第41話 クノウ
カキン、カキンというたくさんの剣同士が交わる音が聞こえてくる。
ルティアたちは、騎士たちが戦っているところを後ろで見ながら、本格的に戦が始まったことを実感していた。
「……さすがはユニオンといったところだろうか。騎士団の方々にも全く遅れをとっていない」
「そうですね。それに、チームワークがすごいですよ」
騎士団の者たちがルティアたちの元へは誰も近づけまいと頑張ってくれているためか、現在は出番のないルティアたち。
そのため、作戦を立てることも含めて相手の戦いぶりを観察している。
現在は少しだけ余裕が出てきたのか、敵のことを褒めてもいるようだ。
「ルティア様、我々もそろそろ加勢したほうがいいかもしれないです」
じっと戦いの様子を見つめ、自分たちが加勢するタイミングを窺っていたオスカーが口を開く。
すると、ルティアたち全員の視線が一気にオスカーへと集中した。
「そうなの? オスカー」
「はい、若干の違いですが、我々の方が圧されています。今の内に加勢して、相手の戦力を削いでおくのが良いかと」
オスカーはルティアに近づくと、小声で自身の考えた作戦を伝える。
相手の動向を気にしながらもオスカーの話に耳を傾けるルティア。話が終わると、頷きながらイーサンたちの方に体を向ける。
「護衛騎士であるオスカーの話なら、かなり信用できるわね」
「うん、俺たちよりも戦い慣れしてるはず」
「オスカー様の作戦が良いと私も思うです!」
ルティアの後に続いて、アーサーとマリアも言葉を発する。
その言葉に同意するかのように、その場にいたルティアの
「それじゃあ、私たちは加勢するわよ!」
「「「「「はい!」」」」」
相手に作戦を悟られないよう、小さな声で話をするルティアに対し、戦場に響き渡るぐらいの大きな声が響き渡る。
その瞬間、ルティアたちはいくつかのグループに分かれて戦いへと向かっていく。
そんな異変にいち早く気づいたシリルは、アンドレアに報告を始めた。
「アンドレア様。皇女様たちが動き始めたようですよ」
「そうか。このタイミングは良いかもしれないな。あちらにも優秀な人材がいるらしい」
腕を組み、真剣な表情で戦の様子を観察中のアンドレア。確かに、ルティアたちが戦いの援助に入っているところが目視できる。
「グレン、皇女様がどれだけの魔法を使えるか知っているか?」
参考にしようと、アンドレアはグレンの方へ顔を向ける。
あの失態を犯してしまってからずっとうつむいていたグレンは、アンドレアに声をかけられてやっと顔を上げる。
しかし、なかなか声を発さない。そんな様子にいらついてきたクラークは、軽くグレンの肩を叩いた。
「いつまで昔の失態を気にしてる? 今は戦をしているんだ。悩んでいるヒマは無いんだぞ!」
「は、はい……」
驚いたグレンは、目を大きく見開きながら、覇気の無い返事を返す。
アンドレアは、そんな二人を見ていて少し微笑ましいと思っていた。
「えっと、ルティア皇女殿下は水と雷の魔法が得意だと以前おっしゃっていました。ですが、どの程度の実力なのか、俺は見たことがないので分かりかねます」
今度はしっかりとした声でアンドレアに答えを返す。
それを聞いたアンドレアはグレンの頑張りにふっと微笑みを見せると、すぐさま考え始める。
(あちらの戦力はこれでこちらの今出ている戦力を上回るようになった。我らが今出れば戦力はほぼ同じか我々の方が上になる。しかし、それが作戦かもしれないのが悩ましいところだ……)
シリルとクラークはアンドレアからの指示があるのを待とうと、アンドレアに視線を集中させている。
グレンも二人に習ってアンドレアに視線を向けた。
(しかし、騎士団の面々の体力はともかく、皇女様たちの体力は終盤まで持つとは思えない。もう少し、様子を見るか)
自分たちの方針を決められたアンドレアは、自分に視線を集中させている三人に結論を伝える。
「とりあえず、様子を見てみようと思う。しかし、すぐに出てもらうことになるかもしれない。すぐに出れるよう準備をしておいてくれ」
「「「はい」」」
ルティアたち王宮側のメンバーとは違って控えめな返事を返すシリル、クラーク、グレンの三人。
自分たちの武器を握りしめると、また戦いの観察に戻っていったのであった——。
つづく♪
〈次回予告〉
グ:グレンです。
シ:シリルです。
グ:次回、『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は?
シ:我々の戦いは、まだまだ続く一方です。
グ:そろそろ俺たちの出番ですか?
シ:そうですね。そろそろ戦うことになるかもしれません。
グ:第42話『タイリツ、フタタビ』
シ:グレンさん、今度はヘマをやらかさないよう、頑張ってついてきて下さいね。
グ:は、はい! 次回も、よろしくお願いします!
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