第29話 復興作業
2週間が経ち、街もだいぶ復興が進んできた。
壊れていた家屋はほとんど元通りになり、あとは外装とインフラの整備をするだけ。
資材が足りていないからここで打ち止めになっているが、景観は魔族に襲われる前とほとんど変わらなくなっていた。
日本人からすれば流石に早すぎる気もするが、何せこっちには魔力ほぼ無限大の俺と剣聖がいる。
復興が早く進むのも当然だ。
しかし、当然ながら順調なだけではなかった。
「大臣! 今晩の避難食で食糧庫が底を尽きる見込みです!」
「マジで!? 想像以上に早かったな……」
色々なことをこなしていたせいでいつの間にか復興大臣に任命されていたが、そんなことはどうだっていい。そう、食糧問題だ。
街が機能していないため、流通が死んでいる。
1度、王都から食材などの支援物資を輸送してくれたが、運悪く盗賊団に根こそぎ奪われたらしい。
今は第二回の輸送が行われているので、これはなんとしても盗賊団に奪わせるわけにはいかない。
「次の食糧が届くのはいつ頃だ?」
「書簡によりますと、明日の昼頃になる見込みです!」
明日の朝の分がないのか。
かなり切り詰めて食事を提供させているからこれ以上切り詰めるのは厳しいだろう。しかし、避難民には子供や乳幼児もいる。
大人だけならまだしも、子供にはしっかりご飯を食べさせてやりたい。
「…………なんとかする。今日の夜はいつも通り出せ」
「かしこまりました!」
下がっていく従者を見送ってから俺はズキズキ痛む頭を抑えながら庭に向かった。
ここ数日、全く寝れていない。
ゴーレムを動かし復興現場を手伝うのと、料理を提供したり、生活環境を整えたりとどれだけ高速でやってもタスクが減らない。
今は身体の魔力を速い速度で循環させ、意識を保っている。感覚で言えば、過剰にエナドリを摂取したような感じか。
岩魔法と水魔法で作った遊具で遊ぶ被災した子供たちを眺めながら、木陰の下で軽く涼む。
「アスファルト様」
「ん? どうした?」
瞑っていた目を開けると、声をかけられたので目を開く。
そこには、遊具で遊んでいる子どもたちの親が集まっていた。
なんだろう。授乳室が一部屋じゃ足りなかったか? それとも、一部屋辺りの人口が多いのだろうか?
「何か要望があったか? なんでも言ってくれ」
「いえ! そういうわけではないのですが……その少し、お休みになられてくれませんか?」
「休む?」
「アスファルト様が我々のために尽力してくださっているのは十分承知しています。しかし…………その、お身体が心配なのです。顔色も優れないようですし……」
「あー…………うん、そうか。心配をかけてすまなかった。だが、今日だけは見逃してくれないか? 今日を乗り切ればだいぶ楽になるから」
「わかりました。その、あまり無理をしないでくださいね? あなたが精一杯動いてくださっているのは、我々全員が存じ上げているので」
「あぁ、ありがとう」
親たちに礼を言ってから立ち上がり、遊具の点検をしてから屋敷の中に戻ると、先ほどの使用人が再び近づいてきた。
「報告! 支援隊がランデブーポイントまで接近とのこと!」
「よし。ウコンジュシを呼べ」
「はっ!」
使用人がウコンを呼びに戻っている間に、俺は戦闘用の服に着替え、剣を装備する。
「ロサリア。準備はいい?」
「問題ない」
野郎の手を握るのは嫌だが、緊急事態だから致し方ない。
「『テレポート』」
ウコンがそう呟くと、気づいたら俺は森の中にいた。
「『感知』…………うん、後方500mに盗賊団。数は20」
「即片付けるぞ」
そう言って2人で駆け出す。
魔法は無しだ。
この後使う用事があるからな。
「!? 敵襲だッ! 武器を取れ!」
俺たちの接近に気がついた盗賊団がそう声を上げて反撃してくるのを、俺たちは冷静に捌いていく。
一撃一撃で敵を斬り伏せていき、10秒かからずに全員の意識を奪うと、盗賊団を縛るのはウコンに任せ、俺は近づいてきた王都からの支援隊の方に歩いていく。
「止まれッ! 何者だ!」
「ロサリア・フォン・アスファルトだ。家紋はここに」
そう言って俺は首にかけていたペンダントを取り出す。
「これは…………大変失礼いたしました! この度の魔族襲来における被害におきましては、心からの哀悼の意を表します!」
「お気遣い傷みいる。…………支援物資はそちらに?」
「はい。食糧や資材など」
「国王陛下に感謝の意を伝えておいてくれ」
「承りました!」
そう言ってから俺は風魔法を使って飛翔し、遥か彼方にある街を視認する。
剣を抜き放ち、街の方に向けて…………
「『アイス・ドーム』」
今まで貯めていたほぼ全ての魔力を消費し、氷のトンネルを作り上げる。
あとは支援物資と盗賊をこっから流せばすぐに物資が街につくだろう。
距離はおよそ10kmの高低差のあるトンネル。トンネルというより滑り台の方が近いかもな。
一気に莫大な魔力を消費したこととこれまで蓄積されてきた疲労によって、頭痛が激しくなってきた。
ズキズキ痛むのをを我慢しながら地上に降り、唖然とする派遣部隊の人たちと苦笑いをするウコンを横目に、俺は魔力を回復させるために、仮眠の体制に入った。
【あとがき】
全部書いたのに全部消えてブチ切れながらもう1回書きました。
こんなにキレたのは妹にアイス取られて以来です。
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