第28話 マチヘ

 グリーンヒベルデ地域の別荘に無事着くことが出来たルティアたちは、建物の中に入るなり早速荷ほどきを始めていた。


「ルティア様、私の荷物、どこに置いておけば良いです?」

「あぁ、それならマリアに割り振っている部屋を教えるから、そこに置いてくれる?」

「はい! わかったです!」


手を挙げながら元気よく返事をするマリア。そんなマリアにニコッと微笑みかけたルティアはここの侍女の一人を呼んでくると、部屋への案内を頼む。


侍女は快く引き受けてくれたので、侍女とルティアとマリアは一緒に部屋へと向かっていく。


ルティアは、マリアを部屋へ送っていくついでに自分の部屋にも行き、荷物を置いてこようと思っているのだ。


ちなみに、ルティアの部屋は前回来たときと同じ部屋で、丸い窓が印象的な部屋。


そして、マリアに割り当てられている部屋はルティアの部屋の隣の隣の部屋なのである。


「ルティア様のお部屋って、どんな感じのお部屋です?」

「う〜ん。日が出ている時間は程よく日の光が当たっている、素敵なお部屋よ」


部屋に関してのうろ覚えの記憶を辿りながら前回来た際に感じた印象をマリアに話す。


それを聞いて、更に自分に割り当てられた部屋を見に行くのが楽しみになったマリア。より足取りが軽くなった。


「私、お部屋を見るの楽しみです!」

「えぇ、そうね。私も久しぶりで楽しみだわ!」


うれしそうにニコニコ微笑みあっているルティアとマリア。その二人のことを引き連れていっている侍女は、ルティアとマリアの楽しそうな笑顔を見て微笑ましい気持ちになったようで、優しい心に溢れた微笑みを浮かべながら歩いている。


そうして歩いている内にルティアたちは自分たちの部屋へと辿り着いた。


「マリア様のお部屋がこちらのお部屋で、ルティア様のお部屋はあちらのお部屋になっております。それでは、私はこれで失礼いたします」

「えぇ、ありがとう」


ルティアから笑顔を向けられた侍女は、笑顔を返すと一礼してからこの場を去って行く。


二人は、侍女が去って行ったのを確認するとそれぞれの部屋の中に入っていく。ちなみに、マリアの部屋は四角い窓に薄ピンクのカーテンが掛けられている部屋。


ルティアは久しぶりのこの部屋に懐かしさを感じながら、マリアは初めての部屋に胸を躍らせながら部屋の中に荷物を置く。


やがて二人が廊下に戻ってくると、ルティアは部屋の中で思いついたことを話そうと、マリアに声をかけた。


「マリア、ちょっといいかしら?」

「は、はい! なんです? ルティア様」


マリアはルティアの元へ駆け足で近寄る。ルティアもマリアに近寄ると、改めて笑顔をマリアに向けた。


「私、みんなを誘って町に遊びに行こうと思うのだけど、マリアも来る?」

「わぁ! 良いですね。じゃあ、私も一緒に行くです!」


マリアの目がキラキラ輝いている。窓から差し込んでいる日の光が当たっているというのもあるのだろうが、それだけではなく楽しみな気持ちがあふれ出ていることが分かる。


「なら、みんなのところに戻って、準備をしましょう」

「はい!! 遊びに行くの、楽しみです!」

「えぇ、そうね」


町へのお出かけに胸を弾ませながら会話をしつつこの場を去って行く二人。イーサンたちの元に戻ると、町へ出かける提案をした。


その提案にイーサンたちも快く賛成した。こうして、ルティアたちは町に出かける準備を始め、それを終えるとここの侍女に出かけると伝えて町へと歩いて行ったのだった。



***



「わぁ! 素敵なアクセサリーやおいしそうな食べ物がいっぱいです!」

「本当ですね〜! ルティア様! あそこ、ルティア様の好きなチキンサンドが売ってますよ」

「え? 本当!? どこにあるの?」

「あそこです!」


女子三人の楽しそうな会話を聞きながら町を楽しむイーサン、アーサー、オスカーの男子三人。


そんな六人がやってきたのは、グリーンヒベルデ地域が誇る大きな市場。ここではアクセサリーを扱う店や食べ物の店を中心に色々なお店が出ている。


「……ここの市場、かなり盛り上がっているな」

「そうですね。王都からも近くてちょっとした旅行気分を味わえるので、多くの人が来ているのだと思います」


アーサーとオスカーがお店の様子等を見ながら話している。


イーサンは相変わらず口数が少ないのだが、ルティアの様子を見ていたり、アーサーとオスカーの会話に頷いたりと楽しんでいるようだった。


「ねぇ、あっちにも楽しそうなお店があるわよ! 行ってみましょう!」

「ま、待ってください! ルティア様〜!」


ルティアが弾むような笑顔でお店に向かって走って行く。いきなり走って行かれてしまって急いで追いかけていくアメリア。そんな二人の後ろを他の四人も、追いかけていく。


平和で楽しいこの市場での時間は、誰もがはしゃいでいるよう。


まだまだ、楽しい休暇は続くのであった。



つづく♪





〈次回予告〉

ル:ルティアです!

ア:アーサーです。

ル:次回! 『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』!

ア:町に出かけることにした俺たちは、アクセサリーの店を回ることに。

ル:かわいいアクセサリーがいっぱいのお店がありますよ!

ル&ア:第29話『タノシイジカン』

ア:休暇は……平和で良いですね。

ル:そうね。でも、何か起こってしまいそうな気もするわよね。

ア:……だ、大丈夫か心配になってきた。

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