第33話 宿屋

海の近くの町。

海の美味しいものが食べられる!

山とは違い魚もあるだろう。

肉もいいけど、新鮮な魚もたまには食べたい。


それで港町シーズの食堂に入ってみたんだけど…。

初めて見る料理にアンが固まっていた。

生魚、刺身を見て食べるのを躊躇ちゅうちょしている。


「よく食べられるね…。私ちょっと怖いんだけど…。」


生の魚を食べる習慣が無いからなのか食べられないみたいだ。

俺は追加で焼き魚を注文した。


俺はアンの食べられなかった刺身をアイテムボックスに収納する。

後で帰ってから食べよう。

この港町では醤油っぽいのも売っていたので買った。


ぶらりと港町を歩く。

大きい船がいくつか停まっていた

空にはカモメ?が飛んでいた。


「米とかあるといいなぁ…。」

無意識に呟いてしまう。


「こめってなあに?食べ物?」

それもアンは知らないものだろう。


食べ物も似てる世界だから、米があっても不思議じゃない。

パンを作る小麦があるんだから、きっとあると思いたい。


「今日は宿屋に泊まろうか。」


幸いすぐに見つかる。

宿屋の無いところではずっと野宿していた。

多少高くてもたまにはゆっくり寝たい。


「え?いいの?」

目をキラキラさせてうれしそうなアン。

野宿そんなに辛かったのだろうか。


「ごめんなさいね。今日は一杯なの。1部屋なら空いてるんだけど。」

宿屋のおかみさんがそういった。


「まあ、大丈夫です…。」


野宿でも一緒に寝てたし。

1人部屋の方がくつろげるかもと思って2部屋って言っただけ。


「気にしなくていいよ。最近ずっと一緒だったじゃん。何をいまさら…。」


「狭い部屋でごめんなさいね。」


あ、ベッドが一人用だ。

部屋に入ると一人用の個室らしく本当に狭かった。

泊まるだけだし、いいのだけれど。

くっついて寝ないとベッドから落ちるかも…。


「ほ、本当に狭いね…。寝るときくっつかないと…かな。」

アンの顔は赤くなっていた。


野宿の時は周りを警戒していたので…一緒に寝ていても気にならなかったけど。

ベッドが同じだと寝られないだろう。

ていうか、俺が変なことしちゃったらどうするんだよ。


「床で寝るからベッド使っていいよ。」


「え…。」

まあ、仕方ないよね。

寝不足で旅をするのはしんどいし。


”ポーン”

俺は寝袋を取り寄せる。

これも家にあったやつだ。

これなら暖かく寝られるだろう。


「おやすみ。」


「おやすみなさい…。」


アンの視線を感じる。

俺はアンに背を向けて横になった。

アンは申し訳ないって顔してたけど、仕方ないよ。

そういうのは、もうちょっと大人になってからにしようね。





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