第3話 ナカマ、ココニツドウ
次の日。
ルティアは長い廊下を歩き、自分の執務室へ向かって歩いていた。
ルティアが執務室へ向かう理由は一つ。
「ルティア様。もう皆様集まっておいでです」
「ありがとう。アメリア」
執務室のドアの前で待機していたアメリア。ルティアにお礼を言われてうれしそうに少々顔を赤らめる。
「さぁ、入りますか」
「はい!」
アメリアがルティアの言葉を皮切りにドアノブに手をかける。ドアが開くと、中では四人の男性と一人の女性が待機していた。
「皆様、今日は集まっていただきありがとうございます。第一皇女のルティア・ラ・アルティエル・スピカです」
ルティアは中に入ると挨拶をし、軽くスカートをつまんでお辞儀をする。すると、
「こちらこそ、ルティア皇女殿下のような方に呼んでいただけるなんて光栄です。私はグレン・ブラッドリーと申します」
爽やかな笑みを浮かべるグレン。焦げ茶の髪を持った、すっきりとした印象の青年だ。
「えぇ、よろしくね。では、他の四人も自己紹介をしてもらって良いかしら?」
笑顔でルティアが言う。そうしてルティアの言葉を聞き、真っ先に自己紹介を始めたのはルティアの幼馴染み、イーサンだ。
「イーサン・ワイアットだ。よろしく」
「えっと、マリア・アレグラと申します〜。グレンとは同級生だったです。よろしくお願いするです〜」
「ア、アーサー・レンヌです。……よろしく」
「オスカー・ジャックです! ルティア様の護衛騎士も任されております。よろしくお願いします!」
物静かであまり表情が変わらないイーサン、おっとりとしているマリア、控えめな性格のアーサー、明るくて元気なオスカー。
五人とも個性的なメンバーが集まったな、とルティアは五人の顔を見比べながら感じている。このメンバーであれば、賑やかな集団になるなとも思った。
「皆様、よろしくお願いしますね。それでは、早速今日の議題に入りたいのだけれど、良いかしら?」
五人の首が一斉に縦に動く。それを見たルティアは、心がホッとするのを感じた。
「それじゃあ、今日皆様を召集した理由から説明するわね。
もう手紙やそこにいるアメリアから聞いて知っているかもしれないけれど、お父様がそろそろ私に帝位を譲ろうと考えているみたいなのよ。そして、帝位を告げるようにするためには試練をクリアしなければならない。
今回は、皆様に試練を手伝っていただきたいと思い、召集をしました」
ルティアは、執務室の中程にあるソファに腰掛け、五人にも座るよう促す。五人がソファに座ったことを確認すると話を続けた。
「あなた方のような優秀な方に手伝っていただけるとすごく心強いのだけれど、やってもらえるかしら?」
真っ先に首を縦に振り手伝う意思を示すイーサンとグレン、そしてオスカー。他の二人は、腕を組んだり顎に手をやったりして考え込んでいる。
「……あの、それって、私たちが手伝っていても皇女殿下は皇帝になれるんですか?」
マリアからの質問。ルティアはすかさず答える。
「えぇ。将来皇帝として国を取り仕切ることができるかどうかをみるものだから、むしろ仲間がいた方が良いのよ。人を動かすのも、皇帝の仕事でしょう?」
「……確かに、です」
ルティアの回答を聞いてふむふむと頷くマリア。また考え始めたマリアは、考えがまとまるとルティアの目を見てニコッと笑った。
「でしたら、私もやるです!」
まっすぐに腕を上げて、意思の表明をするマリア。そんな様子も持ち前の穏やかさからなのか、おっとりしているように見える。
「イーサン、グレン様、オスカー、マリア様、ありがとうございます。アーサー様はどうですか?」
ルティアは、視線をアーサーの方へ向ける。後はアーサーの返事だけだったので、他の四人もアーサーに視線を向けた。
そんな視線を向けられた当人であるアーサーは、顎に手をやって考え込んでいる。
「……それって、こちら側に利益はあるのですか?」
目線だけルティアに向けて質問するアーサー。ルティアは、軽く頷いてから質問に対する答えを続けた。
「えぇ。試練の期間は一年なのだけれど、この期間が終わったら良いところに出世したり
「……。なら、僕もやります」
先程のマリアとは違い、控えめに手を上げて意思の表明をするアーサー。それを見たルティアの顔がぱあっと明るくなった。
「ありがとうございます! アーサー様。それでは皆様、これからよろしくお願いしますね」
ルティアは、今までで一番のうれしそうな笑顔を浮かべた。
つづく♪
〈次回予告〉
イーサンだ。 次回の『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』。
……姫様の、執務室での話だ。
第4話『ジョウホウシュウシュウ』。お楽しみに。
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