4-4 サンドウィッチ店での昼食

「僕は、トマトとチーズのサンドウィッチにしよう」

「私はハムカツね」


 僕たちは、サンドウィッチ専門店の「フレッシュ・レイン」に来ていた。店はこぢんまりとしているもののシンプルな造りで好感が持てた。店に入るとすぐに冷蔵ストッカーがあり、様々な種類のサンドウィッチが綺麗に並んでいた。


 杏子さんと僕は、トレイにサンドウィッチを取り、会計を済ませるとイートインのコーナーへと進んだ。

「お飲み物は、どうする?」と杏子さん。

「僕は、カフェオレかな」

「私はレモンティね」


 イートインコーナーの席に座ると、すぐに僕は話を継いだ。

「実は僕、今、小説を書いているんだ」

 僕はそう切り出した。自分でも緊張で顔が強張っているのが分かった。


「そうなんだ。凄いね。完成したら、読ませてくれる?」

「少し先になるんだ。大丈夫?」

「もちろんよ。発表はどうするの?」

 僕は少し言い淀んだ。

「POD出版にしようかと考えているんだ」

 杏子さんは、微妙な反応をした。

「POD? ああ、オンデマンドのことね。さっき、調べてたものね」

 僕は頷いて、言葉を返した。

「完成までは、WEB小説サイトを使おうかと考えているんだ。『ミッション』を」

「『ミッション』なら、知ってるわ」


「ミッション」とは、十年ほど前から続いている、老舗のWEB小説サイトのことだった。


「今、四百字詰めの原稿用紙に書いているんだけど、パソコンにタイプしたら『ミッション』に載せようと思っているんだ」

「どんな小説を書いているの?」

 杏子さんが優しく尋ねた。


「血湧き肉躍る冒険物語を書いているだよ。いわゆる、ファンタジー作品ね」

「高校生が異世界へ転生して無双する、とか?」

「それも流行ってるけど、そうじゃなくて、『指輪物語』とか『ロードス島戦記』とか、いわゆるハイ・ファンタジーものなんだ」

「指輪物語なら、読んだことがあるわ。あんな感じなのね」


 杏子さんは、ハムカツのサンドウィッチを食べ終わると、そう言って、紙ナプキンで口を拭いた。

「ごちそうさま。美味しかった」

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