第35話 心霊スポットの女子大生3人【芽伊side】
私は配信用の器材とバッテリー、それにスマホなどの貴重品をバッグに突っ込み、自宅を出た。
他の2人も落ち着かないようで、現地入りをした後で判断する予定だ。
小声で、自撮りの収録をスタート。
「えー。れいかチャンネルです! 今、私は、あの
どの映像を使うのか? は、編集をする時に決める。
他県へ移動できる主要駅で、
そのまま高速鉄道に乗り、ローカル路線へ乗り換え……なのだが。
「いいじゃん! 面倒だし、明日の夜ってことで……」
怜奈の一言で、私たちは多冶山学園がある県で、主要駅の傍にあるビジネスホテルに泊まった。
ネットで知り合い、往復の交通費は、全てSNSの投げ銭でもらったから、個人情報を出していないよ? とは、怜奈の談。
まったく、いい加減なんだから……。
私は質問がてら、状況を確認する。
「約束したのは、多冶山学園から少し離れた場所で……夜に?」
「うん! まあ、今日も明日も同じでしょ! ってか、連絡先を知らない!」
「レナ先輩は、いつも適当……」
後輩の春花は、落ち着いた声でツッコミを入れた。
それでも、久々の県外だ。
私たちは観光気分で、駅前のショップを回り、ビジホでゆっくり過ごした。
高校の修学旅行を思い出す。
――翌日の朝
「おはよー」
「……おはようございます」
「おはよう……」
私たちはビジホの部屋で、買い置きのパン、サンドイッチを食べながら、チェックアウトの準備。
広げていた荷物をまとめて、それぞれのバッグへ押し込めていく。
ピッ
『県警は機動隊の1個大隊を投入して、多冶山学園に突入する予定です! ご覧のように、応援でやってきた隣県の機動隊もズラリと並んでおり――』
私たちは、テレビの映像に釘付け。
ごくりと
「せ、先輩……。本当に、ここへ行くんですか?」
拡声器を持った、隊長らしき人物が立ち、投降を呼びかける。
『こちらは、――県警だ! 多冶山学園にいる者たちに告げる!! ただちに武器を捨てて、投降しろ! 我々は、数日中に突入する。その際に残っていれば、命を保証できない! 繰り返す! 我々が突入した場合には――』
モニターの中では、殺気立った機動隊が、戦争をするかのように準備。
よく見る大盾だけではなく、サブマシンガン、小銃、グレネードランチャーまで……。
不安になった私も、怜奈を見た。
けれど、彼女は言い放つ。
「こ、こんな、絶好のチャンスは、二度とないわ! 約束した場所に行くだけ、行ってみましょ? ……それで何もなければ、諦めるわ」
――多冶山学園から離れた場所
日が暮れた。
山の夜は、塗り潰したような暗闇だ。
そして、耐えがたい冷気。
雨が降らなかったのは、本当に幸いだ……。
最寄りのバス停から歩きで、足が痛くなってきた。
山を挟んでいるため、県警の大部隊には察知されず。
手持ちのライトで地面を照らしつつ、約束した場所へ向かう。
先頭の怜奈は、意気揚々と進んでいる。
けれど、私は、暗闇に踊る、長い金髪を見た。
慌てて、前を進んでいる怜奈の肩をつかむ。
「な、何!? 驚かさないでよ! ……ムグムグ」
もう片方の手で、彼女の口を塞いだ。
(誰かいる! 静かに!! ライトを消して!)
耳元で
カチッと音が鳴り、片手で持つライトが消える。
最後尾の春花にも知らせて、その場でしゃがむ。
「ギャアァアアッ!!」
静かな山の中に、男の絶叫。
聞いただけで、重傷か命に関わると、分かった。
「た、助けデェ――」
高速鉄道が通過したような音が、それを打ち消した。
さらに、ドオオンッと、ソニックブームのような轟音。
ミサイルが着弾したように、少し先にある場所が吹き飛ぶ。
辺りを照らす黄金の光は、すぐに止んだ。
「え?」
「な、何?」
「うそ……」
私たちは思わず立ち上がり、そちらを見るも、元の暗さに戻った夜が広がるだけ。
初めて弱気になった怜奈が、私たちに提案する。
「や、やっぱり、帰ろ――」
ウ――!
パトカーらしきサイレンが遠くで、鳴り響く。
「マズッ! 戻ったら、警察に捕まっちゃう!? べ、別の場所から、街に帰らないと!」
怜奈は手に持つライトをつけて、その光を頼りに、前へ走り出す。
私と春花も彼女の背中を追い、山道を走る。
崖のような場所に、開いたままの入口。
中はトンネルのように照明があり、奥まで続いているが、問題はなさそう。
振り返った怜奈は、私たちに宣言する。
「たぶん、ここから多冶山学園に入れる! 別の出口へ行けば、警察に出会わないルートが見つかるでしょ!」
「メイ先輩! あ、あれ! ……血、ですよね?」
そちらを見れば、地面に血溜まりがあった。
ライトを振れば、さっきの衝撃と思われる、破壊の跡も……。
視線で訴えかける春花に、私は言う。
「中に入るしかない! 後ろから警察が来ているし、捕まれば、どうなるか……。ここで人が殺されたのなら、私たちも犯人扱いだよ? 罪を問われずに釈放されても、身元照会で学校に連絡されるから、まず退学!」
「うう……」
泣き出した春花の手を引っ張り、私は怜奈の後を追う。
その先に、何が待つのか? も、考えずに……。
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