第2話

 高校生を助けようとした藤堂隼人は、


 (ん~~。どういう状況?)


 異世界に生まれて数ヶ月のときに前世のことを思い出した。

 隼人は自分の状況を確認するために手や足を動かして、自分の視界で情報を頭に入れようとする。


 (それ!ほいや!…………というか、手や足の長さ的に赤ん坊だよね。バイクにぶつかったあとで病院にいるわけじゃないっぽいし。………だったらどうして目が見えるの!見えないよりはいいけどさー!)


 隼人が1人で状況は傍目に見て、「あー!あー!」と言いながらもがく、変な赤ちゃんだった。

 そんな隼人が「あー!あー!」と声を出したため、その音に反応した人がやってきた。



 〔ガチャ!〕「ノイアー様、どうしましたか?おむつですか?それともお腹が空きましたか?」


 隼人がいる部屋に入ってきたのは、綺麗な女性だった。


 (うわ~。すっげぇ。ホントのメイドかな?俺ってヨーロッパ系に生まれた?)


 隼人が見たままのことを心で喋っているが、実際メイド方は当たっている。ヨーロッパの部分では決してない。

 隼人が女性の印象を心で喋っている間に、メイドの方が転生した隼人の〔ピー〕の周辺を触り、おむつ確認をする。


 「おむつじゃないみたいですね。……よいしょっと。ノイアー様抱っこしても大丈夫でしたか?ふふっ。相変わらず可愛いですねノイアー様は。」


 (お~~~これが本当の癒やし系。抱っこは落ち着くな。笑ったあとのほっぺつんつんには赤ちゃんの声帯ではキープできない。)

 「キャッキャッ!あう~。…………キャッキャッキャッ!」

 (違う。違うんだ。こんな声を出したくて出しているんじゃないんだ!!)


 隼人の全力の心からの否定は誰の耳にも心にも届かなかった。

 その後も、子供が好きなのか分からないが、メイドに少々おもちゃのように扱われた。

 ただ、隼人が損をしたかと言われると後半は赤ちゃんを存分に楽しんでいた。


 このとき隼人は思った。


 (俺はノイアーなんだな〜。このメイドさんがこんなに可愛いがってくれるんだから。)


 なんせまだ赤ちゃんの隼人、いや、ノイアーの声が周りに聞こえるくらいだからだ。


 これは罰なのか、ただはやまっただけなのか、わかるのはこの先に待ち受けるのが最初の関門だということだけだ。


 〔バタバタバタ!バタバタバタ!〕

 「廊下を走ってはいけません!聞こえていますか。カティス様!」


 先程メイドが入ってきた扉の方から大きな音が聞こえてくる。

 そして、

〔ガチャ!!〕

「ノイアー!

   「《ショット》」起き、ふべし!」

               〔バタン!〕


 扉側を向いていたノイアーが見聞きした場面は部屋の扉を大きな音とともに開け、喋りだした少女が最後まで喋ることなく、顔面に何かを打ち付けられて倒れたところと、左腕で抱っこしているメイドの右腕が扉の方に向けられ、少女が喋ったと同時に小さい声で何かを呟いたところだった。


 この状況が生まれたあと、また1人息をきらせながらゆっくりとしゃべりながら部屋に入ってきた。


 「はっ、はっ、カティス様。まだ勉強の………?………!」


 入ってきたのは、若い男だった。

 スーツらしきものを着ている彼は、倒れているカティス様という少女を見て状況がわからず、他に部屋にいる赤ちゃんを抱っこしているメイド見て硬直する。

 彼が状況を理解し、謝罪の声をだそうとする前にメイドの静かで冷気を纏っているかのような声がそれを止める。


 「静かにしていてください。ノイアー様がびっくりして泣いたらどうするのですか?」


 この言葉を間近で聞いていたノイアーは思った。


 (このメイドさんを怒らせちゃだめだ。)


 そんなことを思われているとは思っていないメイドさんは、ノイアーが泣いていないのを確認して笑ってから、先程の彼としゃべりだす。


 「ふふっ。大丈夫そうですね。………では、サブル。これは一体どういうことですか?カティス様のこの時間の予定は座学だったはずですが?」


 「あ、いや、そのですね…………少し目をはなした間に逃げられまして。」


 「は~。またですか。何か対策を立てませんとね。サブル!カティス様を連れて戻りなさい。ノイアー様はそろそろお昼寝の時間です。」


 「了解です。」


 一応の話が終わり、サブルという彼がカティスという少女を抱えて出ていった。


 ノイアーのいる部屋がやっと静かになると、メイドがノイアーをベットの定位置に下ろす。


 「ノイアー様。少々お待ち下さいね。すぐに戻ってまいりますので。」


 ノイアーに言葉をかけたメイドが部屋からいなくなる。この状況を待っていたノイアーは自身の手がかりになるものをベットの中から見ていく。


 (う〜〜〜〜ん。だいたい敷き布団が3枚分の面積に大人が立っても頭を気にしなくていい高さ、うん子供にしたら随分といい部屋だ。

次は、ステータス!………うん今は何も起きない。今はね。次は目を瞑って体に意識を集中!………前の体との違和感を見つける。……………………………………………………あった?お腹のへその近く。へその近くを動いているんだ。これなら魔力トレーニングが出来る。)


  ノイアーは感動と消費したエネルギーでガス欠だった。

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