第二章
第23話 ツヨキチカラヲモトメテ
我らが主人公、スピカ帝国の皇女様であるルティアが強い決意を固め、そして仲間たちとの団結も深まったあの日から一ヶ月程が経過した。
あのユニオンとの戦いの日から訓練の日を増やすようになり、ルティアたちも少しは力がついてきたと感じるようになっている。
そして現在は捌月中旬。この日、ルティアとマリアとアメリアの三人組とイーサン、オスカー、アーサーの三人組は別行動をしていた。
「ルティア様、今日は魔法の訓練をする日じゃあなかったです?」
「えぇ、そうよ。今日は魔法の訓練をするの」
「じゃあ、なんでいつもと違うところへ向かっているですか?」
こちらはルティア、マリア、アメリアの三人組。目的の場所へと向かうため、三人は馬車の中で揺られている最中だ。
しかし、マリアはこれから向かう場所がどこだか教えられていない。そのため、どうしても気になるマリアはルティアに質問を投げかけていた。
「ふふふ。今日は、先生に教えてもらおうと思っているの」
「……先生?」
「えぇ。きっとマリアもよく知っている人よ」
うれしそうにニコニコ微笑んでいるルティア。マリアを驚かせたいため、どこへ行くのか、誰に教わりに行くのかはずっと伏せたまま。
一応アメリアにも伝えているのだが、アメリアもかなり口が堅いようで、マリアがいくら情報を聞き出そうとしてもニコニコしているだけで口を割らなかった。
「私、仲間外れにされるようなことした覚えないです」
頰を膨らませ、ルティアとアメリアから視線をそらしてしまうマリア。
そんなマリアを見たルティアとアメリアは、向き合って微笑み合う。期待通りの反応にうれしくならない訳がなかった。
「違いますよ。私たちはマリア様を仲間外れにしようとは思っていません。マリア様に喜んでいただきたいだけですよ」
「そうよ、マリア。もう少しで着くから、ちょっと待っていてちょうだい」
「……はいです……」
ぶーたれながらも視線をルティアとアメリアの方へ戻すマリア。ルティアはマリアの一連の動きをかわいいと思ったのだった。
***
馬車に揺られること十五分ほど。馬車の窓から顔を出してみると、レンガでできた道とその先に大きな建物と立派な門が見えてきていた。
「ルティア様、もしかして、魔法学園へ行くですか?」
「えぇ。マリア、正解よ。今日は魔法学園へ行って指導を受けてこようと思っているの」
窓の外を眺めていたマリアは、建物が視界に入ってきた瞬間、建物ではなくルティアへと視線を向け、キラキラとした目で問いかける。
はしゃいでいるのが見て取れるマリアの行動がうれしくなったルティアも、少々浮かれた様子で答えた。
ちなみに魔法学園とは、魔法を学ぶための学園で、魔力の強い生徒が教育用の学園とは別に通う教育機関だ。
ここでは魔力の制御の仕方から応用の魔法まで、幅広い範囲の魔法を扱っている。ルティアやマリアもここの卒業生の一人で、魔力の強い生徒が魔力の暴走を起こさないようにすることを目的として建てられている。
「さっき言っていた先生って、こういうことだったですね〜。もしかして、マーレイ先生ですか?」
「えぇ。その通りよ。ここに通っていたときマーレイ先生にお世話になっていたから、また教えていただこうと思って。マリアも通っていたときはマーレイ先生に教わっていたのでしょう?」
「はいです!」
自分の教わっていた先生に会えると知って更に心が躍り始めているマリア。ルティアの問いかけに大きく首を縦に振った。
「ルティア様、今学園の敷地に入りましたので、降りるご準備を。マリア様もお願いします」
窓の外をチラッと覗いたアメリア。ちょうど学園の門をくぐり抜けたところだったので、ルティアとマリアに準備をするよう促す。
早く先生に会いたいルティアとマリアは、いつもの二倍の速度で降りる準備を終わらせ、ワクワクした気持ちで馬車が止まるのを待った。
間もなく馬車が止まると、ルティアとマリアは勢いよく馬車を飛び出す。すると、馬車の目の前には二人の見覚えのある人が腕を組んで立っていた。
「ルティア様、マリア。よくいらっしゃいました」
「「マーレイ先生!!」」
ルティアとマリアの目の輝きがより一層強くなる。腕を組んで二人の到着を心待ちにしていたこの女性こそ、マーレイ先生だったのだ。
「お久しぶりです」
名前を呼ばれたマーレイは、歯を見せてニカッと笑った。
つづく♪
〈次回予告〉
ル:ルティアです!
マ:マリアです〜!
ル:第二章が始まりました!!
マ:ルティア様、第二章の抱負はなんです?
ル:え? え、えーっと、みんなにも頼られるような人間になること!
マ:では、それに向かって頑張ってくださいです!
次回『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』!
ル:わ、私たちはマーレイ先生に会うことができました。
マ:私たちが教えてもらっている間、イーサン様たちは……?
ル:第24話『チカラノタメニ』。次回も見てください!
マ:以上、突然話を振られてもちゃんと応対できるルティア様でした〜!
ル:……。
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