第20話 中二病

 その日。

 朝のホームルームが終わっても、ブルートは教室内に姿を現さなかった。


 午前中は戦術訓練の授業。

 J組の生徒たちはブルートのことなどまるで気にしておらず、ダラダラと男子はジャージに着替え始めて、女子は隣のクラスにジャージを持ってぞろぞろと移動していく(戦術訓練は隣のクラスと合同で行うのだ)。



「あれ、今日ブルート休みか?」


 ギルがようやくブルートの不在に気づいた。

 言われたクロベエもふわりと浮いて教室を見渡してみる。



「ホントだ。あの優等生ヤンキーが珍しいね」


 二人して「う~む」と唸りながら思案していると、突然後ろから怪しく低い女性の声が聞こえてくる。



「フヒヒ、屍の臭いがする……」


「うお(びくっ)! いきなりなんだよお前!」


「我か? 我が名はロビン。中二病だ」


「……うわぁ(引いている)。自分で言っちゃってんぞ。また何かヤベーの来たじゃん。お前のせいじゃねーのか。クロベエ?」


※クロベエはトラブルメーカーというクソしょーもないアビリティを所持している

巻き込まれ体質トラブルメーカー:トラブルに巻き込まれやすい。また、トラブルが大事になりやすい


「なにをー! ボクが関係あるわけないだろ! ギルの方こそ頭のおかしい人を引き寄せる体質だったりするんじゃないの?(興奮のあまりとても酷いことを口にするクロベエ)」


「んだとぉ!」

「やったらぁ!」


「あ、あの……我の話を聞いてくれないだろうか」


 教室内の生徒たちの注目をもろに集めたためか、ギルとクロベエはやや落ち着きを取り戻す。


 そして、声を掛けてきた人物(女子生徒)に目をやると……



 髪は腰までありそうな長髪でチェリーレッドの髪色、ゆるゆるとしたくせ毛。


 顏は髪が完全に片目を隠していて(わざとっぽい)、覗いて見える瞳は紫黒しこくの怪しい色をしている。ただ肌は白く、顔つきは幼げでなかなか可愛くもある。


 背は155㎝ほど。平均よりやや小さいくらい。身体は細そうで……うん、つるぺたに見える。


 そして服装。体の線がわかるくらいの細身の黒闇色のローブを身にまとっているが、長すぎて足先まで隠れている。


 さらになぜか黒い手袋(レザーのフィンガーレス手袋)を両手に装着。でっかいドクロがついた杖を左手に持っていた。


 

「あぁ……」


 その姿を見て、ギルとクロベエは全てを悟った。

 この年代でたまに見かける、自分が特別な存在であるという根拠のない思い込みが激しいタイプ、まさに中二病なのだろう、と。



「ふむ。我の話を聞く気になったようだな」


「……いや別にそういう訳じゃねーけど。まぁいいや。で、話って?」


「うぬらがさっき言っておったではないか。ブルートとやらのことを」


 教室内には隣のI組から男子生徒がわらわらとやってきて、普通にジャージに着替え始めている。


 この女子、羞恥心ってものはないのかなとクロベエは思った。

 ちなみにギルは何も思っていない。



「ブルート? え、ブルートが何してるか知ってんの?」


「無論だ。我が使い魔から先ほど知らせが届いた。そやつはどうやら校舎の外にいるようだな」


「マジ? いいなー。お前の使い魔って有能じゃん。俺のは見ての通り、クソしょーもなくってさ」


「なにをー! キミの方こそクソしょーもない落ちこぼれじゃないかー!」


 ギルとクロベエは目を離すとすぐに揉めだすのだ。

 何となく二人の関係性が見て取れたロビンはやんわりと仲介。



「まぁまぁ、二人とも落ち着くのだ。ちょっと急いだ方が良さそうだしな」


「「え?」」


 ロビンに言われて、ギルとクロベエは顔を見合わせた。



「それってブルートがヤバいってことだよな?」


「そうだと言っている。くぞ、我について来い!」


 勢い勇んだロビンは教室のみんながいる方へ、ローブを颯爽とひるがえしてバッと振り向く。


 その瞬間、あられもない姿パンツ一枚の男子生徒たちの姿がロビンの視界に飛び込んでくる。


 ほとんど男子生徒の視線が自分に集中していることを悟ると、「はわわ……」と口が震えて妙な声を漏らした。


 すぐに顔は真っ赤に染まり、「ぬぎゃああああ!」と絶叫をあげて廊下へと飛び出して行く。



「……俺らも追いかけっか?」


「うん、そうだね」


 二人もロビンの後を追って廊下に出るが、やたらともたもたしていたので、すぐに追いついた。



「なぁ、俺たちを待ってなくたって……」


「いや、これが我の全力なのだ。昔から身体を動かすことは苦手でな」


「!!?」


 ロビンはめちゃくちゃトロかった。

 緊急事態だし仕方がないと、ギルがロビンをおぶることになり、その指示に従って校舎の外へと駆け出していく。


 アカデミーの周囲を囲む湖の上に架けられた長い橋を渡り、ギルの帰り道であるあぜ道に差し掛かってすぐ、ロビンは道沿いの大きな木を指差した。



「あそこだ。我が使い魔がおる」


 指さした方向へ目を向けると、真っ黒いドロドロの何かがこちらに向かってネチャネチャと音を立てながら近づいてくるのが目に入る。


 ロビンはギルの背中から降りると、使い魔に向けて腕を差し出す。

 すると、ドロドロの何かがロビンの腕にびょんと飛びついてきた。



「紹介しよう。我が使い魔、ゾンビスライムの魔苦蛾腐マクガフであるぞ」


「「キモッ!」」


 ゾンビスライムのマクガフはドロドロしていて、すごく気持ちが悪かった。


 通常のスライムでよく見かける丸っこい形も維持できないほどにドロドロで、バ〇ルスライムとか、は〇れメタルとか、そっちの方の形状をしていたのだ。


 だけど、その中にちょこんと見えるつぶらな二つの瞳はちょっとだけ可愛いかもと内心でギルは思った。



「ったく、うぬら。この可愛さが伝わらんとは、嘆かわしいにも程が――」


「いや、お前のスライムはわかったから。それより今はブルートだろ」


 ギルが言うとロビンはコクリと頷き、マクガフを地面に下ろした。

 マクガフが地面をドロドロと動き出したので、三人でその後を追っていく。

 

 そして、巨木の裏へと回り込んだマクガフの先に、腰を落として木に寄りかかる血だらけのオークが。


 顔面を潰されたブルートの姿がそこにあった。




>>次回は「オレだって」と言うお話です!

――――――――――――

【異世界デスアカデミー】の豆情報コーナー(,,>᎑<,,)ヨンデクレテアリガトネ


ゾンビスライムはこの世界では珍しいスライムみたい。

そんなレアモンスターを使役しているロビンの正体は……。


きっと、近々明らかになるはず(ง •̀ω•́)ง✧



――――――――――――

★作者(月本)の心の叫び


やっと第20話まで来ました(^^ゞ


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