第32話 パーティー

「スピカ帝国皇帝グランツ・ル・パルティア・スピカ陛下、第一皇女のルティア・ラ・アルティエル・スピカ殿下とそのお付きの皆様のご到着です!」


レイラ王国建国記念パーティーにて扉担当の警備員たちがルティアたちの紹介と共に扉を開ける。


ルティアたちは目の前の扉が開くと、一斉にパーティー会場の中に入った。


「わぁ、見てください! キラキラしたシャンデリアがたくさんありますよ〜!」

「本当ですね。あちらにはチョコレートフォンデュがあるみたいです」

「魚料理や貝の料理もあるみたいです。時間があったら食べに行きましょう、皆様!」


マリア、オスカー、アメリアの三人がキラキラした目ではしゃいでいる。


一方、ルティアとグランツはスピカ帝国を背負う者として微笑みを向けながらも姿勢を正して堂々と歩いていた。


「お父様、まずはレイラ王国の国王様にご挨拶するので良いんですよね?」

「あぁ、そうだよ」


ルティアに優しげな微笑みを向けながら大きく頷くグランツ。


親子らしさ満開のこの会話に会場にいた人たちはほっこりとした気持ちになったようで、ルティアたち七人を見守っている。


そんな見守りの目を向けられながら、ルティアたちは前に進んでいく。


そうすると、ルティアたちに近寄ってくるレイラ王国国王と皇后がやってきた。


「グランツ様、ルティア様とお付きの皆様。今日は来て下さってありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ、呼んでいただいてありがとうございます」


レイラ王国国王からの挨拶に対し、代表してグランツが感謝の言葉を述べる。


それと同時に、ルティアやルティアの付き添いとしてやってきたイーサンたちが頭を下げた。


「それにしても、ルティア様は大きくなられましたね。以前お会いしたときはルティア様が五歳のときだったでしょうか」

「その節はお世話になりました。国王陛下もお変わりないようで良かったです」


隣の国ということもあって昔からの友好国となっているため、小さいときから国王とは顔をよく合わせていたルティア。


しかし、最近はルティアの方も忙しくなってきて、あまり会う機会が無かった。そのため、過去を懐かしむような挨拶になっている。


「今日は他国の王族の皆様も集まっていてあまりくつろげないかもしれませんが、楽しんでいって下さいね。それでは」

「失礼いたします」


国王と共に、皇后も爽やかな微笑みを振りまきながらその場を去って行く。


ルティアとグランツは、国王と皇后に向けて軽くお辞儀をした。


「さぁ、挨拶も終わったことだし、何かあったら私が呼ぶからルティアは呼ぶまで好きに会場を回ってきなさい。イーサン君やアメリアやマリア君にアーサー君にオスカーもね」

「え、良いのですか?」

「あぁ、楽しんでおいで」


グランツの気遣いに、ルティアたちはついつい浮かれたくなってくる。


なんとかその気持ちを抑えながら、キラキラした目でお互いを見合うと、それぞれ大きく頷いた。


「ありがとうございます! お父様。それでは、ご厚意に甘えさせていただきますね」

「あぁ、じゃあ、また後で。楽しんで!」


皇帝として振る舞っている時とはまた違った雰囲気を纏いつつ、グランツはルティアたちに向けて笑顔を向け、手を振りながら他国の重要人物に挨拶をしに行った。


それを受けて、自由時間を手に入れたルティアは、イーサンたちの方へと振り向く。


「じゃあ、私たちもそれぞれ別行動にしましょうか。好きなところに行ってきて良いわよ」

「え、でも、それじゃあ、私たちの付き添いの役目って、どうなるです?」

「大丈夫よ。アメリアにもついていてもらうし。ちょっとした息抜きの時間よ。楽しんできてちょうだい」

「じゃ、じゃあ、ありがたく。ルティア様、ありがとうございます」

「「「ありがとうございます!」」」


マリアの問いに対してのルティアの返答を聞いて、オスカーを始めアメリアを除く付き添いとして来た四人は、うれしそうな笑顔を浮かべてお礼を言う。


もちろん、うれしそうなのはイーサンも例外ではない。魚料理の方に目を向けて、そわそわしている。


「じゃあ、また後でね。アメリア、行きましょう」

「あ、はい! ルティア様。それでは皆様、失礼いたします」


アメリアは、イーサンたちに礼をした後、ルティアを追いかけていく。


こうしてしばらくの間、ルティアたちの自由時間が始まった。


ルティアはチョコレートフォンデュをアメリアと一緒に食べながら、話しかけてくる人々との会話をしている。


また、イーサンはオスカーと共に魚料理を食べておいしさを語っており、マリアとアーサーの二人は会場にあるシャンデリアなどの素敵なものたちを眺めていた。


 そうして、三〇分ほどが経過した、あるとき。


「お初にお目にかかります、ルティア様。今日は来て下さり誠にありがとうございます」


ふと、後ろから声をかけられる。


ルティアが振り向くと、そこにはルティアと同じぐらいの身長にちょっとだけ横幅のある、歳も四十歳ぐらいの男性が声をかけてきたのであった。


つづく♪




〈次回予告〉

イ:イーサンだ。

ア:アーサーです。

イ:次回、『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』。

ア:まだまだ続く、レイラ王国での建国記念パーティー。

イ:その頃、ユニオンでは何か動きが……?

イ&ア:第33話『ケイカイ』

イ:姫様、男性に話しかけられているが、大丈夫なのだろうか……。

ア:まぁ、ルティア様の事だから……大丈夫だと、思う。

イ:そうだといいが。次回も、楽しみにしていてくれ。

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