3-4 自問自答

 僕は家に帰り着くと、急いで自分の部屋へと戻った。


 ⎯⎯  今考えていることを、何かに書き留めよう。


 僕はルーズリーフを取り出して、机の前に座った。心が静まるのを待つ。


 「今したいこと」

 まず、僕はそう記した。


 ⎯⎯  僕は本当は、何がしたいんだろう。


 もう一度、僕はそう自問した。


 ⎯⎯ 小さな時は、何に成りたかったのだろう。


 よくよく思い返してみる。それは学校の先生だった。

 それが駄目になったのは、教育実習の日に、学校で嫌な思いをしたのだ。それまで憧れていた教職が、嫌いになってしまったのだ。


 ⎯⎯ 次に好きなものは何か。


 次は、読書だろう。僕は本が好きで、一ヶ月に五冊は読む。だから、書店員の道を選んだのだった。しかし、日々新刊本を並べることに喜びは感じるものの、それだけの楽しみしかなかった。


 ⎯⎯  小説はどうだろうか。


 僕は学校の授業で読書感想文を書き、学内のコンテストで優秀賞をもらったことがあった。本を読むのも良いが、小説を書くのはもっと良い。

 僕は思いつきをカタチにしてみようと考えた。黒崎さんへ電話するのだ。


「もしもし、黒崎さん?」

「今日はデートできなくて、本当にご免ね」

「いや、それは僕も疲れていたからいいんだ。ちょっと、話したいことがあって……」

「何かしら?」


 僕は息を整えた。

「あの、僕、小説を書いてみたいんだ。どう思う?」

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