第5話 再会
「あれ?つーか。これ。これ!俺の身体?仮の身体?珈琲豆………八十粒。って。もしかして。もしかして!こ、これ!おまえに預けた珈琲カップ二杯分の珈琲豆の。残り、とかじゃないよなあ。うん。違う違う。二杯分の珈琲豆は無事無事」
「うん。違わない違わない。無事じゃない無事じゃない」
朗らかに笑うこいつに、私は真顔で手を振って否定した。
「食べる物がなくて困った時につい手を伸ばしてさ。なんか。別に困った時じゃなくても、欲しくなって。時々食べるようになった」
「おい!!!だめでしょ!!!この戦いが終わったあと!!!おまえと一緒に珈琲を飲もうって。うう。ううう。預けるんじゃなかった」
地面に両膝と手をついたこいつに、けれど謝罪を言う気は全く起こらず。
それどころか、沸々と怒りが生じ始めた。
「いや。泣きたいのはこっちよ」
「はい?」
「こんな再会望んでないって言ってんの。早く肉体に戻れ魂」
「あ。ひどいひどい止めて止めて」
有難い事に服を身に着けているこいつの胸倉を掴んで宙に浮かせて、ブンブンブンブン上下左右に振らすも、元の珈琲豆に戻る様子は皆無だった。
「ッチ」
「舌打ち止めて!揺さぶり止めて!あ!あ!無理無理。うん。うん。ちょっと落ち着こう。ね。うん。多分この俺。俺っつーか。俺の魂?多分。あの。肉体の魂じゃないから!肉体動いてる!うん!多分!あのこれ珈琲豆に籠った俺の魂だから!戻れない!戻れない!」
「はあ?」
「多分!つーか!絶対!珈琲豆をもう食べないでって言う為にこの姿になったんだと思う!いや遅えよ!俺!もっと早く俺の姿にならんかい!こいつが一粒食べる前に俺の姿にならんかい!」
「あ?この野郎!私が生き延びる為に珈琲豆を食べたっつってんだろうが!あんたの姿になったら珈琲豆食べられなくて私は死んでただろうが!」
「死なねえよ!俺が助けるから!食べ物いっぱい持って来てるから!」
「どの口が言うか!真っ先に私を置いて飛び出したくせに!」
「おまえなら大丈夫だって信じてたから!」
「ありがとう信じてくれて!」
(2023.9.29)
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