第7話 味覚
俺はファーレンさんの家に行った。
「お世話になったのでこれ買ってきました。」
俺はテーブルに肉を出した。
「気を使わせて悪いね。今夜はこれで夕飯にしようか。」
奥からアンが出てくる。
「戻ってきた~。」
半泣きになって俺に抱きついてくる。
大丈夫か?
「戻ってくるっていっただろ。」
「うん。」
ちょっと心配だな。
あれ、アンが離れようとしない。
「アン?どうした?」
「離れたくない…。」
ええええ?
どうしたらいいんだ?
「夕飯はお父さんが作っておくから、のんびりしていなさい。」
あ、村長さん行っちゃった…。
こんな事初めてだ。
どうしたらいいんだ?
彼女は心細かったから抱きついてるだけだ、他意は無い。
多分親子とかそういう感情に近い。
一回深呼吸した。
「大丈夫だから‥落ち着いて?」
ふと、小さい子供みたいだな。そう思った。
赤い髪がふわふわしてる。
優しく手で撫でてみた。
猫みたいだな。
「ん~~~。」
「心がぽかぽかする~。」
「アン?」
「ずっとこうしていて?落ち着くから。」
やっぱりダメかも。
俺は顔が熱くなるのを感じながら、固まっていた。
夕食、俺が買ってきた肉が出された。
やっぱり肉が無いとね。
俺は気分が舞い上がっていた。
「頂きます。」
一口入れた…あ、そっか。
味ほぼ無いんだっけ。
これはこれで美味しいんだけど。
味気ないな…。
「どうしたのかね?何か?」
ファーレンさんが話しかけるが、作ってもらって言うのもちょっとなぁ。
「塩無いかな。欲しいな。」
つい呟いてしまう。
ポーン
あれ?
目の前に見慣れたピンクの塩が出現した。
コンビニで珍しいもの売ってるな~って買ったやつだ。
そういえばそんなの持ってたっけ。
使って無かったけど。
因みに岩塩っていうやつだ。
「何それ?」
「え?」
「急に出てきたような気がするのだが、気のせいだろうか?」
アンとファーレンさんが驚いていた。
そりゃそうか、急に現れたらびっくりするよな。
「あの~」
「君、収納魔法使えるんだね!初めて見たよ。」
確かに収納魔法(アイテムボックス)使えるけども。
今のは違うんだけど…。
説明するのも面倒くさくなって、いいやってことにする。
「これは塩っていいます。これをこうして…。」
俺は岩塩を肉に振りかけた。
美味しい~。
やっぱりこうじゃないとな。
「私にも!」
アンが言ってきたので振りかけてあげる。
「え?美味しい!」
じーっとファーレンさんの無言の圧力。
「こっちにも振りかけますから‥そんなに見ないでください。」
「すまないね。」
ファーレンさんも顔がほころんだ。
この世界では塩は貴重品なのだろうか。
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