第5話


 優太は祖母の魔法の本を読み進めていた。



 しかし、その顔は段々と曇っていき、本を何度か進めては戻る場面が出て来た。優太が口元を押さえて、苦い顔をした。



「ばあちゃん…。これじゃあ、ダメだよ。魔法の出口の設計が間違ってる。こっちの世界に戻ってくる手段が、〈またたびもどきの木〉の花を咲かせるしかないじゃないか」



「このままでは、もし何かあっても出て来られない。ばあちゃん、脱出の呪文を設定忘れたんだ」


「もし、監禁でもされた日には、一生出てこれないことになる。それにばあちゃん。これの一番のミスは……」



 優太が生唾を飲む。


「一番のミスは真冬は絶対に筋書通りにはいかないってことだ。ばあちゃんも"それ"を楽しんでいた様に、真冬は"おっとり系天然トラブルメーカー"」



 優太は頭を抱えてため息を吐いた。



「きっと今頃大変なことになっているぞ……」



 優太の脳裏に真冬との様々な記憶が過ぎる。

 お花の冠作りに熱中するあまり公園の雑草を刈り尽くした結果謎のミステリーサークルとしてニュースになった"公園ミステリーサークル事件"や、不審者にあった時に「優太のより小さいも小さい人いるんだぁ…」と言ってオレと不審者を泣かせ、不審者撃退の少女として取材を受けたものの、撃退方法が下品なためお蔵入りになった"不審者撃退事件"など事件の数々。




 優太は苦渋の表情を浮かべながらも、「間に合えよ…」とひとりごちて、本の中に入って行った。




 そして、優太の想像通り、真冬は何故か処刑台で処刑されそうになっているのであった……。

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