第6話


 私は地下牢にいました。


 白と黒のストライプの上下と囚人帽。胸には雑に書き殴った囚人番号のゼッケンが付いています。


 捕まってから三日が過ぎました。




 地下牢は地下に掘られた大穴に、サーカスの猛獣用の檻みたいなものを十個程度置かれているだけの簡易的なもの。トイレの時は看守に言って連れ出してもらうスタイルでした。



 私が意気消沈しながらぼーっとしていると、看守が出入り口の方に向かいました。看守犬は今日はダックスフントです。



 何か扉の向こうと一言二言交わすと、地上への階段に続く頑丈そうな扉が開き、真っ白な紳士服を着たドーベンが入って来ました。


 ドーベンが顰めっ面をして、鼻先の空気を払いのけるような仕草をして、扉の前に居た看守に愚痴を漏らします。



「相変わらずカビ臭いな。よくこんなところに居れるものだ」



 それからハンカチで鼻先を抑えると、看守と共に私の前に来ました。ドーベンが私に話しかけました。



「ご機嫌よう。居心地はどうかね?私は昔からそこの居心地が気になっていてね。"餌"も出されて、"首輪"の代わりに手錠をつけてお散歩。まぁ、トイレまでと少し短いが、それでもないよりましだろう?どうだい?快適だろう?」



 ドーベンがとても良い笑顔をみせる。

 なんて嫌味な人。本場の英国紳士みたい。私はドーベンを睨みながら答えました。




「最低な気分です」




「はっはっは。そうか、そうか。いやー、そんな顔をせず、明るい顔をしてくれよ。今日は何と言っても君の晴れ舞台だ。見てくれ、これを。君の晴れ舞台のために、お祝い用の白服を着て来たんだ」



「…最低」



「はっはっはっ。なんとでも言うがいい。我らの仲間を罪人のように扱った罰だ。さぁ、行くぞ。君の晴れ舞台へ」




 ガチャッ。



 看守が檻の鍵を開けて私に手錠かける。その手綱を看守が握り、ドーベンに先導されて、私は牢屋から出ました。




 城の前の大広場には木組の処刑台が用意されていました。校長先生の朝礼用の台が高くなったような代物で、そこに黒い布を被った斧を持った処刑人がいます。



 私は異世界に来てから数日後、処刑台の上に立たせられてしまったのでした。

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