スーパーロボット女子高生
タヌキング
ゴング鳴らせ
屋上は立ち入り禁止で、扉には鍵が掛けられていて入ることすら出来ない。
そのことを僕は知りつつ、昼休みに屋上を目指していた。
僕こと杉原 友和(すぎはら ともかず )は幼稚園の頃から友達も居なくてクラスから浮いた存在。高校に入るには入ったが、何をするにも無気力で何をしても楽しくない。
そんな自分に嫌気が差して、何かを変えようと少しは努力してみることにした。
差し当たって学校の屋上に行ってみるのが精一杯。もし立ち入り禁止のその場所に入ることが出来て、そこに誰かが居たのなら、こんな僕でも何かを変えられる気がした。
……そんなことありっこないのに。
早々に屋上の扉の前に着いて、ドアノブに手を掛け、クルリと回してドアを引いてみた。
開く筈ない、開いてたまるか、また自分の無力さを思い知るが良い。そう自虐的なことを考えながらダメ元のダメ元で引いた割には、いとも簡単に扉はガチャリと開いた。
開いた先、そこには何処までも広がる青い空と一人の髪の長い少女が立っていた。
少女はこちらに気づいていないのか、気持ち良さそうに、何かの歌を歌っている。
何の歌だろう?僕は耳を澄ましてその歌声を聞いてみた。
「もーしも♪力尽きてー♪闘志の刃砕けてもー♪僕がここに居たことだけー♪どうか覚えていて欲しいよー♪」
……何の歌だこれ?流行りの歌い手系の歌かな?
「ん?」
彼女はこちらに気づいたらしく、こちらを振り向き、大きめな目をパチクリさせながら僕のことを見ている。端正な顔立ちに、スラッとしたスタイル、僕なんかが評価して良いかは分からないが、おそらく良い女である。
「屋上に人が来るなんて珍しいな。君は誰だい?」
問われては答えないといけないだろうな。間を空けても辛いものがあるし、名前と学年ぐらいは名乗ろう。
「僕の名前は杉原 友和。一年生です。」
「杉田 智和?」
「いえ杉原です。誰ですか?杉田って?」
「いやすまない。知人に名前が似ていてね。」
フッフフと不敵な笑みを浮かべる女の子。結構ヤバい人なのかもしれない。
「私も自己紹介しよう!!私の名前はダイゴウジ ガイ!!」
えっ?ダイゴウジガイ?おもくそ男の名前なんだけど、まさかの女装男子だったのか?
「……と言いたいところだけど、本当の名前は山田 ノリコ、二年生。奇跡は起こしてみせます系女子。趣味はギターと三味線。自慢じゃないが突撃ラブハートと鳥の歌は弾ける。特技はゲッター目が出来ること。」
……色々突っ込むところは多いんだけど、とりあえず一番気になったことを聞いてみよう。
「ゲッター目ってなんですか?」
「やってみせよう!!はっ!!」
ノリコさんが気合を入れると、ノリコさんの黒目の部分にいくつも丸い線が入り、漫画のグルグル目みたいな感じになった。
なにこれ?怖い。
「ゲッターーーーー!!ビィイイイイム!!」
なんか言い始めたし。本当に怖いじゃないか。
「ふぅ、スッキリした。やっぱりゲッター線って、たまには放出しないとダメね♪」
目も元に戻り、何だか成し遂げた感を出す山田先輩。出会いからエキセントリック過ぎて、僕は何だか立ちくらみがしてきたが、何でこの人はここに居るんだろう?
「あの、山田先輩はどうして屋上に居るんですか?僕が言うのもなんですが、ここって立ち入り禁止ですよね?」
「私、戦争を終わらせる鍵を持っているの!!」
きゅ、急にデカい声だすよな、この人。
山田先輩は学生服の上着のポケットから何かを取り出し、それを掴んだ右手を高々と上げた。
「これが勝利の鍵だぁああ!!」
ハイテンション山田先輩の言う通り、それは紛うことなき鍵であり、鍵のキーホルダーには屋上と書かれたシールが貼られていた。
「ゴルディアンハンマー発動承認!!
了解!!ゴルディアンハンマー!!セーフティデバイスリリーブ!!
ハンマー!!コネクト!!ゴルディオンハンマー!!」
「ちょ、ちょっと、自分の世界に入らないでください。困ります。」
これが僕と山田 ノリコ先輩との出会いであり、僕がスーパーロボットの世界を知ることになった序章でもあった。
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