第102話 裏で何があったのか?(後編)
『
「だったら! どうして、あの高級料亭で話してくれなかったんですか!? そうしたら、私だって……」
『
「ごめんなさい。言い訳になるけど、いつもの癖で……。私、『仕事の付き合いで、よく料亭に連れていかれる』と言ったわよね?」
「え、ええ……」
ゆいは『まどか』が誤解しないよう、丁寧に説明する。
「彼らは政治家やサラリーマンで、上の立場! もちろん、芸能界の監督、プロデューサーもいるわよ? だから、『他で埋め合わせをする』という条件で、事前に話を決めておくことが多いのよ。私は場を和ませるため、ニコニコしながら、同席するだけ! 険悪な雰囲気になったら、わざと馬鹿なことを言うのも、お仕事ね……。そっちに慣れ過ぎてて」
彼女は彼女で、苦労しているようだ。
その料亭は、れっきとした老舗。
お酌はあっても、エロい行為はなし。
「そういうわけで! ビジネスライクに話したの……。ゆっくり考えて、信用できる人間に相談したことで、ようやく理解したわ! 結論から話すべきではなかった」
女子同士の話し合いは、相手に共感することが大事。
それが抜け落ちていたのだ。
ため息を吐いた『ゆい』は、淡々と続ける。
「あなたが通っていた公立高校。そこにも、私のファンがいて……。念のために、見ててくれるよう、お願いしたの! 数人の女子に……。それと、ウチの社長にも、
その社長である
「ああ……。瀬本くんから依頼を受けて、実行した。今更だが、川奈野くんには、多大な迷惑をかけたな? 私のせいで、すまなかった」
恐縮した『まどか』は、同じく頭を下げる。
「いえ! 社長に助けていただいたおかげで、こうやって、安全な場所にいますから……」
ポテチを食べていた
「事実の確認は、これで済みました……。まどかも混乱しているでしょうし、お開きに! あとは、私と
それぞれに退室する中で、『まどか』はジーッとこちらを
まだショックを受けている『まどか』が、向き直る。
「えっと……。せ、瀬本さんにも、お世話になりました……」
ゆいは、こくりと
当事者の1人である悠月
霊体化している
まどかは、自分の気持ちを伝える。
「正直なところ、まだ……あなたを信用できません。全てが終わった後で辻褄を合わせたストーリーを聞かせただけ、という可能性もありますから! あなたは、それだけの演技ができる人」
目を伏せた『ゆい』に、『まどか』が話を続ける。
「だけど……。私も、招待された高級料亭で自己完結をしました! あの時に、きちんと話し合っていれば……」
深呼吸をした『まどか』は、決断する。
「今は同じ学校に通うクラスメイトですし、改めて友達になりましょう。その上で、あなたを判断していきます」
◇
新しい環境では、前の高校のような騒ぎとは無縁。
ようやく落ち着いた『川奈野まどか』は、ふと気になる。
「
「ん? 何かしら?」
振り返ったのは、自分のマネージャーである若い女。
「前に、気をつけろって……。結局のところ、何だったんですか?」
『瀬本ゆい』についての、警告だ。
ため息を吐いた水口は、周りを見た後に、まどかの耳元で
(私が教えたとは、言わないでよ? ……女の子も好きらしいの)
ゆいが『まどか』を気にかけて、これだけ親切だったのは――
思い返せば、妙にしっくりくる。
恋愛感情があったから、これほど……。
「あああ、あの! 私、瀬本さんとの仲直りで、今度ホテルで食事をすると約束しちゃって……」
察した水口は、両手をグッとした。
「頑張れ♪ ……私は、打ち合わせがあるから!」
余裕の芸歴だ。
トラブルの回避力が違いますよ!
焦った『まどか』は、カレナと皐月に助けを求めた。
霊体化したままの如月は最高のテンションで、踊り続けている。
――どこかの現場
「いいねえ……。このまま、次のシーンもいただいちゃうよ~!」
責任者の上機嫌な声を聞きながら、チェアに座っている『ゆい』は自分のスマホを見る。
“室矢さんと槇島さんも、参加したいそうです”
「じゃあ、そろそろ……あれー!? ゆーちゃん、どうしちゃったの!」
次の撮影を始めようとした責任者は、選挙で落ちた直後の候補者のような『ゆい』を見て、思わず叫んでしまった。
――数日後のホテル
1人1万円ぐらいのレストラン。
バイキング形式で、女子高生4人がテーブルを囲む。
引きつった笑顔の『まどか』は必死に、ゆいのアピールを
その一方で、『まどか』の奢りでやってきたカレナと皐月は、暢気に食べていく。
「やはり、美味しいです」
「値段が違うからね……」
川奈野まどか。
彼氏よりも先に彼女ができるかもしれない、お年頃。
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