第2章 5話 出会い
「この部屋新しくない?」
シャルロットが先に沈黙を破った。
「たしかにこの部屋はアンバランスね。私の推定だとこの屋敷は築100年は経っていると思うの。だというのにこの部屋は近代的思想にあふれているわ。なんて素敵なのかしら」
クロエはきょろきょろと周りを見渡すと、隅のテーブルの上のものに視線を送った。彼女の声のトーンが上がった。
「シャルロット、見て!ここに金属の人形があるわ。もしかしてロボットというのかしら?ああ、そうだわ!昔ここに天才科学者が住んでいて、このロボットを造っていたのよ。
誰にも邪魔されないように古い洋館にひっそり住みついて。ああ、夢のようね!私ロボットを見たのはこれが初めてだわ!動くのかしら?ねぇ、シャルロット、私たち親友になれると思う?」
クロエの緑色の目が大きく見開いているのが容易に想像できた。シャルロットは気後れしながらもまじまじとロボットを見た。
「本物かしら?私も初めて見たわ。どこかにスイッチはないの?」
やはり好奇心からロボットに近づき、灯りで照らした。それは身長が90センチほどでテーブルの上にちょこんと座っている。長方形の体の上に正方形の頭が乗っていた。
顔にはぎょろっとした猫のような目が2つと大きな口があり、まるで猫の顔のようだ。頭にはアンテナが2本、触覚のようについていて、腕と脚の部分は金属のバネのようなものでできていた。
手の指は3本でちょうどリンゴをつかめるような大きさだ。足は全長に不似合いなほど大きい。大男くらいのサイズがある。3本だがきちんと足の指もある。二足歩行できそうな造りをしていた。
「スイッチ、スイッチ!」
クロエが心をときめかせてロボットの背中側に回ると、2人が入ってきたドアとは違うドアが「ギギギー」と音を立てた。彼女たちが驚いてそちらに目をやると、真っ黒の物体が声を上げた。
「そ、それに触らないで……!」
2人には地の底でうごめく亡者のような声に聞こえた。少女たちに先ほどの恐怖が蘇った。
「いやあああ、リビングデッドだわ!」
クロエの叫び声で、シャルロットが飛び出した。2人は足がもつれていることにさえ気づかないで自分たちが入ってきたドアを目指した。
ランプを置き去りにしたまま、暗い廊下と階段をまるで暗闇の中でも目が見えているようなスピードで走った。
アーシャインの石像が見つめる先の扉を力尽くでこじ開け、屋外に出て、ふり返ることなく、屋敷から立ち去った。
「こ、壊れてないかな?」
真っ黒の物体はぶつぶつ呟きながらロボットに近づいた。過去にも何度かこのような騒動は経験しているが、いつまでも慣れそうにない。
真っ黒の物体は発電機の側のコードを力一杯引っ張った。「ゴオオオオ」とモーターが音を立てて部屋に灯りがついた。
同時にいくつかの機械が目を覚ました。真っ黒の物体がロボットに手を伸ばし、腹部にある扉を開き、小さなボタンを押すと、大きな猫の目が黄色く点滅した。
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