第118話 1つの終わりと滅びの始まり
世界中から人が集まり、全ての欲望を満たせる街。
東京。
夜にも高層ビルが明るく、料亭は広い敷地で上品な灯り。
とある高層ビルでは――
ズシュン ズシュン
2mほどの人型が、アクチュエーターの足音を立てた。
MA(マニューバ・アーマー)の中で、室内に突入できるサイズだ。
二本足で立ったまま、両手には大型ライフル。
白い装甲には、“POLICE” の、黒い太文字。
両肩には赤ランプがあり、回転しながら、お馴染みの光を放っている。
3機ずつで、4つのグループ。
都心にあるビルを包囲していて、パトカーや機動隊の姿も。
「警視庁の特殊機動隊が到着しました! ……はい! 彼らが制圧した後に、突入します!」
バタバタバタ
上空で、警察のヘリが飛んでいる。
今は、深夜だ。
『葉桜3より本部へ! マヴロス芸能プロの事務所に、大きな反応はなし! ただし、傭兵と思われる武装集団が中にいる模様』
遠巻きにいる人々は、スマホのカメラを向けつつ、好き勝手に騒ぐ。
「すげーな!」
「
そのビルを見られる屋内でも、窓際に集まっている。
現場指揮官は本部の許可を得て、いよいよ命じる。
「特機は所定の位置から、順次突入せよ!」
爆破により、下ろされた隔壁が吹っ飛ばされた。
『警察だ! 武器を捨てろ!!』
大型ライフルを向けている先頭のMAに、ライトマシンガンの弾幕。
応戦する。
ドドドド!
生身で扱えないライフルによる実弾。
即席の陣地は、圧倒的なパワーで蹴散らされた。
今回は、対テロの扱い。
ズシュン ズシュン
前進するMAは被弾により、凹みができて、肩の赤ランプも破壊された。
『
『『了解』』
半身を隠せるほどのシールドを構えたMAが、立ち止まった、傷だらけのMAを追い越した。
先頭だった藤井は大型ライフルの銃口を下げて、違うポジションに加わる。
飛び出してきた敵が、ロケットランチャーを発射。
飛んできた弾頭は、MAの肩装甲で跳ね返り、天井で大爆発。
ビルが揺れる。
――マヴロス芸能プロの事務所
フロアが揺れた。
海外ブランドの家具による、いかにもベンチャー企業らしいオフィス。
その役員机にいるのは、ポイソ・ウシオンだ。
100万円は下らないボトルを開けて、同じく高そうなグラスに注いだ。
ぐいっと、一気飲み。
タンッと、グラスを置いた。
「まさか、ギャルソンが情報戦に負けるとは……」
男子の声で、謝罪。
『ごめん! ドジった……』
今の事態は、マヴロス芸能プロの犯罪歴が、証拠付きで警察に届けられた結果だ。
間違いなく、
こうなった以上、もはや頼りになるのは、雇った傭兵だけ――
ピロロロ ガチャッ
『よう、ボス! 追加の入金がなかったから、これでお仕舞いだ!! 俺たちはもう、銃弾一発すら使えない。んじゃ、達者でな!』
ブツッ ツーツー
ガチャッ
内線の受話器を置いたポイソは、ふーっとため息。
残った相棒のAIに、声をかける。
「行きたまえ、ギャルソン! このままでは、君も逃げられなくなってしまう……」
『い、嫌だよ! ポイソも一緒に――』
「もはや私は、国際的な指名手配だ……。生き延びて、何になる? 金融機関に預けていた資産は、全て凍結! どこの刑務所でも、死んだほうがマシな扱いだ」
ポイソは役員用の椅子にもたれ、独白する。
「祖国のスラムで飢えた末にくだらない死に方をするより、幸せだよ……。君のおかげで、一時的とはいえ、何でも手に入った。後悔はない」
『また、会える――』
「アデュー!」
決別。
『さよなら……』
ギャルソンは、どこかへ消えた。
いよいよ、1人になったポイソ。
爆発物により突入してきた、警察のMAを見る。
『ポイソ・ウシオンだな!? 誘拐ならびに――』
「君たちは、一緒に来てもらう」
座ったままで笑顔の男に、MAが発砲しようとするも、遅かった。
ビルの1フロアーで、全てのガラスが吹き飛ぶ。
外へ逃げ出すように、炎やオフィス家具も空中で舞う。
空を飛んだ警察のMAは、ビルの鉄骨のような音と共に、地面へ埋まった。
砲弾のように降ってきた物体で下敷きになった者や、飛び散った破片で負傷する者。
別のビルで窓際にいた1人は、槍のように飛んできた物体で貫かれた。
祭り気分だった人々は逃げ惑い、地獄絵図に。
しかし、悪は滅びたのだ。
『……許さない』
ギャルソンと呼ばれたAIは、ある場所へ――
室矢カレナは、何もせず。
彼女に義務はなく、ただ自身を狙ったことの報復。
けれど、事態は再び、動き出す。
海上のリゾート地である、ネオ・ポールスター。
そこに隠された、置き土産で。
しくじれば……。
東京を中心に、本州は上下の2つで分かれつつ、同心円状にくり抜かれるだろう。
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