第42話 タイリツ、フタタビ

 アンドレアたちユニオンの幹部陣が動きを見せない中、戦闘に参加をしていた王宮側幹部陣のルティアたちは二組に分かれての行動をしていた。


 そしてこちらはルティアとオスカーの二人組。


オスカーは騎士団のメンバーに混じって敵を倒しながらルティアを守り、ルティアは魔法による戦いのサポートを担当している。


「ルティア様! あちらの方にもサポートをお願いします!」

「えぇ! 分かったわ!」


オスカーが指を指しているのは騎士団所属の一人とユニオンの一人がお互い剣を交えているところ。


見ると騎士団の者の方が圧されてしまっている。


ライトニングシャワー光魔法!」


ルティアは、敵のユニオン側の人間に手のひらを向けると相手に直接当たらないくらいのギリギリでありながら動きを止められるところを狙って魔法を撃つ。


すると、上空から光の矢のようなものが降ってきて、敵の服の裾や靴の端を利用して地面にくくりつける。


また、敵を囲むように地面に矢が突き刺さっており、ユニオン側の彼は更に動きにくい状況になってしまった。


「ちっ……」


ルティアの魔法により動けなくなってしまった男性の声が漏れる。


しかし、抵抗しても無駄だと悟ったのか、最初こそは術から逃れようとしていたがすぐに抵抗を止めたようだ。


「敵とは言えど、あんまり傷つけたくないけど……。でも、逃げちゃったりしたら大変だから、とりあえず拘束しておいてもらってもいい?」

「は、はい! わかりました」


先程まで目の前の動けなくなっている男性と戦っていた騎士団の者が、ルティアに敬礼を向けると男性を拘束しようと去って行く。


まだこの辺一帯の敵を全員やっつけたわけではないが、騎士を数人、敵の拘束に回せる程度には余裕が出来てきたようだ。


「まだ我の出る幕はないな」

「アオイがどれだけすごいのか知らないから一概には言えないけど、今は大丈夫そうよ」


周りへの警戒を強めつつ、ルティアとアオイは小声で話を進める。


ルティアの肩に相変わらず乗っているアオイは、ジッと相手の動向を見つめているようだった。


「あなたが出るタイミングはあなたに任せるからよろしくね」

「承知した」


アオイの小さな首が、しっかりと縦に動く。


そうして、ルティアはまたオスカーのサポートへと戻っていった。


 そしてもう一つのグループ、イーサンとマリアとアーサーとアメリアの四人組。


こちらではイーサンとアーサーが剣によるメインの攻撃を担い、マリアが魔法でのサポート、接近戦を得意とするアメリアが短剣で自分たちの背中を狙ってくる者たちを倒すという作戦で戦闘を乗り越えていっている。


「だいぶ減ってきましたね」

「あぁ。このまま倒しきる!」

「「はい!!」」


アメリアの後に続くイーサンの気合いを入れる言葉に、元気よく返事をするマリアとアーサー。


周りから見ていてもかなり良い連携がとれていて、前回の戦いよりも成長したことが伺える。


そんな様子を動かずジッと見つめていたアンドレアは、顔を上げるとポツリとつぶやいた。


「前回よりも強くなっているな……。もう少ししたら我々も出る。目安としては、戦っているこちら側の人間が数人になったくらいだ」

「「分かりました」」


何も疑わず大きく頷くシリルとクラーク。しかし、グレンは引っかかったところがあるようで……?


「すみません。なぜユニオンの人間が数人になってから出て行くのですか?」


小さく手を挙げてアンドレアに問い返してしまっていた。


そんなグレンの様子を見てまた突っかかろうと前へ出るクラーク。しかし、アンドレアが目線で制止する。


そしてアンドレアはグレンの元へ歩み寄ると、膝を折って目線を合わせる。


「なぜその質問を返した?」

「あ、えっと、数人になってしまってからではこちらの方が不利だと思って……」


少し目が泳いでしまっているグレン。アンドレアはそんなグレンを見ると、ふっと微笑んでから話を始める。


「そうだな。確かにそんな考え方も出来る。それは良い考えだと思う。だが、騎士団の人間が彼らの拘束に気を取られている際に攻め込むのが良いとも思わないか?」


それは仲間を切り捨てることになるやり方だが、確かにそうだと思ったグレンは、アンドレアに向かって頷く。


その頷きを見たアンドレアは、また微笑むと目線を戦いの方へ向け、三人に指示を出した。


「さぁ、我らも戦いに一石身を投じるぞ!」

「「「了解!!」」」


自分たちの武器を握りしめ、ルティアたちが戦っているところまで走っていく四人。


途中で騎士団の者たちが足止めしようとかかってきたが、四人は倒しながら進んでいく。


そしてとうとう、ルティアたち王宮側の幹部の元へと辿り着き、再びの対立のときが来たのであった——。



つづく♪




〈次回予告〉

ア:アンドレアだ。

ク:クラークです。

ア:次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』の予告だ。

ク:とうとう本格的に戦いの場に身を投じた俺たちユニオンの幹部。

ア:皇女様たちと対立する我らは皇女様たちと再び会話をすることになるが……?

ク:第43話『カイワ』

ア:戦いはまだ続くが、そろそろ第二章の終わりが近づいて来ているぞ!

ク:俺たちは一体どうなっているのか、楽しみにしていてくれ!

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