第37話 ケイヤク
もうすぐで日が暮れるという時刻になると、ルティアたちが城へと帰ってきた。
「マリア、アーサー! ただいま!」
「あ、皆様! お帰りなさいです! 何か情報はあったです?」
執務室のドアの方へとお出迎えをしにやってくるマリアとアーサー。情報を持ってきていることを期待した目をしている。
しかし、その期待にそえるだけの良い情報を持っていないルティアたちは、四人で顔を見合わせた。
「ごめんなさい。聞いて回ったのだけど、今まで集めたものと同じような情報しか集めることが出来なかったの」
「そうですか……やっぱり、ユニオンも慎重に行動してるです?」
「そうみたいです。こちらも情報が漏れ出ないよう、強化しなくてはいけないかもしれませんね」
ルティアが四人を代表して口を開く。その言葉に小刻みに頷くことで反応を示したマリアは、そこから考察したことについて問いかける。
そんなマリアの問いに答えたのは、ルティアの後ろに控えていたオスカー。キリッとした真面目な表情で頷いた。
「まぁ、ユニオンが手強い相手なのは今に始まったことではないので、こちらの情報網などを強化しつつ、色々行動していくのが良いと思います」
同じくルティアの後ろに控えていたイーサンが、腰に携えていた剣を片付けながら主にルティアに向けて話し始める。
他の五人は、それを聞いて真剣な表情に切り替わった。
「そうね。さっと思いつく中で一番良いアイデアだと思うわ」
「私もそう思います。こちらとしてもいつ来るか分からない戦いに備えねばなりませんし」
ルティアとアメリアの二人が大きく頷く。これによって、大雑把な方針は決まったようだ。
「あ、ルティア様。マリア様とアーサー様にお見せしなくていいんですか?」
「あ、そうだったわ」
オスカーとルティアのこの会話を聞いて、頭の上にクエスチョンマークがいっぱい浮かんでしまったマリアとアーサー。
早くその二人に伝えるため、早速本題に入ろうと準備を始めたルティアがカバンの中から取り出したのは、あのとき手当てをしてあげた小鳥だ。
「この子、怪我しているから一番安定しやすいところに入れてあげていたの」
ルティアはそう言いながら優しく小鳥を自分の手のひらの上に乗せる。そして、手のひらを少し前に出すと、マリアとアーサーがのぞいてきた。
「わぁ! かわいいです〜!」
「本当だ。青い鳥って、珍しいですね」
二人とも、小鳥を見てうれしそうに微笑んでいる。そんな二人を見たルティアも笑顔を浮かべて話を始めた。
「えぇ。それでね、この子の怪我が治るまで私が面倒を見てあげようと思っているのだけれど、それでもいいかしら?」
ルティアの表情を見ながらのお願いを聞くと、マリアとアーサーは一瞬だけ顔を見合わせてから満面の笑みを浮かべた。
「何で私たちに許可を取る必要があるです? ここはルティア様のお家です!」
「そうですよ。それに、かわいい仲間が増えるのなら大歓迎です」
ルティアがマリアとアーサー、そして後ろに控えているイーサン、アメリア、オスカーの顔を見つめていく。
それぞれは見つめられると大きく頷いていった。
それを見てここで育てることが決まったと分かったルティアは、大いに喜んだのであった。
***
数日後のルティアの部屋。
(ここは……どこだ?)
目を覚ました先は、自身が見覚えのない場所だと気づいた様子。そんな彼女はあのルティアが手当てをしてあげた青い鳥だ。
キョロキョロと辺りを見回している青い鳥。しばらくすると、この部屋の主であるルティアが戻ってきた。
「あ、目を覚ましたのね! 良かった〜!」
笑顔で青い鳥の方へ近寄ってくるルティア。そのおかげで青い鳥の目がルティアのことを捉えた。
「怪我ももうすぐ治りそうだし。怪我が治ったら、また元の場所に連れて行ってあげるからね」
ルティアは、満面の笑みで話しかけながら青い鳥の包帯を変えようと巻き取っていく。
包帯がなくなって更に息がしやすくなった青い鳥は、ルティアをジッと見つめた。
「其方が我の手当てをしてくれたのか?」
誰もいないはずなのにいきなり話しかけられてびっくりしたルティアは、声が聞こえた方に顔を向ける。
しかし、その方向には青い鳥の姿しかない。
「気のせいだったのかしら」
首をかしげながらもまた作業を始めるルティア。青い鳥は、まだルティアのことをジッと見つめている。
「やはり其方が手当てをしてくれていたようだな」
「えぇ!?」
またしも聞こえてきた声に驚いたルティアは、声を上げてしまう。しかし、やはり声の方向にいるのは青い鳥だけだ。
「もしかして……あなたが話しているの?」
「左様」
「と、鳥さんって話せるのね……」
口をポカンと開けて目を見開いているルティア。そんなルティアの表情を気にもせず、青い鳥は話を続ける。
「其方、名前は何というのだ?」
「え、私? ルティアよ。ルティア・ラ・アルティエル・スピカ」
「そうか。ルティアよ。我は其方に礼がしたい。何でも良い。其方の望みを言ってみよ」
「私の……望み?」
いきなり言われてもさっと思いつくことが出来ないルティアは腕を組み、考え始める。
しかし、しばらく経っても思いつかなかったようで……?
「今欲しいものはないわ。それに、お礼なんて良いのよ。あなたが怪我をしていたから、手当てをしただけだもの」
「……うむ、そうか。では、こうしよう。其方、我に名前をつけてくれぬか?」
「名前……?」
「うむ」
ルティアが問い返すと、返事が返ってくる。目の錯覚なのか、頷いているようにも見えた。
「そうね……名前、名前……。じゃあ、あなたの体は綺麗な青だから、アオイっていうのはどうかしら?」
「アオイか。うむ、良い名前だ。それでは、我は名付け親である其方の使い魔だ。よろしく頼むぞ。我が
「え、あ、
いきなり使い魔だと言われて更に驚いてしまったルティア。
しかし、アオイの方はうれしそうに満面の笑みを浮かべているように見えたのであった——。
つづく♪
〈次回予告〉
ル:ルティアです!
ア:アオイだ。
ル:アオイは初めての次回予告だけど、気分はどう?
ア:うむ、悪くない。以外に楽しいぞ。
ル:良かった〜! それでは、次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は……?
ア:我が主の仲間の者たちと顔合わせをしている際に、ユニオン側で何やら新たな動きが……?
ル:第38話『センセンフコク』
ア:次回も、読むが良いぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます