第74話 東京よ、私は帰ってきました!
日本の中央省庁が集まっているエリアの1つに、警察庁。
その上級幹部が使う、窓のない会議室。
ホームシアターを思わせる空間に置かれた細長い円卓には、幹部がズラリと並んでいる。
「本日、皆に集まってもらったのは、他でもない」
沈痛な声のまま、議題を告げる。
「あの
制服やスーツを着たキャリアは、ざわめいた。
「そんな!」
「どうして、私がいる間に……」
「当時の長官を続けて辞任させた、あの……」
「殺しても死ななかったそうだ」
扱いが、恐怖の大王。
あなたはどれだけ、我々の前に立ち塞がるんだ!?
「ほ、本当に、彼女ですか?」
重々しく
「残念ながら、そのようだ……。幸いにも引っ越しではなく、一時的な観光と聞いている。警視庁は、十分に注意してくれ! 彼女が派手に暴れたら大惨事だ。ネイブル・アーチャー作戦の連合艦隊を叩いた当事者であることも忘れるな!」
「ハッ! 改めて、通達を出します!」
「何もなければ……良いのだがな?」
今、フラグが立った気がする。
「そういえば……海上プラットホームはどうなっている?」
「特に、問題は……。東京の沖合いの有効活用で、良いモデルケースになっているようです。漁業の関係者は、まだ反対していますが」
「MA(マニューバ・アーマー)の開発や運用など、過密した東京では不可能な実験も行われていて、好評ですね」
「日本が主導権を握りつつも、海外からの投資と優秀な外国人の受け入れとなっています」
「海上プラットホームの警察署で、気になる報告はありません!」
「室矢カレナとは関係ないでしょうね……」
「流石にな?」
「「「ハハハハ!」」」
見たまえ!
フラグが、林のようだ!!
◇
高速鉄道の車内は、スピードのわりに揺れていない。
「「次は、東京~♪ お忘れ物なさいませんよう、ご注意ください♪」」
隣り合って座りつつ、頭の動きをシンクロさせつつハモり出した、室矢カレナと
ものすごく、可愛い。
周りに座っていた面々が、突っ込む。
「急に、どうしたの?」
「東京はやっぱり、テンション上がるよね!」
「何を食べよう……」
せっかくの連休とあって、
女子3人は、観光ガイドブックと睨めっこだ。
男子2人も女子とは違う視点で、同じく観光の予習。
「うーん……。全部は、無理だよな?」
「そうだね。数日だから、どうしたものか……」
減速したことで、周囲に電車が行き来する、いつもの光景に。
「うわ、すごい!」
「地元じゃ、1時間で1本なのに……」
「ぶ、ぶつかりそう……」
「こんなに電車を走らせて、人が乗るのか!?」
「連休だから、利用者が多いんだろ……」
彼らは、東京を知らず。
明るい電子音のメロディーが流れ、今度は本物のアナウンス。
『次は東京ー! 東京ー! 乗り換えは――』
周囲の乗客が立って、自分の荷物を降ろす。
それを見た高校生グループは、慌てる。
離れた席にいた『れいかチャンネル』の女子大生3人も、立ち上がる。
「ふあぁあっ! あー、着いた、着いた……」
「い、生きて帰れたわ」
「ええ、本当に……」
マイペースな
いよいよ高速鉄道の終点に辿り着き、車両が止まる。
プシュー!
側面の扉が開き、ドカドカと乗客が降りていく。
ホームは、これから出発する人の見送りや迎えに来た人で、ごった返す。
この場のリーダーになっている怜奈が、カレナを見た。
「来た直後で悪いけど、制作会社のほうへ来てもらって――」
「その件は、もう終わっているはずです」
「いや。そういうわけには……あらら?」
反論しながらスマホを見た怜奈は、指を動かしつつ、驚いた。
返信後に、電話をかける。
「荒月です! 今、東京に戻りまして……はい! ……室矢さんは、そちらへお連れしなくてもいいと? ……分かりました。失礼します」
スマホの画面を触った後で、キョトンとした顔に。
「あ、うん……。もう、いいって! じゃあ、これで――」
「せっかくですから、もう少しご一緒しませんか? 東京に住んでいる人のガイドのほうが安心です」
カレナに視線を向けられた
「そうだね! まあ、そっちが良いのなら……」
怜奈は興味なさげに、片手を振った。
「パス! 私たちは修学旅行の引率じゃないのよ? 自宅に戻って、休みたいし――」
「一緒に遊ぶだけで日当1万円のバイトですが……」
ピクピクと、怜奈が反応している。
それを見た女子大生2人は、密かに思う。
(のらないで、怜奈!)
(レナ先輩……。もう止めましょうよ?)
「1人につき、日当1万円ですよ? 実費は別として……」
カレナの追撃に、
「まさか、連休の間で?」
「ええ、そうです」
「怜奈、受けよう!」
(メイ先輩ー!?)
私だけでも、しっかり断らなきゃ! と決意を新たに――
「今なら、パティシエのケーキが食べ放題ですよ?」
「受けます!」
即堕ち2コマ。
体は、正直だった……。
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