第44話 カンジョウ

 時をルティアがアンドレアとの戦いを始める少し前に遡り、イーサンたちがユニオンの人間と相変わらず戦っていた頃。


もうすぐでここら一帯の敵も全滅するため、イーサンたちは戦いがそろそろで終わると思っていた。


「よし、このまま一気に片付けます!」


短剣を握り、更に動きを加速させていくアメリア。先程まではサポート程度にしか剣を振っていなかったが、現在では自分から敵を倒しにかかっている。


「あと数人! 皆様、頑張って下さいですよ!」


魔法による仲間の体力回復と敵へのサポート程度の攻撃をしているマリア。自分の仲間に思いが届くよう、精一杯声を張り上げている。


そんなちょっとした頑張りがイーサンやアーサー、アメリアのやる気を奮い立たせた。


「イーサン様。あちらに回って挟み撃ちをしてもらっても良いですか?」

「了解した。息を合わせるぞ」

「はい」


イーサンがアーサーの向かう方向とは逆の方向に向けて駆けていく。


いきなり二人が的外れな方向へ走っていったことに驚き、しどろもどろしているユニオンのメンバー。


イーサンは目線で「今だ」とアーサーに伝える。その途端、二人は敵へと飛びかかった。


「「はぁぁっ!」」


シュン!


二本の剣が振り下ろされる音が響く。その剣は、相手に目立つ傷を与えたわけではないが、相手の動きを止めたよう。


二人が地面に足をつけた後、三秒ほどしてから打撃を与えた敵がバタンと倒れた。


「あと五人か……。よし、いくぞ!」

「「「はい!!」」」


やる気度を更に引き上げようとイーサンが声を張り上げる。


しかし、そんなときに敵はやってくるのだ。


「へぇ。今回はイーサン様の他にも戦える人がいらっしゃるんですね」


声が聞こえてきた瞬間、イーサンたちはそちらの方向へすぐさま体を向ける。


見てみると、なんとそこにはシリルとクラークの二人が並んで立ち、しかもその後ろにはグレンが控えているのであった。


「グレン!」


後ろにいるグレンの存在に真っ先に気づいたマリア。今までに無いくらいの大きな声でグレンの名を叫ぶ。


しかし、名を呼ばれた本人は、一瞬だけマリアに鋭い視線を向けると、すぐさまイーサンの方へ目を向ける。


その冷たい態度に怖さを感じるマリア。また、イーサンもグレンからのすごい執着を知り、更に背筋を伸ばしたようだ。


「ここにわざわざ出向いてやったんだ。やることは、分かっているよな?」


クラークも挑発するようにイーサンたちへ言葉をかける。


イーサンたち四人は、シリル、クラーク、グレンへとしっかり体を向けると、改めて自分の武器を構える。


その隙にクラークは周りに散っていた五人の仲間へと目線で集まるように伝え、その五人も命令に従いイーサンたちのことを取り囲むように集まった。


「さぁ、本格的な戦いの始まりです!」


ふっと笑みを浮かべたシリル。


これにより、イーサンたち対シリルたちの戦いも、幕を開けることとなったのであった。



***



 こちらはルティアとアオイ対アンドレアの戦い。


イーサンたちの元へ向かったオスカーや戦いの始まった仲間たちへ念を送りながらもルティアは接戦を繰り広げていた。


(皇女様の魔法の腕は向上しているな。それにあの魔法具。新しい形態で大型魔法が出しやすくなったのだろうか)


ルティアの戦いぶりを見ながら、また考察を始めるアンドレア。


(アンドレアさん。やっぱり一撃一撃が安定してる。ちょっと危ないかもしれないわね)


一方ルティアは少し気持ちに余裕がないようで。


心の余裕差でいったらやはりアンドレアの方が勝っているため、ルティアに不利な状況と言えるだろう。


「皇女様はお得意の魔法を使わないのか?」

「えぇ。まだ魔力は温存しておきたいのよ」


アンドレアの挑発に、攻撃をかわしながら笑顔で返事をするルティア。少しでも余裕に見せようと頑張っているのがその笑顔から伝わってくる。


しかし、戦い慣れしているアンドレアにとっては、そんなものは決して影響しない。


「それじゃ、こちらもそろそろペースを上げていくとしよう」


その言葉を放った瞬間、アンドレアの目は殺気立ったものへと変わり、動きも素早くなっている。


「はぁ!」


剣でルティアに斬りかかるが、ルティアを助けようとずっとそばにいたアオイが、ルティアの前にシールドを展開した。


「ごめんなさい。ありがとう、アオイ」

「何。礼を言うことのものでもない。主を守るのは当然のことだ」


アオイもさらっとフォローを入れる。


しかしそれでも、まだまだアンドレアの殺気は止まらないようであった——。



つづく♪




〈次回予告〉

ル:ルティアです!

ア:アオイだ。

ル:アオイは得意な魔法って何かある?

ア:我の得意な魔法か? それなら数多あるぞ。必殺技に使えそうなものから国を滅ぼすほどの威力の魔法まで。そうそう、百年ほどかけて開発したものもあった。

ル:ひゃ、百年……? アオイって、一体何歳なの……?

ア:そんなことはどうでも良い。それより、次回予告とやらをせねばならないのではないか?

ル:あ、そうだったわね。それでは、次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は?

ア:幹部同士の戦いが始まり、戦いも盛り上がってきたところ。我らの活躍、しかと見届けよ!

ル:第45話『リユウ』。次回も、見て下さいね!

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