第2話 キョウリョクシャ
「あ〜ぁ。一年だなんて、お父様は何を考えているのかしら?」
自分の部屋へと戻ってきたルティアは、自分のベッドに寝っ転がり、枕に顔をうずめながら期間についての文句を言っていた。
期間が短いと言い損ねてしまったことに対して後悔をしているが
「でしたら、今からでも謁見の間に戻って、期間が短いと申してくれば良いではありませんか」
ルティアに愚痴に対して冷静に言ったのはルティア付きの筆頭侍女、アメリア・ハーパー。
ハーパー伯爵家の次女で、十八歳。マロン色の髪で水色の目を持った、ルティアの優しいお姉さん的な立場だ。
「そ、それは……」
「ほら、言いに行かないのでしたら、早く
要するに
アメリアに言われて、ルティアはゆっくりと体を起こす。文句を言うだけではなく、ちゃんとメンバーを決める気になったようだ。
「……そうね。……それに、お母様が亡くなってからあれだけ気合いのこもった顔をするのは初めてだもの。お父様のためにも、頑張るしかないわね」
一瞬だけ湧き出てきた寂しさを隠すように笑顔を浮かべるルティア。スピカ王国の皇后であったルティアの母は、ルティアが小さかった頃に永遠に会えぬ人となってしまっていた。
「そうですよ。皇帝陛下のためにも頑張りましょう! ルティア様!」
気を遣ったアメリアは、ルティアにより明るく振る舞った。
そんなアメリアの優しさをうれしく思ったルティア。寂しさも吹き飛ぶような笑顔を、アメリアに向けたのだった。
***
そして、ルティアたちが
「まぁ、候補はこんな感じね」
二人は
二人は、ここからさらに五人に絞ることにしている。
「それにしても、なぜ五人に絞るのですか? 反社会的勢力を制圧するのであれば、できるだけ人数は多い方が良いと思うのですが」
すっかり冷めてしまった紅茶を入れ直しながら、アメリアがルティアに質問をする。それを聞いたルティアは、疲れた様子を見せながらもしっかりと答えた。
「そりゃあ、作戦を実施するときはそれなりの人数が必要よ? でも、このメンバーは作戦を決めたり今後の方針を決めたりするメンバーなのよ? 人数が多すぎてもダメでしょ。三人でも良いくらいだわ」
「なるほど。そういうことでしたか」
納得した表情をしながら、ルティアの机の上に紅茶のカップを置くアメリア。ルティアは控えめに「ありがとう」とアメリアに言うと、カップを口に運ぶ。
お礼を言われたアメリアは、ティーポットをお盆の上へと戻しながらルティアへ微笑みを向けた。
「じゃあ、ここから五人に絞るのだけれど……アメリアは誰がいいと思う?」
「う〜ん、そうですね……」
ルティアからリストを受け取り、二十名の名前と特徴を眺めるアメリア。
しばらく考え込むようにリストに見入っていたが、考えがまとまるとリストから目を離す。
「私は……この方々が良いと思いますけどね」
アメリアが指さしたのは、アカデミーを首席で卒業した十七歳のマリア・アレグラ子爵令嬢、次期宰相候補の一人で十七歳のグレン・ブラッドリー侯爵令息の二人。
二人とも、アカデミーに通っていた時代から将来有望だと言われてきている者達だ。
「それと、個人的に幼い頃から面識のあるイーサン様がいると頼りになると私は思いますが」
「そうね……じゃあ、その三人とアーサー様とオスカーを入れて、この五人にしましょうか」
ルティアが指さしたのは数学が得意なので有名な十四歳、アーサー・レンヌ男爵令息に、現在ルティアの護衛騎士の人についている十九歳のオスカー・ジャック子爵令息。
そして、アメリアが言ったイーサンはルティアの幼馴染みであり、国内トップレベルの剣の腕前を持っていて、その上次期宰相候補の一人でもあるイーサン・ワイアット公爵令息。ちなみに、年齢は十六歳だ。
ルティアの決めた五人の名前をざっと眺めてから、アメリアは満足そうに大きく頷く。
「分かりました。そうしましたら、明日の三時頃に皆様に集まってもらう形でよろしいですか?」
「えぇ。そうしてちょうだい」
「承知しました」
アメリアは軽く頭を下げると、王宮への召集の手紙を書くために部屋を出て行く。
安心感と達成感に満たされてやっと一息つけたルティアは、これから忙しくなることを予想しつつ、深く椅子の背もたれに寄りかかったのだった。
つづく♪
〈次回予告〉
アメリアです。 次回『皇女サマの奮闘記〜試練に追われて大忙し!〜』。
第3話『ナカマ、ココニツドウ』。次回も、ルティア様をよろしくお願いいたします。
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