第2章 12話 再会
「うーん、ここで待っていても何も進展がないわね。もう少し近づいてみましょうか?」
しばらくの間は屋敷の庭の茂みでロボットが出てくるのを待っていた2人だったが、シャルロットのほうが先にしびれを切らして話を切り出した。
クロエもすぐに乗ってくると思ったが、彼女は意外と辛抱強かった。
「いいえ、待ちましょう。黒い影が太陽の下に姿を現すまでね。光の中にあってもまだ黒い影なのかどうか気になるわ。
どんなに陰湿なものでもお日様の下では少し陽気になってしまうものよ。吸血鬼でなければだけれど」
右手に青い花を握りしめたまま、真剣な顔で答えた。普段おちゃらけているクロエにそんな表情をされたら、シャルロットは黙って首を縦に振るしかなかった。
それに、彼女も黒い影を恐れていたので、明るいところで正体を暴くのはいいかもしれないと思った。
そのまま時間だけが前へ進み続け、1時間は経っただろうか。ようやく屋敷の扉が開くのが見えた。
「何か出てくるわよっ。黒い影?それともロボット?」
先に反応したのはシャルロットだった。すっかり待ちくたびれていた彼女は、小鳥が初めて鳥かごから飛び出したときのような弾む声を出した。
一方、クロエは遅れをとってしまってシャルロットのテンションに乗り遅れた。
しかし、扉からのっそりとロボットが出てくるのを確認すると、
「きゃー!我が愛しのスコティッシュ・リリィだわ!」
と甲高い声をあげたので、今度はシャルロットがついていけなかった。シャルロットはこの声がロボットに聞こえてしまうのではないかと焦って、慌ててクロエの口元を手で塞いだ。
だが、距離があったのでロボットの耳には入らなかった。ロボットは警戒する様子もなく、のっそりと二足歩行で屋敷を出て、回れ右をしてそのまま右に向かって歩いていった。
2人はロボットの
彼は左手に取っ手のついた桶を持ち(というより引きずり)肩から布の鞄を提げていた。
そして何より少女たちの目を惹いたのは右手で引きずっていた長い木の枝だ。枝の後方には時おり光の反射でキラキラと細い糸が見えた。
そう彼は釣り竿を引きずって森の中へと消えていったのだ。
「ちょっと何?あのロボット、洗濯だけじゃなく釣りまでするの?」
シャルロットの瞳は今にも飛び出しそうな程、大きく見開かれた。
「スコティッシュ・リリィは、魚が大好物なのよ!だって猫だし。消化酵素はどうなっているのかしら?
あら?先日屋敷で見たときはバッテリーのようなもので充電してたような気がするわ。まあいいわ。ロボットだもの電気も必要ね!とにかく素敵だわ!」
クロエはいつも通り雄弁になって瞳を輝かせた。そして2人は昨日のロボットの洗濯を思い出したのか、お互いの顔を見てクスクスと笑いあった。
「ねえ、後をつけましょうよ」
シャルロットがリードした。クロエは「イエス、サー」と言って、ポニーテールを高く結んでバックパックを背負った。
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