第12話 ハナシトトラブル
ブライアンに向けるアーサーとオスカーの目は先程以上に真剣なものになった。
相手までも真剣にならずにはいられなくなる食い入るようなその目つきに、ブライアンも姿勢を正し、より話に集中する。
「今日伺ったのは、この国の反社会的勢力・ユニオンについての情報をお持ちでないか、確認をするためなのです」
「ブライアン様、噂話でも些細なことでも何でも構いません。何か、知っていることはありませんか?」
アーサーとオスカーが問うと、ブライアンは腕を組み、自分の過去にあったことに思索を巡らせる。
そのためなのか、視線が下がったブライアン。そして、それに伴って非常にシンとした緊張感に包まれる部屋。
しばらくそのままの状態が続いたが、ふっと何かが落ちてきたようにブライアンの視線が上がる。
「……一つだけ、あります」
「「本当ですか!?」」
気が合ったのか、二人同時に同じ台詞を発する。二人とも期待に満ちた目をしており、机に身を乗り出していた。
それだけブライアンから得られる情報に期待していると言うことだ。
「私が店の者から聞いた話なんですがね。その者によると——」
ブライアンからの話はこうだ。店員が店の床を拭いていたら、隣の店から出てきた貴族を狙おうとするユニオンのメンバーが現れた。
少しだけのぞき見していると、なんとリーダーらしき者がやってきていたそうで。そのリーダーらしき人物は、なんと女性だったというのだ。
「じょ、女性……?」
「う、嘘でしょ。報告書を読んだ限りではユニオンに所属する者は男性ばかりなようだったけど……」
なかなかその話を信じられないアーサーとオスカー。ブライアンのことを気にせず、うつむきがちになってしまう二人。
少しだけ空気が重くなってしまったことを察したブライアンは、少しでも雰囲気を明るくしようと努めることにした。
「そ、それより貴族様! せっかく我が家に来られたのですから、家の商品を見て行かれませんか?」
「え、あ、はい」
ブライアンからのいきなりの提案に、とっさに頷いてしまうオスカー。それを確認すると、ブライアンはさっと商品の準備を始めた。
「それでは、商品の説明をさせていただきますね」
笑顔でセールストークを始めるブライアン。
明るい雰囲気にするためのものだったはずなのに、結局は自分の商売品を押しつけているだけのような状態になってしまう。
そして、そうなったブライアンを止められる者はこの場におらず、アーサーかオスカーのどちらかが商品を買うと頭を縦に振るまで、このセールストークは続いてしまったのだった——。
***
最初馬車から降りたところよりもかなり離れたところまでやってきているルティアたち一行。
しかし、そこまで来ても新しい情報をゲットすることはできず、かなり落ち込んでしまっていた。
「やっぱり、聞き込み調査でも手に入れられる情報は少ないのね」
「そうですね。ここまで来てもないと……この辺りではユニオンがなかなか来ないのかもしれません」
ため息交じりに歩きながら話をするアメリア。もうそろそろリフレッシュのできるきっかけが欲しいところであった。
「……姫様」
「なぁに? イーサン?」
「そろそろ、休憩にしませんか?」
歩き続けて疲れたであろうことも考慮して休憩の提案をするイーサン。アメリアもその提案に数度頷いている。
二人の顔を二、三度交互に見ると、ルティアは小さく微笑んだ。
「そうね。これだけ歩いたのですもの。少しは休憩しても良いわよね。それでは、少しだけカフェに寄って行きましょうか」
「「はい!」」
勢いよく返事をするイーサンとアメリア。
そうと決まれば入るカフェを決めるため、ゆっくりめに歩き出す。
周りを見渡し、見つけたカフェの中でも落ち着いている雰囲気の店を選ぶと、その店に足を運んだ。
「いらっしゃいませー!」
中へ入ると、店員からの明るい声が響き渡る。テーブルを案内されると、三人はそれぞれ椅子に座った。
「ルティア様、何にいたしますか?」
「うーん。そうね……。どうしようかしら」
メニューを眺めて何を頼むか選ぶ三人。三分程するとそれぞれの頼むものが決まった。それを察したアメリアが定員を呼ぼうと手を挙げた、そのとき……!
「こんなもん、食ってられるか!」
黒いひげを生やした男が大声を上げる。男性は、テーブルに手をつき怒りに満ちた表情で立った。それと同時に勢いよく男性の座っていた椅子が倒れる。
倒れた際の大きなガタンという音にびっくりした他の客たち。視線が一気に男性客に集まった。
そして、視線を向けたのは、ルティアたちも例外ではなかった。
つづく♪
〈次回予告〉
ルティアです! なんだか不穏な空気感が漂っていますね〜。
さて、次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』は……。
あの青年の話の意味とは!? そして、私たちの前で怒った男性に何があったのか!?
第13話『セイネント、イカリ』。もうすぐ調査も終わりです!
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