第50話 サクセンカイギ

「……作戦会議をしましょう」


緊張感漂う空気の中、落ち着いた声で話しかけるルティア。


話を聞いていて元から作戦会議をする気になっていたメンバー全員が大きく頷き、話し合いをする雰囲気へと変わる。


「そうだな。作戦を練って勝つしかない。幸い、あちらの作戦は少しなら分かる」


アンドレアもグレイソンとの会話の記録を机の引き出しから取り出す。


「とりあえず、確実に相手をおびき出すために、まずはアンドレアさんにグレイソン様への連絡をして欲しいわ」

「……? なぜだ? どうせバレるのであれば、こちらが準備をする時間を増やした方が良いのでは?」


ルティアに予想外の作戦を言われたアンドレアは、口をポカンと開けてしまっている。


そんなアンドレアにも真剣な目を見せるルティア。


「確かに、そうも考えられるけど、ユニオンが負けたとアンドレアさんに直々に言われれば焦ってすぐに作戦を実行すると思うのよ。そうすれば、作戦の隙をつきやすくなる」

「……そうですね。そうするのが良いかもしれません」


ルティアが低めの声のまま言った言葉に理解を示すシリル。その横で、クラークも頷いているようだ。


「皇女様の作戦はかなり良いものだと思う。一応一度は作戦を任せてもらえたんだ。ただの駒にしか考えていない可能性もあるが、こちらの作戦に賭けていた可能性も十分にある。やってみる価値はある」


アンドレアに安心してもらえるよう、大丈夫だと念を送るシリルとクラーク。


その上、イーサンたちもルティアの作戦に賛成の意を見せるため、六人は大きく頷く。


「……分かった。連絡してみよう」


アンドレアはルティアたちの視線に負けたようで、自席を立つと通信機を持って隣の部屋へと歩いて行く。


通信をする相手はもちろんグレイソンだ。


通信機を使い始めてからしばらく経つと、相手と通信がつながった。


『グレイソンだ』

「グレイソン様。私です。アンドレアです」

『あぁ、アンドレアか。どうだ? 戦いは』


グレイソンから予想通り戦いについて聞かれるアンドレア。


話をどうやって切り出そうか考えていたのだが、考える必要がなくなって内心ラッキーと思っていた。


「あぁ、戦いですか。負けました」

『そうか、負けたか……って、えぇ!?』


まだ結果の報告をきいていなかったようで、グレイソンらしからぬ驚きの声が通信機から聞こえてくる。


「言ったとおりですよ。我々は負けたんです。お力になれず、申し訳ありません」


通信機を耳につけながら、目の前にいないグレイソンに向けて頭を下げるアンドレア。


しかし、ユニオンが負けるとは思っていなかったグレイソンは起こる気にもなれない。


『……そ、そうか。分かった。報告、ご苦労だった』

「はい、失礼いたします」


頭を上げ、冷静に別れの言葉を言うと、アンドレアは通信を切る。


そして、アンドレアは再び元いた部屋へと戻り、ルティアたちへの報告へと向かっていったのだった。



***



 そんな中、アンドレアからの報告を聞いて動揺を隠せないグレイソンは、もう一人のスピカ帝国にいる仲間へ連絡をする。


意外にも、通信はすぐにつながった。


『グレイソン様? どうされました?』

「エイダン、そちらの戦いが終わったと聞いたが、アンドレアたちは、本当に負けたのか?」


通信に出た相手は、あのスピカ帝国騎士団の団長、エイダン・ワイナリー。グレンがユニオンのメンバーに襲われたとき、間一髪で助けてくれた人物だ。


『えぇ。ユニオンは負けました。しかし、騎士団の名を使ってユニオン側にいたメンバーは幹部以外全員こちらで確保してあるので、新たに戦争に使うことも出来ますよ』

「幹部以外……?」

『えぇ。幹部はルティア様たちに取られてしまいました。本当、成長していたんですね』


嫌みのようにも聞き取れる言い方をするエイダン。


グレイソンは、エイダンの話も聞いて総合的に判断する。


「分かった。すぐに戦争の準備に取りかかる。そちらでも準備をしておいてくれ」

『分かりました』


ルティアの作戦通り、グレイソンはすぐに戦いの準備を始めた。


——スピカ帝国を救うか乗っ取られるかの戦いが、始まろうとしていた。



つづく♪




〈次回予告〉

イ:イーサンだ。

シ:シリルです。

イ:またしも戦いになりそうだな。

シ:そうですね。と、ここでイーサン様にクイズです!

イ:く、クイズ!?

シ:はい。内容は簡単ですよ。この作品の戦いについてですので。

イ:戦いについて……?

シ:はい。それでは、始めますよ! 私が初登場した際に発した言葉は何でしょう?

イ:えっと……。「アンドレア様、ただいま戻りました」か?

シ:……はい、ということで次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は?

イ:え、答えは……。

シ:作戦会議も終わり、とうとうグレイソン様と戦いのとき。

イ:俺たちは国を守るために戦うのだった。

シ:第51話『クロマク』。ちなみに、クイズの答えは「ユニオンの情報を、集めていらっしゃるんですか?」でした!

イ:間違えた……。読み直してくるか。

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