第44話 信頼
「ギルさまは絶対にあなたみたいな下衆になんて負けませんッ! ワタクシで良ければ喜んで報酬となりましょう!」
その声の主は
いつものモジモジした様子ではなく、毅然とした態度で言い切る。
その言葉に驚いたのはギル。
だが、他の者はおかしなスイッチが入ったのか、むしろ感化されたようで。
「ククク、負けたら一生仇敵の奴隷か。よいだろう、これもロマンというものよ」
「私もいいですよ。ギルの強さは私が一番知っています。竜人族になんて後れを取る訳がありません。断言します、ギルは負けないッ!」
「やれやれじゃ。まぁここで負けるような男ならアチシがわざわざ時空を超えて会いにくるわけもないからな。なかなか興が乗るのじゃ」
そして――
「アンタたち、揃いも揃ってバッカじゃないの! ギルくんは昔、超が百個付くくらい弱かったんだからね。そんなギルくんが、学年でも特Aの要注意人物として知られるリューヤに勝てるなんて……。負けたら一生、あんな嫌なヤツの奴隷だなんて……。
――でも、ここで退いちゃ女がすたる……か。
わかった!
アタシも信じる。全面的にキミを信じるぜ、ギルくん!
絶対に、そいつに勝ってくれ!!」
力強い仲間たちからの信頼と檄がギルの背中を押した。
そうか、簡単な話だ。
勝ちゃあいい。ただそれだけじゃん。
ギルは知らず知らずのうちに全身に力が入っていたことに気づく。
ふっと肩の力を抜くと、頭の中がクリアになり、状況がよく見えてくるようだった。
「まぁ、アイツらにそこまで言われちゃあな。わかった、それでいいぜ」
「クク……バカが」
リューヤは細い目をさらに細めて下卑た笑いを浮かべた。
しかし、次にギルが発した言葉を受けると一転して眉根を吊り上げる。
「んじゃ、俺が勝ったらの報酬だけどさ。リューヤ、テメーは一生死ぬまで敬語しか話せない。もし敬語以外を使ったら、その度に全裸で逆立ちしながらデスアカデミーの校庭を100週、ってのでどうだ?」
「なン……だと?」
「なぁ、別にいいじゃんよぉ。それとも何か? ここに来て、やっぱり俺に負けるのが怖くなっちゃったー、ってか?」
「調子に乗ンなよクソゴミが! 何も問題ねぇってンだよ! オレがテメーみたいなザコに負ける訳がねぇだろうがぁ!」
予想外の提案を受けて激昂するリューヤ。
その様子を見ていたジュナは笑いを堪えきれず膝を叩いて笑っていた。
「あーっはっはっは! ギルのヤツ、相変わらず性格が歪んでおるの。こりゃ愉快。すでに一本取ったのじゃ」
「これ、ジュナ。これからギルさまの戦が始まると言うのに、そんな大口開けて笑っていたら……って、フフッ。確かにそうでございますね。さすがはギルさま。ワタクシもあの者が全裸で逆立ちをしているところを想像したら、おかしくて吹き出してしまいそうです」
二人の笑い声が大聖堂に響く。
その中で、リューヤは肩を震わせながら怒りを押し殺していた。
「……こんなにふざけた野郎は初めてだぜ。テメーはただ殺すだけじゃ済まさねぇ。体と心に死ぬまで消えない恐怖と呪いを刻み込んでやっからな」
「ふ~ん、そっかそっか。デュエルが終わったらテメーはそのナメた口が利けなくなるんだったな。そりゃ確かにつらいわぁ。せいぜい今のうちに頑張って吠えていなさい、青トカゲくん」
「ぶぷぅっ」
ギルがからかうと、リューヤ陣営の誰かが思わず吹き出した。
すぐに振り向いて自陣を鋭く睨むと、B組の生徒たちは咄嗟に全員がリューヤから目を逸らす。
「ククク……まさかアカデミーでここまでムカつくことがあるなんてよ。頭に血が昇って気が狂いそうだぜ……」
リューヤのイった細い三白眼の双眸が再びギルに向けられた。
ギルは向き合いたての頃とは打って変わり、頭の後ろで腕を組んで余裕の表情で鼻歌を鳴らしている。
「バロバスッ。とっと始めやがれ。ルールはもう決まっただろうがぁ!」
「いや、戦闘条件と褒章をいくら賭けるかがまだ決まっていない」
「んなもん、何でもありのバトルで
「ギャーギャーうっせえな。いいから早く始めようぜ、青トカゲくん」
「コロスッ!!」
バロバスは二人を交互に見やると太い腕を高く上げた。
「デュエル! アルスターダ アーチ バスラット!」
野太い声が大聖堂に響き渡る。
多くの実力者が見つめる視線の中で、デュエルが始まったのだった。
――――――――
【デュエルインフォメーション】
〈
VS
〈リア獣〉ギルガメス・オルティア(1年ランキング400位)
ステージ:大聖堂
勝利報酬:褒章全掛け《オールイン》※
※この場合、ギル(ランキングが下位)の手持ちの8枚が上限となる
★リューヤ勝利の場合:翠、ロビン、ラヴィアン、ジュナ、ミーナのいずれか一人を一生奴隷にできる
★ギル勝利の場合:リューヤは一生敬語を使わなくてはならない。破った場合はその度に全裸逆立ちで校庭100週
戦闘条件:
――――――――
>>次回は「特別な想い」と言うお話です!
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