から出来の悪そうな丁稚小僧にジョブチェンジしていた。そうですか。異議申し立ての受付は何処ですか?
草履は自分で編んだ。冒険者の必須アイテムである『
この『
特に硬化性には定評があって、鋼鉄の壁さえも貫くと云う。
全て蜘蛛が自らの武器として使うのであれば、の話しだけど。
残念ながら一般人に出来るのは、採取した糸の太さを特殊な生成で変える事だけ。それでも柔軟性と丈夫さにおいては秀抜だ。
僕等が向かう方向とは大きく異なるが『
行ってみたいとハナが駄々を捏ねてサキュバスっ娘を困らせていた。
では僕も物は試しと、魔力っぽい何かを流してみた(正確にはイメージしただけ。だって魔法なんてわかんねーもん)。上手くいけば硬化して尖った岩場でも簡単に踏破できる、
結果はやっぱりの失敗。それも大失敗。
織組も何もかも全て解け、無数の細い糸屑に成下がり、あたりに雪の様に散らばって、消えた……。あらビックリ。二度と元には戻らなかった。持っていた
俺のせいじゃねーし。
本当は靴まで編込み出来るぐらいの数量は有ったはずが、そんな訳でちびった草鞋になった。そんなに怒る事ネ―じゃん。ゴメンナサイ。
『
巧妙な一度嵌ったら抜け出せないエグいネバネバ系罠から、死角から迫りくる角度を曲げての針の如く細過ぎて見えない刺突技まで、隠蔽能力の高さも相まって気付いた時には終わってる的な単体でも厄介なそれが、時には集団で襲ってくる。
群体であるなら正しく死を司る最強レッド・カテゴリーへと昇格し
だから、倒すことも、糸を採取することも難しく、『
因みにハナの姿はお貴族様御用達町娘風ドレスからヘビーデューティー且つちょっと綺麗めマスキュリンが入ったお洒落ハーディな動きやすい服装にチェンジしていた。靴だってマッチョで、でも酷く軽い魔物の素材をふんだんに注ぎ込んだ登山靴風のブーツだったりする。
ナニこの格差? いい加減に拗ねるぞ、そして泣くぞ。
訳は元々が
あの大きな移転石でも距離を考えると二人が限界っぽいらしい。
あー
自分の装備は自分が持つという冒険者のルールに従って各自に振りわけられ、僕は大荷物を背負わされている。
昭和の初めの二宮金次郎像を想像してほしい。児童虐待である。
それもあり、僕は疲労困憊だ。因みに二人は各自の『
二人の『
装備一式プラス飲食料分は楽々入るが、加えて僕の分の“水”を振り分けて持ってもらうだけで、あとは無理って程度。まあ、水は重いし容量も大きい。
だからラノベの『多機能風呂付き一軒屋』は土台無理な話で、夢の無い話で恐縮なんだけど、
それも、また燃費が最悪で
ちなみに『
『ステータスオープン』なぞVRゲームじゃないんだから出来るはずもなく、頭に思い描いたらモノが出てくるはずもなく、酷く現実的で地味な仕組みだった。
紐で縛って井戸の底で冷やすスイカ状態って言えば分かり易いかも。
使う糸は
その一点だけで
常時に渡り異次元の維持と糸に魔力を通し続けるとなると、やはりそれなりの量の
『整理せずに闇雲に札を増やし糸が絡まる。最終的に何を入れたか判らなくなり、冷蔵庫の死蔵納豆化する』は
地味過ぎて泣ける。転生冒険者ラノベを舐めてるのか!
それを避ける為にハナがやっている様に
僕も
『いや、まだ、ちょっと、魔法陣が……』
などと要領を得ず、情報が集まっていない等と言い訳して相変わらずのダメっぷりだった。使えない。
『アーカイブにはストレージ規範しかブツブツ……』『あれでは……ブツブツ……効率性が……ブツブツ』。『あれでは……あれは……』
何で背負い袋がこんなに重い。これだけでも何とかして。
因みに失われた古代魔法にて作成された“
噓っぽい。絶対デマ。
でもね……。
似非に依ると実はスタンダードな魔法の鞄の理屈も物質の全てを量子まで分解する事から物理的な熱交換はもちろん、劣化という化学変化も起こさない。よって腐食や温度変化は起こり得ない。
はずが、長い時を経て、余計な“観念”が
要は“
魔法理論とか魔法体系整理とか皆無っぽいもんな。“痛系呪文”だし“陰陽系っぽい五行思想”だし。
そんな強固な思い込みに掛かる膨大な量の“
熟練の腕と長い時間を掛け仕上げる職人の仕事らしいが、その“表象印契”も親から子への口伝での一子相伝で……まあ、変遷しちゃうわな。改善しようにも体系化された理論もないし。
だから改悪される前の
もしこの話しが本当で、似非が魔法陣を解明できたなら
頑張れ似非大賢者様。そしたら似非を取ってやってもいい。
ッて言うカ、そんな美味しい話があるならトットと造れヤ、コラ!
まあ、今は背中の大荷物をなんとかしてほしい。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
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