No.12 チアーズ! ”俺”ハーレム部隊結成(前編)
ハルとナツが出会った翌日、ナツの初登校の日――
結局、その日は学校は二人そろって早退することとした。
ナツは『大丈夫よ』と強がってはいたものの、明らかに参っているのをハルは見逃さない。
『お前が倒れるわけにはいかないだろう?
そう言われるとナツは弱い。
実際に拒否反応が強すぎて吐きまくってかなり疲弊している。
対策を考えて翌日以降に備えるためにも、今日は早退するというのは助かる提案ではあった。
……というわけで二人は揃って早退。
さっさとアパートへと戻って休憩をした。
(あー……ラブレターとかの返事全部放置しちまったけど――ま、いいか)
今まで律儀に全てに対応していたが、何だかそれがバカらしくなってきた。
相手の気持ちを軽んじたり踏みにじったりするのが嫌で対応してきたが――相手は相手でハルの気持ちなんてお構いなしなのだ。
だったら自分も気にする必要なんてないんじゃないか? そんな気持ちが湧き上がって来た。
……そんな気持ちも、ナツがいなければ湧いてくることもなかったんじゃないか、とは自覚はしている。
「あ、ねぇねぇハル! 私お昼ご飯食べてないんだった! お腹空いたよー!」
「…………わかったよ」
泣いた烏がもう笑った。
呆れながらも、『そういや俺も食ってねーや』と思いつつ――二人分のちょっと遅めの昼食の準備をするハルなのであった、
「よーっし、お腹も膨れたし元気いっぱい!」
「そか。そら良かった」
すっかりと元気を取り戻した……かのように見えるナツに、素直にハルも笑みを浮かべる。
『自分自身だから』という理由を抜きにしても、ナツには明るい顔が似合う、とハルも思っている。
「えへへ、改めてごめんね。私のせいで学校早退になっちゃって」
「ああ。まぁそれはいいさ。借りはきっちり返してもらうからな」
「……んもう、わかってるわよぅ」
敢えて軽口で返すハルに、同じく軽口であることは理解しているであろうナツもわざとらしく唇を尖らせる。
そんなお互いを見て、お互いに『ふふっ』と笑みを交わし合う。
(……やっぱり不思議な気分だな)
『自分自身』であることは感覚で理解できているが、筋金入りの女嫌いである自分が女子とこんな風に笑いあえる時が来るとは――と少し感動するハルなのであった。
「ハル、言っちゃなんだけど……時間に余裕はあるよね?」
「そうだな。今日はもう用事はない――敢えて言うなら、晩飯どうするかってくらいだ」
自炊は出来るが、学校もありあまり時間の余裕がないため基本的には外食かコンビニ弁当が主だ。
今日の昼食もインスタントラーメンを作ったに過ぎない。
ナツもいることを考えたら、晩飯をどうするかに関わらず外出する必要はあるだろう。
「おー……夜ご飯かー……じゅるり」
「おい」
「あ、ごめんごめん。いやー、こっちの世界のご飯、私の世界のと違って色々と楽しみでさ」
恥ずかしそうに笑うナツであったが、涎は垂れっぱなしだ。
一体どんな飯を普段食べているのやら、と呆れるやら心配するやら。
「で? 用事はないが……それがどうした?」
「あ。えっとご飯の相談もしたいのは山々なんだけど――時間が結構できたから、ハルに約束通り『並行世界の証拠』を見せてあげようかなって思うんだけど、どうかな?」
「……!」
『早ければ明日、遅くても明後日』と言っていた件だ。
「それは――願ってもないな。
ナツの方で問題なければ、折角時間が取れたんだ。早めに頼みたいくらいだ」
彼女の言うことは概ね理解したし信じるに足る、と思ってはいるがあくまでそれは『感覚』の話だ。
やはり実際に『並行世界』を体験しないことには、最後の一線で信じ切れない――疑り深いからではなく理性のブレーキが強すぎるがためにそうなってしまっているのである。
ナツを信じる『最後の一押し』。それをハルは欲していた。
(…………『最後の一押し』が欲しいってことは、やっぱり感情ではこいつのこと信じてるんだよなー、俺)
感情と理性、両方の同意がなければ信じ切れない。
そんな自分の性分を恨めしくも思うが、感情のまま適当なことをする人間にもなりたくない。
「わかった。ハルの用事とかがないなら私はいつでもおっけーよ!」
「よし。なら早速行くか」
提案したナツ自身には何も問題はないようだ。
ならばさっそく『並行世界』旅行といこうじゃないか、とハルは柄にもなく浮足立っていることを自覚していた。
ハルがウキウキとしているのは明らかにわかっているのだろう、ナツはそんな彼を微笑ましく思う。
「それじゃ、まずは私の――N世界に行くわよ。
そこでハルを守るために集まってもらった、
「! おう」
そして二人は、ナツの用意した『超科学パラレルワールドゲート』を通じて並行世界を移動するのであった。
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