俺の歌を聞け
前回までのあらすじ
山田 ノリコさんという見た目だけ良い頭のおかしな先輩に出会った。
「さぁ、歌うわよ。」
「あ、あの、展開が急展開過ぎるんですけど。」
僕こと杉原 友和は困惑していた。山田先輩から出会って早々にカラオケに誘われたからだ。
「大丈夫、ヴァジュラはお腹で歌うのよ。」
ニコッと笑う山田先輩だが言っている意味は全く分からない。なんだよヴァジュラって。
まぁ、とにかく山田先輩に誘われるがまま、放課後にカラオケに居るわけだが、こんな美人と密室なんて緊張する。
えぇい、そんなことでどうする僕。とりあえず色々聞きださないと。
「大体、何で屋上の鍵なんて持ってるんですか?あんなの持ってたらダメでしょ。」
「んー、あれは先輩から譲り受けたトレジャーなのよ。先生に行ったらチェストーーーーーーーーーー!!するからね♪」
デンモクで曲を検索しながら物騒なことを言う山田先輩。しかし、チェストって叩き切るつもりかな?
「よし、最初はこの歌ね・・・・ミッション♪アザースペース♪」
歌い始めちゃったよ。初対面の人でサシでカラオケなんて本当に初めての経験なんだが、恐らくこれから先も無いだろう。
「ゴリラ‼ゴリラ‼スラングルーーーーー‼」
というかなんだこの歌?というか歌なのか?ゴリラばっかり言ってるし。最近はこんな歌が流行っているのだろうか?
「ふぅ、早くスパロボに出ないかな?」
「あの、何なんですかあの歌?」
「何って『亜空大作戦スラングル』のオープニング、『亜空大作戦のテーマ』じゃない。」
いや知らんし、ていうかあんだけゴリラゴリラ言ってて、タイトルにゴリラ付いてないのかよ。
「杉原君も何か歌いなよ。最近の子はやっぱりyoasobiの『祝福』とか歌うんでしょ?百合要素の有るガンダムもお姉さん許容できたわ。」
「は、はぁ。」
yoasobiは聞いたことはあるが、歌までは知らない。やはり流行りの歌ぐらいは押さえておくべきなのだろうか?
「やっぱり祝福の精神コマンドが出来てから金稼ぎしやすくなったわよね。最初の頃はSP高めだったから難儀したけど、今は少なくなってガッポガッポよ♪」
あれ?話変わってない?何の話だこれ?SP?
「あぁ、でも勘違いしないで、お姉さん全滅プレイしてまでお金稼ぐ人じゃないから。初見プレイは苦戦してこそと思ってるから。」
だからさっきから何の話をしている?
ここで僕は思ったことがウッカリ口から出てしまった。
「山田先輩は異星人か何かですか?」
「そう僕の名前はデューク・フリード。第二の故郷地球を守る‼スピンソーサー‼・・・ってなんでやねーん♪」
“バシン‼”
「痛っ‼」
急に右手で突っ込まれた。僕は本気で言ったのに冗談と思われたらしい。ノリツッコミなのだろうが、相変わらず何を言っているのか分からないので、コチラとしてはキョトンである。
「もう、杉原君が歌わないなら、私が歌っちゃうぞ♪じゃあこれ入れようかな♪」
デンモクを再び操作し始めた山田先輩。それにしても女子と二人っきりでカラオケなんて、これは立派なデートなのでは無いだろうか?僕にも春が来たと浮かれても良いのだろうか?
「朝比奈を守るんだーーーーーーーー‼」
「うぉ‼」
マイクがキーンとなるぐらい大声を出す先輩。思わず僕はステーン‼とソファーから転がり落ちてしまった。
「それでも♪一体この僕に♪何が出来るって言うんだ♪」
山田先輩がさっきのゴリラと違って、メチャクチャ美声を響かせているんだが・・・これ良い曲だな。
この後、ミッチリ三時間の山田先輩のリサイタルが行われたが、歌われた全ての歌を僕は存じ上げなかった。
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