第76話 メガフロートに役者が揃った
ウィーン
電子機器が立ち上がる時に、特有の音。
正面と左右のモニターで、OSのロゴ。
外の景色が映し出され、ヘルメットの内側に機体データが表示される。
自身のバイタルデータも……。
軍人らしき男の顔と、低い声。
『聞こえるか、
狭い空間に挟まっている男子は宇宙服のようなヘルメットを被ったまま、返事をする。
「こちら、悠月……。感度、良好です。どうぞ?」
『
「了解! 『りんどう』は機体のチェック完了後に、武装を受領。フィールドへ進出します」
『模擬弾だが、場合によっては死傷もあり得る。リタイアの判断は、そちらに任せるぞ? ……健闘を祈る!』
敬礼の後で、軍人を映している小さな画面が消えた。
ため息を吐いた男子は、自動的に進むチェックリストの列を見ながら、独りごちる。
「やれやれ。せっかくのメガフロートで、こんな役かよ……」
全高4mのロボット。
人と同じシルエットだが、銃弾を跳ね返す装甲と、瞬間的にヘリと同等の機動力になるスラスター。
各スラスターは一通り動いた後で、定位置へ戻った。
二本足で立っている床が端のランプを光らせつつ、ビービーという警報音と共に移動していく。
ガコンッ
音を立てて、床が停止した。
上と左右に備えられたアームが動き、戦闘機のパイロンに相当する部分――両肩、背中、両腕、両足のハードポイント――に、シールドや火器をマウントしていく。
MA(マニューバ・アーマー)のパイロットである悠月は、表示された火器リストを見た。
「チェック、チェック、チェック……。火器の動作確認、シーカーオープン! リスト1から順番に!!」
FCS(火器管制システム)がシミュレーション上で、蛍光色のレチクルを次々に映し出した。
キーボードを叩き、発砲までの流れを見た。
「よしよし……。じゃ、行きますか!」
悠月は両腕を内部へ差し込み、トレース開始。
機体の両腕が思い通りに動くことをチェックした後で、待機する。
再び、床が動き出した。
◇
アイドルの格好をした美少女が、訪れた観光客に案内する。
『日本でありながら日本でない! 新世代のアミューズメント施設へ、ようこそ! ここは、ただの海上プラットホームではありません。産学連携の研究施設であると同時に非日常を楽しめるリゾート地の、メガフロートです!』
アイドルの後ろにある大型モニターが、全体マップを映し出す。
東京の沖合いに建設された、海上の複合施設。
それが――
『ネオ・ポールスター! 略して、ネスターです!! マスコットのネスター君も、よろしくね~♪』
彼女の横に立っている、ゆるキャラのような着ぐるみが、オーバーアクションで手を振った。
ハイテンションの美少女は踊って歌うように、説明を続ける。
『連休を利用してのご訪問、誠にありがとうございます! たっぷり楽しんでくださいね? 最後に、ぜひ見ておきたいプログラムをご紹介します』
大型モニターには、軍用MAの姿。
おおっ! と、声を漏らす群衆。
『本日は何と! 日本の陸上防衛軍が開発している新型MAのお披露目でーす!! 東京では絶対に見られない、注目カード! 「りんどう」と名付けられており、元ネタの花言葉は「勝利」「正義」……。気になる対戦相手は!』
大型モニターの映像が、切り替わる。
そこに映し出されているのは――
『
ネスター君と一緒に、アイドルは退場した。
「USとの対戦は、見ておこう!」
「途中で事故が起きても、保険の免責になるんでしょ? 怖いわ……」
「アイドルフェス……。マキちゃんを推して、推しまくるぞ!」
「えーと。海外ブランドを売っているショップは……」
「日本にいながら外国と同じで、助かるね!」
解散していく集団。
その一部に、
ガイドをしている
「男子はどうせ、MAの模擬戦を見たいでしょ? 別行動で、買い物やアクティビティにする?」
今は、日当をもらっているバイトだ。
「私たちは、どうするの? 男子のグループにも同行しないと……」
最後の女子大生である
「私が付き添います! 先輩たちは、ゆっくり楽しんでください!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます