第三章

第49話 フオンナケハイ

「しかし、この『スピカ帝国の貴族への危害』というのは我々が行動を止めただけでは終わらないぞ?」


ユニオンのメンバーを仲間に迎えてから数分後。ルティアたちが楽しそうに会話をしているところでアンドレアがこの言葉を発した。


「なぜ?」

「我々は、確かにユニオンとして活動していた。しかし、我々の協力者としてブラックという組織が活動の手助けをしてくれていたのだ」


アンドレアの口から語られる戦いの裏側の部分について、初めて知ったことだらけのルティアたちはしばらく動きが止まってしまう。もちろん、グレンもだ。


フリーズしていないのは、ユニオン幹部であったアンドレア、シリル、クラークの三人のみとなっている。


「まぁ、よくある話ですよ。我々にはお金がなかったので、支援をしてもらうのがそのときの我々にとっては最善の選択だったんです」


アンドレアの発言に、シリルが分かりづらい部分に対して情報を付け足す。


「それで……その組織ってどんな組織なんですか?」


いち早くフリーズした状態から脱することが出来たオスカーがアンドレアたちに向けて質問を投げる。


あぁ、と一度頷いてから口を開き始めるアンドレア。


「以前の我々と同じようにスピカ帝国の貴族を狙っている組織だ。拠点は、レイラ王国だったと記憶している」


レイラ王国。それは、ルティアたちが建国記念のパーティーに呼ばれてグランツとともに行った国。


アンドレアの発言の中にあったレイラ王国の名に即座に反応したルティアは、すごい勢いで問い返す。


「あの、そのブラックのリーダーって誰なの!?」

「あぁ。グレイソン・バートだ」

「「グレイソン!?」」


ルティアとアメリアが声をそろえて驚きの声を上げる。


なぜなら、二人は「グレイソン・バート」という人物は自分たちにあのパーティーで話しかけてきた人物——レイラ王国の宰相だと記憶していたからだ。


「それって、レイラ王国の宰相よね!?」

「……そうなのか? 王国の中でも良い役職に就いているということしか聞いていないが」

「はい。あちらの国にパーティーに呼ばれたので向かった際、私たちに声をかけてきていたので、間違いは無いかと」

「そうか」


グレイソンが宰相だということを初めて知ったアンドレア。驚きで目を大きく見開いている。


それはシリルとクラークやイーサン、マリア、グレン、アーサー、オスカーの五人も同じであり、黙りこくってしまった。


「でも、相手がレイラ王国宰相というのであれば今まで情報戦で負けていたのにも納得がいくわ。だって、レイラ王国は複数ある隣国の中でもかなり情報を集めるのが得意な国なんだもの」


皇族として色々学んでいたルティアは、自分が記憶していた内容と関連しやすい内容であったため、一人素直に納得する。


このルティアの発言によって、黙りこくってしまった他のメンバーも、少し気が楽になったようだ。


「それでは、アンドレアさんたちユニオンの皆さん以外にもブラックとつながりを持つ人がいるかもしれないです?」

「そうだな。今の話から推測して、その可能性は十分にあると思う」


マリアの問いに、グレンは顎に手をやりながら答える。そのグレンの言葉には、この場にいる全員が頷いた。


「……それじゃあ、すぐに戦争になるかもしれないな」

「戦争に?」

「あぁ、我々が作戦に失敗したら、グレイソン様は別の作戦に移すようだった」


グレンが言った言葉までのことを考えて、アンドレアは思ったことを声に出す。ルティアの問い返しにも、しっかり答えた。


「それにしても、グレイソン様はなぜ関係の無いはずのスピカ帝国を狙うのかしら?」


疑問の意を浮かべたルティア。この疑問に対しては、ずっとシリルの横で立っているだけだったクラークが答え始める。


「ちゃんとした理由を聞いたわけではないが、一度聞いた際にはスピカ帝国を乗っ取るつもりだと言っていた。宰相の立場から、他の国の大臣にも協力を仰いでいるらしい」


クラークの言葉にいち早く反応したのは皇女であるルティアと公爵令息であるイーサン。


やはり国の中でも位が高いところにいる二人は、他のメンバーよりも「国を乗っ取る」などの情報に敏感なのだろう。


「……ちゃんと対策しないとまずいな」

「そうね、イーサンの言うとおりだわ。国を、国民を守らなくては」


これまでで一番複雑な表情をしている二人。


その二人の雰囲気によって、他のメンバーたちまでも国を守ろうという意思が芽生えてきた。


「……作戦会議をしましょう」


顔を上げ、真剣な顔つきのルティアは、とても落ち着いたいつもより低めの声で他のメンバーに話しかけたのだった。



つづく♪




〈次回予告〉

ル:ルティアです!

ア:アンドレアだ。

ル:とうとう最終章です! この物語もあと数えるほどしかありません!

ア:もう終わりに近づいているのか……。長いようで、短かったな。

ル:えぇ。最後まで全力で頑張りますよ!

ア:それでは、次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は……?

ル:レイラ王国の組織が事件に関わっていたことが分かった私たち。

ア:レイラ王国から、ブラックのメンバーから、スピカ帝国を守るべく、我々が考えた作戦とは……?

ル:第50話『サクセンカイギ』

ル&ア:次回も、読んで下さいね!

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