第4話 ジョウホウシュウシュウ

「これが王宮に報告が上がっているユニオンの情報の約三分の一の量となっております」


全部で六つの箱に入った大量の書類がルティアの執務用机の上に置かれる。アメリアは箱を持った際に手についたホコリを取り払いながら言った。


「分かったわ。ありがとう、アメリア」

「いえいえ」


ルティアは、机の上に置かれた箱の中身をのぞき見る。ざっと見ただけでも六つの箱の中身を全て合わせて一〇〇〇点程度はありそうだ。


「さてと、まずはこの書類たちの情報整理をしますか」

「一人あたり一箱で良いです?」

「そうね。とりあえず一人一箱分の作業にしましょうか。アメリアはサポートに入ってちょうだい」

「御意」


アメリアは軽く礼をすると壁際に寄って五人を見守る。こうすることで全体の様子を見てサポートに入る瞬間を見極めることにしたのだ。


「それでは我々は作業を開始しますね」


六つの箱の内一つを持ったグレンは、ルティアに微笑みかけてからソファへ向かう。


それに続けて他の四人もソファで作業を始めようと、箱をそれぞれ持ってソファに座る。


机の上に置かれた箱が一つだけになると、ルティアは一度だけ伸びをしてから椅子に座った。


「さぁみんな、頑張るわよ!」

「「「「「はい!」」」」」


こうして、情報収集のための報告書の確認作業が始まったのだった。



***



 三時間後。


「はぁ……。やっと三分の二……」

「量、半端ないな」


アーサーとグレンがため息をつく。始めてからあまり休まずに作業を続けてきたため疲れが溜まり、執務室の中の空気はだんだん重たくなってきていた。


「ルティア様、そろそろ休憩になさってはどうですか?」

「……そうね。さすがに疲れてきたわ」


少々辛そうな表情をしながら目をこするルティア。資料の見過ぎで目の調子が悪くなったようだ。


イーサンやオスカーも疲れてきたようで肩を回したり首を回したりしている。しかし、マリアだけは他の人たちとは違った反応をしていた。


「よし、終わりましたです〜」


そんな明るい声を聞いた途端、ルティアたちの視線が一気にマリアに集まる。


マリアは、周りに見られていることの意味があまりよく分からないようで、キョトンとしている。


「マリア……お前、終わったのかよ」

「は、はいです」

「嘘だろ……」


グレンが言葉をなくす。グレンでなくても他の人たちまで驚いて目を見開いている。


「あ、それでですね。これがユニオンの行動をまとめたものです〜」


マリアがソファから立ち、ルティアの机の前に五枚ほどでまとめられた書類を持ってやってくる。


渡された書類には、ユニオンの行動が時系列順に並んでいた。


「ユニオンの行動にパターンがないか、少しだけ考えたです。それで、なんとなく平民が困るようなことはしていないな、と思ったです」

「……確かに」

「このことから、ユニオンは何らかの理由で貴族、または皇族を相手にケンカを売っている状態、ということではないですか?」

「……そうね。その線は有力かも」


真面目な表情で大きく頷くルティア。それを見たマリアの表情はふんわりおっとりとした笑顔になる。


「マリア様が頑張ってくれたことだし、私も頑張るわね。もっと相手の動向を知るためにも」

「はい! 私に少し預けてくだされば、まだやりますので」

「マリア様、まだできるの!?」

「はい、私、読み物の斜め読みは得意なんです〜」


マリアは、とびっきりの笑顔をルティアに向けると、周りから少しずつ書類をもらっていき、また作業に戻っていった。


「マリア様、かなりすごい能力を持っているのね……」

「はい……」


書類仕事をするのが苦ではないかのようにどんどん作業を進めていくマリアの能力に、ルティアたちは驚きを隠せない。


 しかし、それで手を止めてしまっては意味が無いと判断したルティアたちは、を見合わせて少しだけ笑うと、また作業に戻っていく。


そして、コツコツと進めていった努力とマリアの能力のおかげで、この日の作業は二時間後に全て完了することができたのだった。



つづく♪




〈次回予告〉

マリアです〜。『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』次回は……。

書類を整理した私たちは、城下町へと向かうですよ〜。

第5話『チョウサ』。お出かけ、楽しみです〜!




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