第28話 悪意、始動
その日は授業をサボタージュしたリューヤとその取り巻きたちが、朝から古代魔法研究部の廃部室内に集まっていた。
相変わらず薄暗い部室内で、取り巻きに囲まれながらソファに腰かけ、テーブルに両足を放り投げる少年の姿。
B組の
「
精霊使いスケイプからの報告を受け、モニターでギルとバロバスのデュエルの様子からその後の会話の大部分まで確認し終えると、リューヤはクククと笑いを漏らす。
「あー、面白え。バロバスのヤツ、速攻でヤられてんじゃねーよ。マジでクソの役にも立たねぇカスだったな。せっかく刻んでやった竜の呪いまで剥がされやがって。ありゃもう使えねーな」
「は、はぁ」
「でも、おかげで代わりにもっと良さそうな
「J組のギルガメスですか?」
「あ? そうそう、そのJ組の何とかってヤツ。あのバロバスに圧勝してんだ。アイツを手札にしたらレイアガーデンの攻略が捗るぜぇ」
手癖で
「じゃあ、次は直接リューヤくんが出るってことで?」
「んー、タイマンでバロバスがボコされてんだから、テメーらじゃ手に余るかもしんねーかんな。メンドクセーけど、見返りもデケーならオレ様がイジメてやってもいいんだけど……」
「はい」
「まぁ、ちっと情報集めてみようじゃねぇか。誰だって
「……わかりました」
スケイプはそう言って頭を下げる。
リューヤの一番の側近である彼は、入学早々に見せつけられた恐怖によって、希望を根こそぎ奪われてしまっていたのだった。
「おい。なに他人ごとみてーなツラしてんだァ? テメーらも一緒に動くんだよ。わかってんのか?」
そして、他の取り巻きたちにも念を押す。
リューヤとスケイプを除くその場にいた6人が「ウス」「はい」「うん」などと言って自らの意思を示した。
「ねぇ、リューくん。
緊張感でひりついた部室内に取り巻きの紅一点、
モエはそのままリューヤの肩に背後からしな垂れかかった。
「あぁ、バロバスを倒した野郎を手に入れたらな。オレもぼちぼちカジノにでも行きてーと思ってたとこだからよ。そん時はモエ、テメーも連れてってやんぜ」
「マ? さっすがリューくんじゃん。したら、あーし頑張んね」
褐色の肌に派手目のメイク、オレンジの派手髪を揺らしてモエがぴょんぴょんとその場で跳ねると、室内の張り詰めた空気が少し弛んだ気がした。
「おぅ。何でもいいから野郎の情報をかき集めてこい。ガッコの中だけじゃ足りねぇだろうから、ヤツの地元にも行って念入りにな。とりあえず、三日やる。テメーらならそれで十分だろ」
リューヤが言うと、取り巻きたちは威勢の良い返事をして次々と部室を後にした。
部室に一人残されたリューヤの高笑いが外まで響く。
こうしてB組によるギル包囲網が動き出したのであった。
*
「なぁ、やっぱりおかしいぜ。俺の
バロバス戦翌日。校庭。
ギルは体術の授業中にブルートとクロベエに疑問をぶつけていた。
「褒章8個って言うと、普通なら393位相当ってことかぁ。確かにここまでくるとおかしいね。すぐ上の順位の人たちも揃って褒章を獲得しているって考えるのが自然だけど、そんなことをする目的が見えないよね」
ギルの肩の上でクロベエは腕を組んで、ムムムと頭を悩ませている。
「オリャさっぱりわかんねーナ。でも、別に気にすることもなくねーか? 上位との差が少しずつ縮まっていることは違いねぇンだし、いくらなんでもこの状態がずっと続くワケじゃねーだろ?」
深く考えていない様子のブルートが一番もっともなことを言い出す。
「言われてみればそうかもな。まだ入学して2週間ちょっとしか経ってねー訳だし、焦るのは早いってか」
「まぁ、ブタにしては確かにまともなことを言ったかもね」
「ブタじゃねーし!」
結局、『暇な連中がゲーム感覚で楽しんでいる偶然でも重なったのでは?』ということにして、議論は中断。
バロバスを撃破したことで、三人にはどこかに気持ちの緩みが生まれていたこともまた事実だった。
だが、現実はその真逆。
この日から週末を挟んだ5日後。
ギルたちの周り、いや学年全体でデュエルが突然活発に行われるようになる。
そして、ギルは知らず知らずのうちに、騒動の首謀者とされていたのであった。
>>次回は「間違いだらけの情報収集」と言うお話です!
――――――――――――
【異世界デスアカデミー】の豆情報コーナー(,,>᎑<,,)ヨンデクレテアリガトネ
賞金稼ぎのモエはギャルのようなので、言葉遣いがちょっと独特なんだよね。
マ? ⇒マジ?
めっかわ ⇒めちゃくちゃかわいい
バビる ⇒とてもビックリする
ブチアゲ ⇒テンションが高い状態
この辺りはこのあとも出てくるかも(^^ゞ
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