2-4 五色教授との話

 季節は夏へと向かっていた。僕は卒論のテーマを決めるべく、五色教授の研究室を訪れた。


「失礼します。五色先生、今、お時間ございますか?」

 僕は研究室の入口のドアを開いて、一気にそう告げた。


 五色教授は、机で書物を読んでいて、僕の言葉を受けて振り返った。

「ああ、与津君か。どうした、珍しいな」

「あの、僕の卒論のテーマを『人口問題、近年の移住者の動向』にしようかと思っているんです。いかがでしょうか」

「詳しく聞かせてくれないか」

「はい」

 僕は、かいつまんで話し始めた。


「……すると、移住者は四つの形態を経てきている、ということか」

「僕は『食の安全』・『農村シンデレラ』・『若い発信者』・『コロナ回避』と名付けています。その四つのシナリオを経て、農村への移住は展開しているのです」


 五色先生は頷いた。

「人口問題・都市問題・環境問題での論文は、充分に可能だと思うよ。『移住』という切り口も良いね」

「ありがとうございます」


 僕は三十分位、五色教授と話をして、研究室を出た。大学はもうすぐ夏休みを迎えようとしていた。夏の空に、真っ白な入道雲が浮かんでいた。

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