4-2 個人出版について

 僕は家に帰り着くと、早速インターネットを開いて、PODについて調べはじめた。


「ウルトラ・パブリッシング・サービスか」

 僕は、今書いている「剣と魔法の冒険譚」を出版したいと考えていた。今日、勤め先の松山書店で買った本によると、PODは個人出版といわれているものらしい。個人出版は、編集者も校正さんも、デザイナーもコピーライターも誰一人として介さず、一個人=自分ひとりだけで完結する出版サービスらしい。


「意外と、作るのは簡単だな」

 基本はワードだけで作ることが出来る。

 表紙は画像編集ソフトがあれば作れるようだ。僕のパソコンには、ワードと簡単な画像編集のできるアプリケーション・ソフトがインストールされていた。


「とりあえず、今日は休むか……」


 ⎯⎯ その時、スマホが鳴った。杏子さんからか、何だろう?


「はい、もしもし……」

「与津くん? 今度の休みにどこか行かない?」

「もちろん良いよ。次の休みは……、来週の水曜日か」

 僕は壁に貼ったシフト表を見ながら答えた。

「私も、今度の水曜日、休みにするから」


 黒崎杏子さんは、松山書店山河中央店で、一ヶ月の研修を終え、山河市にもうひとつある「松山書店 北山河店」へと移動になっていた。

「与津くんは、どこか行きたいところはない?」

 僕に閃いたアイディアがあった。


「山河図書館はどうかな?」

 杏子さんは少し吹き出した。

「休みの日も、本の虫なのね」

「ちょっと調べたいことがあるんだ」

「何を知りたいの?」

「幸福主義についてなんだよ。知ってる?」


 杏子さんは、少し考えてから言葉を口にした。

「残念だけど、知らないわ」

「僕も、今日初めて知った用語なんだよ」


 僕たちは、来週の水曜日の午前中に、図書館へ行き、街中でランチを摂ることにしたのだった。

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