第38話 センセンフコク
「それで……そのアオイがルティア様の使い魔となったんですか?」
ルティアとアオイの契約から数時間後、いつもと同じくイーサンたち
そのため、ルティアはイーサンたちに自身の契約について、説明をしている。
「そうなの。いきなり名前をつけてなんて言われたから、びっくりしちゃった」
「それはすまなかったが、我の力は絶大。其方の力も上がるはず」
アオイは、ルティアの肩の上に乗ろうと飛んでくる。乗りやすくするため、ルティアは肩に掛かっている髪の毛をどかした。
そんなルティアのすぐ隣にやってきたのは、ルティアの後ろで静かに話を聞いていたアメリアだ。
「ルティア様は、契約したことを後悔していませんか?」
心配顔でルティアに話しかけるアメリア。ルティアの両手を自分の両手で包み込み、胸の前へと持ってきている。
後悔しているなどと答えたら今にも泣きそうなその表情を見たルティアは、ついつい噴き出してしまった。
「アメリア、心配しすぎよ。私は大丈夫。後悔はしていないわ。アオイと仲良くなれたもの。新しい仲間が増えて、むしろうれしいわ」
笑顔でそう言うと、ルティアはアメリアの手を握り返す。しかし、それでもアメリアのルティアを心配する気持ちは消えないようだ。
「ですが、ルティア様。お話ではルティア様がよく分かっていない間に契約されたように感じます。アオイ様を非難するわけではありませんが、私はルティア様のことが心配なのです」
「アメリア……」
ルティアのことを大事に思っているからこその優しい発言に、心を打たれたルティア。
しかし、このまま何も言わないわけにはいかない。
「ありがとう。アメリア。その気持ちはすごくうれしいわ。だけど、私は本当に大丈夫よ。前より強くなれるのであれば、こちらとしてもうれしいじゃない?」
「でも……!」
「アオイだって、私にお礼がしたくて契約したのよ? まだ一緒にいる時間が短いのだし、もう少し時間が経ってからもう一度考えましょう? ね?」
なだめるようにアメリアを説得するルティア。
今度もあまり納得をしたくないようであったが、これ以上ルティアを困らせないため、アメリアはゆっくりと頷いたのだった。
***
ルティアたちがアオイのことについて話をしていた頃。ユニオン側では、事が大きく動こうとしていた。
「アンドレア様、先程お電話がきておりました」
「誰からだ?」
「ブラックのリーダーからです」
「今すぐ聞かせてくれ」
アンドレアは、目を通していた書類から目を離すと、若干前のめりになってシリルの話を聞こうとしている。
アンドレアの机の前に二人で横に並んで立っていたシリルとクラークは、そんなアンドレアの姿に笑いそうになりながらも話を進める。
「話を進めていた作戦についてだそうです」
「もう一段階、作戦を進めてくれ……と」
シリルに引き続きクラークが発した言葉に、アンドレアの表情はガラッと変わる。
雰囲気が変わったと思った瞬間に、アンドレアは椅子から立ち上がった。
「話は分かった。シリル、クラーク。頼みたいことがある」
「……何ですか?」
シリルとクラークは顔を見合わせると、首を
「今後の我々の活動にも関わってくる、重要な案件だ」
「それで、その案件の内容は何ですか?」
今度はクラークが問いかける。今では、シリルとクラークの表情も真剣なものに切り替わっている。
アンドレアは、一度椅子に座り直す。
「とりあえず、お前たちが信用出来る人間を一人ずつ連れてきてくれ。その後、作戦を伝える」
「「了解です!」」
敬礼をして去って行くシリルとクラークの二人。そんな二人の姿を見ながら、アンドレアは腕を組み、小さな声である言葉をつぶやいた。
「再びの皇女様とのご対面か……。さて、どうなることやら」
これが、アンドレアの目つきが更に変化し、戦うときの目となった瞬間であった。
***
更に一週間が経過した。現在、ルティアたちは執務室で今後の方針について更に案を練っていこうとしていた。
しかし、王宮の廊下ではルティアを探して走り回る侍女の足音が響き渡る。
やがて執務室のドアが大きく開き、息切れした侍女が厳しい表情で入ってきた。
「ルティア様、大変です!」
「どうしたの? 何かあった?」
急いでやってきたのが見て取れるその姿に驚いたルティアは、侍女の元へ駆け寄ると優しく問いかける。
侍女は、会話が途切れないよう、一呼吸置いてから口を開いた。
「反社会的組織・ユニオンが、宣戦布告をしたようです」
この一言によって、ルティアの体が動かなくなる。その上、イーサンやアメリア、マリアにアーサーにオスカーの五人にまで緊張が走っていったのであった——。
つづく♪
〈次回予告〉
マ:マリアです〜!
オ:オスカーです。
マ&オ:次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は……?
マ:宣戦布告をされた私たち。こちらも万全の準備を整えるですよ〜♪
オ:そして、ユニオン側と僕たちが再び顔を合わせるときが、やってくるのです。
マ:第39話『カオアワセ』
オ:ところでマリア様。
マ:何です?
オ:アオイ様が一人称で我を使ったり、口調がちょっと違っていたりしますが、何歳だか分かりますか?
マ:私は分からないです。今度、ルティア様に聞いてみるのがいいです!
オ:そうですね。そうしましょう!
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