第21話 初めての感情

私は何をしていたんだ…。

カモミールは自分の感情に驚いていた。

家に帰ってきて改めて気恥ずかしい感情が出てくる。

鏡を見ると顔が赤い。

長い耳も赤い…。


ミライにしがみついていたのは他意はない。

本当に研究対象として欲しかっただけなんだが…。

腕にしがみつく=恋人がする事…と気がついて慌てて帰ってきてしまった。

思えば私は好きとか嫌いとか…恋愛感情に疎いというか、まったく気にしないタイプだったのだ。

髪の赤い女の子が急にあんなこと言ってくるから…。


「まいったな…。動揺するなんて私らしくない。」

私はいつも落ち着いていて冷静が通常なんだ。

訳の分からないグラグラした感情が落ち着かない。


はぁ~。

ため息が出る。


ふと手を見る。

無意識に腕に抱き着いていた手。

不思議と気持ちが落ち着いた。

父親とかの安心感なのだろうか。


「多分そうだ。まだ親離れしてないのか…。」

私は自分にそう言い聞かせた。


思えば、実家を出てから何年も経ってると思うんだけど。

私もいい大人だ。

私はまだ若いエルフで、経験も足りなかった。

恋とか愛とか。

興味ないというか、関わってこなかったし。

人間みたいにいつまでに結婚しなきゃとかないからね。


そもそもあまり他人と関わらない種族だし。



****



「…変に思われちゃったかな。」

私は布団に潜っていた。

恥ずかしくて部屋から出られなくなったというのもあるけど。

親の前で告白するとかってありえない。

それだけ、切羽詰まってたんだよね。


コンコン

ドアがノックされた。


「夕食食べないか?」


父親が声をかけてくれる。

父親には悪いが、恥ずかしくてしばらく出られそうにない。


「いい、いらない。」


私は返事をした。

おなかが空きそうだけどこのまま寝てしまおう。

寝るって嫌なこととか忘れちゃうんだよね。

嫌なことかどうかは置いておいて。

無理やり目をつぶることにした。


明日は早く起きて朝食を作ろう。

恥ずかしい事なんて、みんな忘れてしまうに違いない。

本当は大したことなくて!

恥ずかしいのは私だけで。

レインもお父さんも気にしないで、いつも通りに接してくれるよね?



****



「おはよう。アン。」

今まで見たことない笑顔でミライが挨拶してきた。


「お、おはよう…。」

ど、どうしたんだろ。

雰囲気が優しくなった。

今までも十分優しかったけど。


「おはようございます。ファーレンさん。」

お父さんも驚いている。


何かあったのかな。

顔は今まで通りなんだけど…あったかい。

ギューッて抱きしめたくなる。

まるで陽だまりのような。





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