第18話 タイメン
緊張感に包まれながら事件発生現場へと走って向かうルティアたち。
ほぼ全員、すでに息切れし始めているのだが、急いでいるためにそんなことを考えているヒマはない。真っ直ぐに前だけを見て走り続けている。
(ユニオンのメンバーに対面することができるかもしれないのよね。このチャンス、絶対に逃すわけにはいかないわ!)
真剣な顔つきで案内をしてくれる騎士の後ろについて行きながらダッシュし続けるルティアたち。しばらく走り続けていると、緊迫した雰囲気の人だかりが見え始めてくる。
「皆様、あそこです!」
さらに走って視界に入ってきたのは横転した馬車とその前におびえて立つ公爵と公爵を守るように立つ護衛騎士たちの姿。
そして、その騎士たちとにらみ合うように向かい合っているたくさんの黒服とその後ろに立つ男性二人と女性一人。騎士と黒服の何人かは剣を交えているようだ。
現場により近くなってくると、それぞれの表情もよく見えるようになってきた。
すると、ルティアやイーサン、アメリアの三人組とマリア、グレンの二人組はユニオン側の男性の顔に見覚えがあることに気がつく。
「「「あれって……!」」」
「「もしかして!?」」
アーサーとオスカーの二人はルティアたちが驚いている意味がよく分からない。
一方で、ルティアたちはお互いが声を発したことに驚き動揺していた。しかし、走ることは止めない。代わりに会話を始める。
「どうしたの? マリア、グレン?」
「ルティア殿下こそ。どうして驚いておられるのですか?」
目線だけルティアに向けたグレン。ルティアも視線を向け返すと、ユニオンの男性とグレン、マリアを交互に見る。
「え、私は、ユニオンの男性に見覚えのある人がいる気がするから……」
「皇女殿下もです? 実は、私たちもそうでありますよ!」
「うそ、マリアたちも!?」
今度はルティアだけでなくイーサンやアメリアも目を丸くしている。そんな中アーサーとオスカーはそんな会話を黙って聞いているだけ。
自分たちが参加しようにも内容についてはよく分からず、参加できない状態でいた。
「前にユニオンの情報をくれた青年がいるです!」
「後、ナムネスを飲まされて倒れていた男性もいるわ!」
「では、あの二人の行動は作戦だったのか……?」
マリア、ルティア、イーサンの順に発言をする。
と、こうして走り続けている間にもどんどん事件現場の様子がはっきりと見えてくる。
ルティアたちがやっとのことで事件現場に辿り着くと、騎士たちは剣を交えるのを
「タニア公爵様! 大丈夫ですか!?」
ルティアたちを案内してきた騎士は、タニア公爵の元へ駆け寄り公爵の隣に姿勢を正して立つ。
まだおびえていながらもゆっくりと公爵が頷いたのを見て、騎士のみならずルティアたちも安心した。
「それで? なんでここにお前がいるんだ?」
グレンはアンドレアの後ろに立つシリルへ不信感溢れる表情を浮かべる。そんなグレンにお得意の本心を隠した笑顔を返すシリル。
余計にシリルの態度にいらつくグレンの隣にルティアがやってくると、ルティアは目線でグレンのことを制す。
「いらつく気持ちは分かるけれど、今は抑えてちょうだい」
「は、はい。分かりました、ルティア殿下」
消化しきれないイライラする気持ちを抱えつつもルティアの言うことに従って一歩下がるグレン。
それを確認すると、ルティアはユニオンメンバーへ真っ直ぐな視線を向けた。
「私はあなたのことも気になっているのだけれど? ねぇ、ナムネスのお方?」
「はて? 何のことやら?」
とぼけるクラーク。こちらも何かを含んでいるような笑顔を浮かべている。
「とぼけるな! 俺たちは、なぜお前たちがここにいると聞いている!」
剣を構えるイーサン。それに合わせて、黒服たちも剣を構え始める。しかし、お互いがにらみ合う間も与えずにアンドレアが黒服たちを制止する。
「やめておけ。今回の我々の目的は皇女様の様子を確認することだ。下手なまねは我々の足を引っ張るぞ」
「し、しかし……!」
「心配はするな。とにかく、お前たちは下がっていろ。騎士団の奴らがやってきたら帰らなければならないのだから、時間を無駄に使っているヒマはない!」
急にアンドレアの声色が低く緊張感のあるものになる。
そんな厳しめの態度に、黒服たちは渋々従い、アンドレアやシリル、クラークたちの後ろへと下がっていった。
「さぁ、貴族様。話し合いでも始めようか」
「「「「「「「……!」」」」」」」
空気を飲むようなアンドレアの迫力に押されそうになってしまうルティアたち。思わず身構えてしまった七人であった——。
つづく♪
〈次回予告〉
ア:アンドレアだ。
シ:シリルです。
ア&シ:『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』次回は……?
ア:とうとうユニオンとして皇女様たちに対面した我々。次回、その戦いが始まる。
シ:その戦いの行く末は!?
ア&シ:第19話『ハクリョク』
ア:騎士団が来ないことを祈ってくれ!
シ:私たちのために、お願いしますね……。
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