第28話 七神の使徒
数日が経ち、俺も魔法学院附属の病院から退院することができた。
俺が倒れた理由は魔力切れのみだったか、だ。魔力が完全に回復した今、もう入院して
いる理由はなかった。
そして俺は今……
「オーライオーライ! ちょっと来すぎ! 少しそっちで……そうそこ!」
街の復興作業を手伝っていた。
俺の魔法圏内にあった建物のほとんどが半壊もしくは全壊しており、今は1から家を建て直している。
と言っても、こっちには剣聖がいる。
俺が復興作業に参加するときにはもう既に街の2割は回復していた。いかんせん倒壊している家屋が多いので消耗は激しいようだが、マッマとイチャつけば体力が回復するらしい。便利な身体だ。羨ましくはないが。
「お疲れ様です。ご主人様」
作業をしていると、ラミィが昼食を持ってこちらに歩いてきた。
「ありがとう。と言っても、俺はほとんど何もしていないんだけどな」
そう言いながら俺は俺の代わりに活動しているゴーレム達を振り返る。
小型、中型、大型の3タイプに分けて創造し、魔力で動かしている。
「そう言われてましてもこれほどのゴーレム……また魔力不足で倒れないでくださいね?」
「分かってるよ。心配してくれてありがとう」
炎帝との戦い以降、ラミィは少し過保護になった気がする。
ご飯は食べさせてくれるし、風呂に入るために湯を沸かそうと炎魔法で水を温めようとすれば「そんなことに魔力を使ってはいけません」と止めてくる。さらには、俺が眠るまで俺のそばから離れないのだ。
入院中だけならまだしも、退院してからも続いており、正直とても恥ずい。
後から気がついたのだが、あの戦いの後、俺のステータスは急速に成長していた。
ただでさえ強敵である魔族を2人倒しただけでなく、炎帝をも撃退したからだ。
あの雷魔法はレベルで言えば10相当のものだったが、何せ俺の残りわずかな魔力をかき集めて撃った代物だ。直撃でなければ完全に倒したとは言えないかもしれない。
なんの音沙汰もないのを見るに、かなり深手を負わせたのだろうが、まだ生きているかもな。
炎帝との戦いを経た俺のステータスはこんな感じ。
ロサリア・フォン・アスファルト
Lv45 魔力量28431/28500
【スキル】
料理:Lv10
剣術:Lv10
体術:Lv10
風魔法:Lv10
岩魔法:Lv10
雷魔法:Lv10
草魔法:Lv10
水魔法:Lv10
炎魔法:Lv10
氷魔法:Lv10
【E×スキル】
・七神の使徒
【状態異常】
古代龍の呪い《エラー》
相変わらず状態異常は治っていないが、レベルと魔力量が恐ろしいほど増えた。
レベルで言えば一気に37も上がり、魔力量もおよそ18000ほど増えた。
これは【七神の使徒】による【獲得経験値量10倍】が働いているのだろう。
「ご主人様? いかがなさいましたか?」
俺が考え込んでいたせいか、俺の顔を覗き込みそう聞いてくるラミィ。
「ちょっと考え事をしていただけ。このサンドイッチ、美味しいよ。ありがとう」
「そう言っていただけて何よりです」
「大分復興も進んできたな」
ゴーレムたちが作業をする現場を見ながらそう言う俺。
「そうですね。これもご主人様や当主様がご尽力くださっているおかげです」
「…………魔族を除けば壊したの俺と父さんだしな」
「何をおっしゃるのですか! ご主人様がいらっしゃらなければここまで被害を抑えられてはいませんでした。1人の死者も出なかったのはご主人様のおかげです!」
ふん、と鼻息荒く言ってくるラミィ。
最近、ラミィの感情表現が豊かになったように感じる。気のせいだろうか。
「あの……その……少しいいでしょうか?」
ラミィと木陰で休んでいると、後ろから声がかかり、思わず軽く飛び上がる。
「うぉっ!? ……ってヒィロンか。どした? そんな改まって」
そこにいたのはヒィロン。今はウコンジュシと共に復興を手伝ってくれている。
「その……アスファルト様と2人きりで話がしたくて……」
なんだ?
いつものキャンキャンしてる小型犬のよう態度はどこへやら、モジモジしていてすっごくしおらしい。
「私も同行します」
「2人で……話したいんですけど」
「ラミィ。ごめん、2人にしてくれない?」
少し不満そうな顔をしたラミィだったが、指示に従ってくれ、復興現場の方に戻っていった。
「それで話って? 礼ならもう言ってもらったしいらんぞ」
「その……伝えたいことがあるんですが」
「待った。その話し方何?」
堪えきれずにそう聞いてしまう。
だって気になるじゃないか。
いつもなら「話したいことがあるから少し時間よこしなさいよ」とかそんな感じで切り出してくるはずだ。
「ロサリオ……じゃなくてロサリア様は貴族ですから」
「敬語はいらん。ぶっちゃけお前とかウコンに敬語使われても気持ち悪いだけだ」
「気持ち悪いって何よ!」
「それそれ。それでいいよ。んで?話したいことって?」
「えぇと……どこから話せばいいか。あなたが魔族から助けてくれた時、実はその前に、アーティシア様が助けてくれていたの」
風神が?
この街は中心に大きな噴水の広場があり、そこから斜方上に大きな道路が伸びている円形都市。
そんな美しい都市を一望できる丘の上には、教会が建てられており、そこに芸術と風の神、アーティシアの神座がある。
普段はその教会から一歩も出ないはずの風神がわざわざ魔族から1人の人間を守るために外出した?
それだけコイツが神にとって価値のある人間なのか?
「それでなんでそのことを俺に?」
「アーティシア様が気になることを言っていたの。『地下に堕ちた七神のかつて力。それらは全て使徒に託した』って。そう言って消えた直後にロサリアが来たから、何か関係があるのかもしれない、って思って」
間違いなく俺のことだ。だが、風神の行動の意図が分かるまでコイツには伏せといた方がいいか。
「いやさっぱりだな」
「そっか。私の思い違いかも。急に時間作ってもらってごめんなさい。午後の作業も頑張って」
そう言って離れていくヒィロンを手を振りがら見送った後、俺はステータスウィンドウを開く。
EXスキルにある【七神の使徒】を叩くとずらっと見覚えのある効果が浮かび上がってくる。
・七神の使徒
天空の島に住まう神々が地上の平和のために派遣した者に授けられる称号。【神の遣い】効果を常時獲得。
【神の遣い】全スキル1獲得験值量10倍,魔力自動回復,HP自動回復
そこに並ぶのはどれも見覚えのある効果ばかり。
だが、ヒィロンの話を信じるならば、神々は全ての力を託したらしい。
これだけではないのだろうか?
風神はかつて、石化能力や溶解能力もあったと伝承が残っている。
もしかしたら俺にも…………?
いや、余計な詮索は止そう。今大事なのは、少しでも早く復興を進めることだ。
そう思い、俺は新たなゴーレムを作り始めた。
【あとがき】
明後日からカクコン用のラブコメを投稿します。
「美男美女しかいない学校でフツメンの俺がモテるんだが?」
みたいなタイトルになるんじゃないかな。
木曜日は祝日でお休みの方も多いでしょうし、気が向いた方は読んでくれると嬉しいです。
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