第35話 存亡の危機

「ん…あれ?。」

目をこすって起きるアン。


「何かさっきあったような気がするんだけど…。」


「どうしたの?おはよう。アン」

俺は笑顔でアンに挨拶すると、アンは目をそらした。


「お、おはよう。何だか未だに慣れないわね。最近のミライの顔めちゃ優しいし…。」

頬がほんのり赤くなっている。


「夢かな…。」

アンは呟いていた。


面倒ごとは避けたいので、さっきのは無かったことにしてもらいたい。

しかし…拳が飛んでくるとは…以後気を付けよう…。


物体を創る

『マリー花創造!』


心の中でイメージする。

掌の中に柔らかい白い花びらが出現した。


「わぁ綺麗なお花!」

アンは喜んでいる。


ちなみにポーンっていう音は消せるらしいので消してみた。

音は無くてもいいと思ったからだ。


アンが喜んでいたので、手品のように次々と出してみた。

笑顔が見たくて、でもちょっとやり過ぎかなって思ったけど。

テーブルいっぱいに白い可愛い花が盛られていた。



****



「ミライさん。これはいったいどういうことですか?」

あれから、帰って俺は今冒険者ギルドにいた。


青い髪のギルド職員リアさんが真剣な目で訴えている。


そりゃそうだろう。

前回の依頼からしばらくマリー花は取れないと思っていて依頼を辞退したのだから。


「今回はどこで採取したのか場所を教えて頂けますか?」

言葉は丁寧だけど、目が怖い。


「…す、すみません。言えません…。」

俺はお金を受け取って、逃げるようにギルドを後にした。


言えるわけない。

前回のならまだしも、自分の能力で創ったなんて言ったら…。


「はあぁ…。」

失敗した。

下手なものは創らないほうが良いな。


「10万ネルが手に入ったからしばらくギルドはいいか…。」


俺はベッドに横になりながら呟いた。

この世界はあまりお金を使わなくても生きていける。

半年は何もしなくても生きていけるんじゃないか。


こっちの世界ってもしかして生きやすい?

テレビとかスマホは無いけど、のんびり出来るし。

日々の生活の事だけ考えてればいい。

何て思っていたのだけど…。



****



「もう少し、待っていただけないでしょうか…。」


ファーレンさん宅に寄ったところでお客が訪ねていた。

武装した兵士なのだろうか。


「国王陛下は寛大なお方だから今まで黙っていたが、次用意出来なければ出て行ってもらうからな。」


ちょうど客人が去るタイミングだったらしい。


「どうしたんですか?」


「ああ、ミライ君。恥ずかしい話だが、今年の税金の事でね。お金か、食料を納めないと村長を辞めろと言われていてね…。このままだと村を出て行かねばならない。」


「お父さん…。」


税金か。

何処どこの世界にもあるんだな。

「ちなみに幾らくらいですか?」


「500万ネルだよ。」


「「500万!」」


「この村では個人の税金は納めなくていいのだが、村が支払うことになっていてね…。」


多くないか?

会社を経営してるならともかくとして、これはどう見ても詰んでるな。


「ちなみに食料というのは無いんですか?」


「この村では小麦がそれにあたるのだが、思いのほか不作でね。足りないんだ…。」


「払えないと?」


「払えないと、私たちは追い出されて、村ごと没収されるだろう。村民も高い税金の元暮らすことになる。どこかの貴族の領地になるかな…。」


う~ん。

これどうにかならないのかな?

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