第31話 レイラオウコク
ここで、少しだけ時を遡ること一ヶ月前。
イーサンと鉢合わせしてしまったグレンは、あの後寄り道もせずにまっすぐユニオンの拠点へと帰ってきていた。
「アンドレア様、失礼いたします。グレンです」
「あぁ、入ってくれ」
グレンがアンドレアがいるはずの部屋のドアへ向かって声をかけると、中からアンドレアの返事が返ってくる。
その女性にしては低めの声による返事を聞くと、グレンはドアを勢いよく開けた。
「アンドレア様、新たにルティア殿下たちの情報を仕入れたのですが……」
「……よし、グレン。情報、聞かせてもらおうか」
グレンは部屋に入ると、アンドレアの表情の様子を見ながら話を始める。
机の上に乗った書類を片付けていたアンドレアは、ささっと机の上を綺麗にすると、グレンに目を向けた。
「今日の視察中に、皇女殿下の仲間の一人、イーサン・ワイアットに会いました」
「……それで?」
「彼は、俺が現在何をしているのかなどの質問を返してきました。その後、ルティア殿下たち他のメンバーがやってきたので、そこから離れて様子を見ていたのですが、
グレンの話を聞きながら、所々で頷くアンドレア。グレンは真剣な表情のまま話を続ける。
「そうか……なら、こちらの作戦も変える必要が無くて良いな。情報助かった、ありがとうな。引き続き調査を続けてくれ」
「はい、分かりました」
グレンに感謝の気持ちを笑顔で述べたアンドレア。
グレンは、そんな正義感が溢れているように見える笑顔に、精一杯のうれしさ溢れる笑顔を返したのであった。
***
今度は時を戻して、更に三週間ほど時を進めた今日、ルティアたちはそれぞれ馬車に乗って揺られていた。
家族ということで、ルティアとグランツ、それとルティアの専属侍女であるアメリアの三人組と、ルティアの付き人として参加するイーサン、マリア、アーサー、オスカーの四人組に分かれている。
目的地は、レイラ王国の王都にある王宮。今回はルティアの外国で行う公務に慣れるのも目的としてあるので、いつも以上に緊張していた。
「お父様、私、変な失敗とかしないかしら?」
「大丈夫だよ、ルティア。今までも大人と堂々と話していたじゃないか」
ルティアの心配を笑って飛ばそうと試みるグランツ。しかし、それでも不安は消えないらしい。
心許ない表情を浮かべ、胸の辺りで手を握っている。
「ルティア様、大丈夫です。私もついていますし、いつも通りやればきっと平気なはずです」
「アメリアの言うとおりだ。ルティアはしっかりしているのだから。あまり気負わず、楽しもうと思った方が良いのではないかな?」
「……そうですね。頑張ってみます」
まだ自信がないながらも小さく頷くルティア。アメリアとグランツの励ましの言葉に少し不安が解消されたのか、笑顔を向けた。
***
こちらはルティアの馬車の後ろをついてくるイーサン、マリア、アーサー、オスカーの四人組が乗っている馬車。四人は、これから行くレイラ王国について話をしていた。
「レイラ王国って、海の水が青くて綺麗だと有名ですよね〜」
「そうですね。海でとれる魚や貝なんかもおいしいと言われていますよ」
「もしかしたら、パーティーの会場で食べられるかもしれない」
マリア、オスカー、アーサーの三人が口々に声を発する。イーサンも、あまり態度には出ていないが、食べ物を楽しみにしているのは表情から分かる。
四人とも、ルティアの付き添いというよりはパーティーを純粋に楽しみにしているようだ。
「ルティア様も緊張しているご様子でしたが、パーティーに出ている間にちょっとずつほぐれていくと良いです!」
「……そうだな」
マリアの元気で無邪気な発言に、ルティアのことを思い出し、温かくルティアのいる馬車の方を見守っているイーサン。
そんな様子を見て、オスカーやアーサーも自分たちの仲間に思いを馳せる。例え同じ場所にいなかったとしても、心は一つにまとまっているようだ。
「あ、そろそろレイラ王国の王宮に着くみたいです〜!」
「じゃあ、そろそろ降りる準備を始めましょうか。僕、荷物をまとめちゃいますね」
「あ、はい!!」
マリアが窓の外を見て現在地を確認する。そのマリアの言葉を聞いて、いち早くオスカーが降りる準備を始めた。
こうして、ルティアたちの乗る馬車は無事にレイラ王国へと辿り着いたのであった。
つづく♪
〈次回予告〉
ル:ルティアです!
オ:オスカーです。
ル&オ:次回! 『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は……?
ル:レイラ王国へ辿り無事に着くことができた私たち。
オ:まもなくパーティーが始まります!
ル:第32話『パーティー』。みなさん、ぜひ読んでくださいね!
オ:ルティア様のことは、スピカ帝国第一皇女護衛騎士の名にかけて守ってみせます!
ル:さすがオスカー、頼もしいわね!
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