第6話 室矢カレナは海外の神様(ローカル認定)
それは避暑地に建つ、洋風のペンション。
趣味でやっている規模とはいえ、畑、田んぼ、鶏小屋により、1つの世界と言える場所だ。
女子高生の
「――というわけで、この区画の組長である
「その榊さんに、私が挨拶する必要は?」
首を横に振った優希は、真剣な顔で言う。
「いらない。……むしろ、やらないで! 今のあんたは、『人間と距離を置いている、海外の神様』という認識だ。いきなり態度を変えたら、『馬鹿にしていたのか!?』と逆上されるよ? ……そういう路線に変えても、いいけど。その場合は、もう面倒を見ない!
「なるほど……。せっかく穏便に片付いたのに、また販売拒否などのトラブルは嫌です。優希の言葉に甘えて、『お互いに不干渉』とさせていただきます。ゴミ捨ても自分でステーションへ運んでいるため、ご心配なく」
カレナの返事に、優希は何か言いたげな表情。
「まだ、名前で呼んでいいとは……あー、もう! じゃ、私たちの間では『お互いに名前で呼ぶ』ってことで、いい?」
「はい。よろしくお願いします。……これ、皆さんでどうぞ」
デパートに入っている名店の包装を見て、優希は一気に脱力した。
「あのさあ……。この対応を榊さんに……。いや、もういいよ! カレナが自分勝手じゃなかったことを喜ぶ!」
高い和菓子のセットが詰められた箱を手に取り、優希は自己完結した。
次に、カレナのほうを見る。
「これは、佳鏡家の親に渡すから! そうすれば、『あんたがウチに挨拶した』となり、一応は丸く収まる」
「いいですよ。ところで、町内会費は? ……払う気はあります」
優希の雰囲気により、言葉を付け足した。
それを聞いた優希は、少し考える。
「どっちみち、私がカレナの面倒を見るから……。集金は、それでいいけど。問題は、あんたの名前を出すのかどうか!」
「佳鏡家の名義で、町内会に渡してください。私は、ここでスローライフを送るだけです。お祭りといった祭事でも、それに見合った額を包みましょう。佳鏡家の取り分も、付け加えて。代わりに、共同作業を免除してくれるように……」
長考した優希は、同意する。
「分かった……。親には、その方向で話してみる」
カレナは、ふと疑問に思う。
「そういえば、
「あー、それね! 私も気になって調べたら、あの子は商店街の手伝いとか町のあちこちで活動しているんだって! 神様といえばもっと気難しいと思っていたけど」
ちらりと見てきたので、優希に教える。
「睦月は人懐っこいので……。
「じゃあ、ウチは当たりってことか……」
自分の感想を述べた優希は、とりあえず納得した。
優希が自分のスマホを持ったことで、カレナが応じる。
お互いの連絡先を交換。
「んで、SNSのグループを作っていい? 私がすぐに対応できるとは限らないから……」
廃墟に入り込んだ4人は、仲が良いようだ。
反対する理由はなく、こちらも快諾。
ホッとした優希は、カレナに提案する。
「お金のことは佳鏡家で話し合うから、また後で! もうすぐ、カレナも高校に通うよね? 色々と説明しておきたいんだけど……」
時間がないか、聞くつもりがなければ、別にいい。
言外で、そう伝える。
「ええ、いいですよ! ぜひ、お願いします」
カレナは返事と同時に、立ち上がった。
食べ終わった2人分の洋菓子の皿とティーカップを運搬用のトレイへ。
「お菓子とドリンクは、取り替えます」
「悪いね。……あ! 広げたいから、ダイニングテーブルのほうでいい?」
「はい。どうぞ……」
家主の承諾を受けて、優希は持ってきたトートバッグをつかむ。
今度は、食べやすいスナック菓子と炭酸ジュース。
それらを
優希は赤ペンを持ちながら、1つの川をキュキュッと示す。
「これは、
ポテチを
「海のほうへ抜けているんですね?」
「うん。ここは見ての通り、山の間にへばりついている村だよ! 今は
説明している優希は、それぞれをマジックで囲みつつ、浮かない顔に。
「ウチは、人が減っている過疎地でさ? 川を挟んでのニュータウン、いわゆる新市街と仲が悪い」
どうやら、この地域に特有の、対立構造があるようだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます