第11話 セッショク
「ユニオンの情報を集めていらっしゃるんですか?」
グレンとマリアに声をかけた青年は、背中の後ろで手を組み、笑顔を浮かべて立っていた。
何かを隠しているような青年の笑顔に、警戒心を燃やすグレン。
しかしマリアは、警戒心など燃やさずに、特有のおっとりした話し方で男性の言葉に反応してしまった。
「はいです〜。でも、ユニオンのことを知っている人が少なくて困ってるところなんです〜」
「お、おい! マリア!」
マリアが警戒することなく青年に話してしまったことに慌てるグレン。マリアはなぜグレンが慌てているのかが分からず、とぼけている。
「なんです? グレン?」
「そんなホイホイ相手に情報を伝えちゃダメだろ。あいつがどんな奴だかも分からないのに」
青年に聞こえないよう、声を潜めてマリアに注意をするグレン。
グレンに注意をされてもよく理解ができないマリアは、グレンの言葉に首をかしげてしまう。
グレンはそんなマリアを見て、マリアのその天然っぷりを治そうとするのは諦めることにした。
「そろそろ、よろしいですか?」
「あぁ、勝手に進めてくれ」
半ばどうでも良くなってきたグレン。やる気の無い返事を返す。それでも青年は、笑顔を絶やさずに話を進めた。
「それでは、私の知るユニオンの情報を、一つだけお教えしましょう」
ずっと笑顔で優しげだった青年の目が、いきなり鋭いものになる。重要な話なのだと実感させられるその目つきは、マリアの気を引き締めた。
しかし、もう色々諦めているグレンだけには刺さらなかったようで、かなりいい加減な態度をとっている。
「良いですか、よく聞いていて下さいね。ユニオンの目的は、この国を乗っ取るなどといったものではないんですよ」
その一言を言い終わると、青年はまた二人に含みのある笑顔を向けたのだった。
***
アーサーとオスカーの二人は、門を開けて応じてくれた女性に案内され、大商人の家の中へと通されていた。
「すみません。いきなり押しかけてきてしまって」
「良いんですよ。主人ももうすぐ来ると思いますので、もうしばらくお待ちを」
「あ、はい」
二人にお茶を出し終わると、優しく微笑んでから部屋を去って行く女性。それと入れ替わるかのように、少々太り気味の男性がやってきた。
「いや〜、お待たせして申し訳ありません。私がこの家の家長、ブライアンと申します」
ブライアンと名乗った大商人は、自信ありげな笑みを浮かべ、顔をアーサーたちに向けながらお辞儀をする。
「いえ。こちらこそ、急な訪問に応じていただき、ありがとうございます」
ソファに座らせてもらっていた二人は同時に立ち上がる。二人とも真剣な顔つきだ。
そんな二人にゆっくりとした足取りで近寄るブライアン。二人の座っていたソファの反対側にある一人用のソファの前へと歩いてきた。
「それはそうと、座って下さい。立ち話では辛いので」
「それでは、失礼します」
「……失礼します」
オスカー、アーサーの順でソファに腰掛ける二人。ブライアンもソファに腰掛けると同時に、この部屋には緊張感が漂い始めた。
「それで、今日はどのような案件でこちらに?」
「今日は、お話を伺いたいことがありまして、参りました」
「話……?」
「はい」
二人は頷くと、ブライアンに向けて話を切り出すのであった。
***
「ユニオンの情報ですか。すみません。私は何も知らないです」
「……そうですか」
肩を落とすルティア。その後ろで控えているイーサンとアメリアの二人も、残念と思ったことが表情に出ている。
「はい。お力になれず、申し訳ありません」
「あ、気にしなくて大丈夫です。失礼しました」
無理矢理笑顔を作って店の外へと出て行くルティア。
報告書でもなかなか得られないのだから、やはり聞き込み調査でもなかなか情報は得られないようだった。
「やっぱり、この辺りでは情報が少ないのかしら」
「そうですね。次は、もう少し遠くの店に行ってみましょうか」
「えぇ、そうしましょう」
アメリアの言葉にルティアが頷くと、五〇〇メートルほど離れたところにある店へと向かって歩き出す。
この聞き込み調査が終わるのには、どのグループももう少しかかりそうなのであった——。
つづく♪
〈次回予告〉
ア:……アーサーです。
オ:オスカーです!
ア&オ:次回、『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』。
ア:大商人・ブライアンとの話の続きと、
オ:ルティア様たちの調査の続きが見れるお話です!
ア&オ:第12話『ハナシトトラブル』
ア:調査の時間、長い……。
オ:あ、あはは……。
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