第15話 ジョウホウキョウユウ

 執務室の扉が開くと、中庭から走ってきたルティアとイーサンが入ってきた。


「遅れてしまってごめんなさい!」


息切れしてしまっているルティア。早く執務室へ帰ろうと急いでやってきたことが伺える。


「大丈夫ですよ〜。ルティア殿下。私たち、全然待ってないです!」


笑顔でルティアを迎え入れるマリア。グレンやアーサー、オスカーの三人も、優しく微笑む。


「ありがとう、マリア。じゃあ、情報の共有を始めましょうか」

「「「「「「はい!」」」」」」


六人が元気よく返事をしたのをきっかけに、ルティアたちは全員ソファに座る。その途端、少しのシンと張り詰めた緊張感が生まれた。


「じゃあ、まずはアーサー様とオスカーからお願いできるかしら?」

「「はい」」


緊張感を漂わせたまま頷くアーサーとオスカー。二人は、発表のためにまとめておいた書類を片手に立ち上がる。


「まず、俺たちは大商人・ブライアン氏の元を訪ねました。ブライアン氏には機密事項は伏せ、ユニオンについて知っていることを聞いてきています」

「ブライアン氏によりますと、ユニオンのリーダーを見た店員がいるようで、店員からの情報を得ることができました。店員はそのリーダーが女性だと言っていたそうです。これが、僕たちの書いた報告書です」


二人は、持っていた書類をルティアたちに見せる。


その報告書には、どのようにブライアンの元へ向かってどのように帰ってきたのかまでもしっかりと書かれていた。


「ブライアン氏から得ることができた情報は、それだけなのね?」

「はい。これで全部です」


しっかりと頷く二人。そんな二人の頷きを見ると、ルティアはジッと報告書を見つめた。


「そう……。分かったわ。じゃあ、次はマリアとグレン、よろしくね」

「はい、殿下」


ルティアがマリアとグレンに微笑みかけると、代表してグレンが返事を返す。そして、マリアと目配せをすると、二人も書類を取り出した。


「俺たちは、過去にユニオンに襲撃された経験のある村へ向かいました。その道中、ユニオンのメンバーだと思われる黒服の男に襲われましたが、エイダン騎士団長による助けもあって、助かりました」


襲われたと聞いて一瞬重くなってしまった空気が、一気に解き放たれて軽くなるのが分かる。再び緊張感が戻ったのを確認すると、マリアが話を始める。


「そのあとは、村へ行って聞き込みをしたです。けど、誰からも情報を得られず。謎の青年が教えてくれた、「ユニオンの目的はこの国を乗っ取るなどといったものではない」という情報しか得られなかったです」


ルティアが一連の話を終えると、報告書である書類をルティアに見せる。


こちらの報告書もまた、どのように行動していたかの情報が詳しく書かれていた。


「その青年の言った言葉の意味は……どういうことなのかしら?」

「俺も青年に問いただしたのですが、言葉通りの意味と言われてしまって」

「そう……」


しばらく考え込むルティア。このままでは考えるのだけでかなりの時間を食ってしまいそうだったので、アメリアはルティアの肩をポンと叩いた。


「あ、えーっと、じゃあ、私たちのことも話すわね。私たちは、商店街へ行ったわ。そこで倒れた男性と出会ったので、医者に見てもらい、目覚めるまで待って話を聞いたの」

「そして話を聞いた結果、ユニオンは危険薬物・ナムネスを持っているらしきことが、発覚いたしました」


ルティアに続けてアメリアが連絡をする。イーサンはというと、二人の話に頷きながら他の四人に報告書を渡した。


どうやらイーサンはルティア以外の人間とあまり話さないようだ。


「その後は、商店街の店の人たちに聞いて回ったんだけど、情報は得られなかったわ」


こうして、情報の共有を終えるルティアたち。必然的な流れで少しの間考える時間になるが、その時間を破るようにマリアが立ち上がった。


「まぁ、とりあえず情報は増えたですよ! このまま頑張ればユニオンも制圧できるです!」

「……マリアの、言うとおりだな。とにかく頑張りましょう! ルティア殿下!」


雰囲気を明るくしようと努めるマリアとグレン。それによって、少なからず暗い雰囲気は吹き飛んで行った。


「そうね。これだけ情報が集まったのだもの。これからは、ユニオンが反社会的組織であるという証拠集めや、アジトの追跡もしなくてはならないものね。みんな、頑張りましょう!」

「「「「「「はい!」」」」」」


元気で威勢の良い返事が執務室に響き渡る。そして、そのあとは今回の書類の整理をして、この日の作業を終えたのであった——。



つづく♪




〈次回予告〉

シ:シリルです。

ク:クラークだ!

シ&ク:次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は……。

シ:次回も、皇女様一行のお話です。何やらまた作業を始めたみたいですよ。

ク:俺たちは何もやらないのか?

シ:裏では色々やってるんですけどね。どちらかというと主人公に敵対する人間ですから。

ク:そうか……。

シ:第16話『コウサツ』。次回も、よろしくお願いしますね。

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