第22話 変化
俺は冒険者ギルドにやってきた。
マリー花を持ってきたからだ。
色々聞かれるかもしれない。
知らないふりをしようか…。
「はぁ。」
ため息をつく。
ええい!ままよ。
俺はアイテムボックスからマリー花を取り出した。
(一応皮袋から出しているように見せているが。)
カウンターの上に広げる。
「え?」
純白の小さく可憐な花びら。
量は少ないがこれしか無かったのだ。
依頼書一枚分、花10束
ギルド職員のリアが目をまん丸くしている。
「本当に持ってきた…。凄い…。」
「あまり咲いていなかったので、これだけだけど。」
依頼書の一枚だけの分を確保できた。
しばらくしないとまた取れない気がする。
「こっちの依頼は辞退でいいかな?」
「はい。大丈夫です…。」
リアさんは思ったより大人しい。
もっと色々聞かれると思ったのだが。
驚きすぎて言葉が出ないのだろうか。
「報酬の1万ネルです。」
一万が高いのか安いのか…。
もっと価値があるように思えるのは俺だけだろうか。
1年経ったらまた咲くのだろうか。
それとも数年先なのか?
マリー花の咲く木の数が減ってしまったというのも気になるが…。
今日は早めに家に帰ることにした。
****
ウィス村に戻った。
「ミライ?やっと来た。」
カモミールさんが家のドアの前で待っていた。
「どうしたんですか?何か用ですか?」
「…また家来てよ。」
「少し休ませてくださいよ。」
カモミールさんとは割と仲良くなったと思うが、それでも他人と一緒だと結構気を遣う。
「ええええ?」
家事をするのがそんなに大変なのだろうか。
一日しなくても死にはしないだろうに。
俺はカモミールさんには相変わらず丁寧語なのだが、前より親しくなった気がする。
「家事出来ないと困りますよ?」
「むむむ…。」
俺がいなくても片づけくらいは出来るようになってほしいものだ。
エルフの方が長生きなのだから。
カモミールさんはまだ若い方らしいが、人間の何倍も余裕に生きるらしいから。
「誰かに頼むから大丈夫だもん。」
急に子供ぽくなった。
まあ、それでも何とかはなるとは思うが…。
「ともかく、今日は休ませてくださいよ。」
俺はドアを開けて、カモミールさんに手を振った。
彼女はドアを閉めるのに抵抗したが、俺は否応なしに閉める。
ここ俺の家だし。
「何なんだ。一体。」
カモミールさんて、もっとあっさりした性格だったと思うのだけど…?
彼女の何かが、変わってきたのだろうか。
そういえば、この前もしがみついて離れないことがあったっけ。
あれも考えてみれば妙な感じだった気がするな。
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