第24話 VS魔族with主人公 ②

「こんな岩で包んだところで…………あ? かってぇな! おい!」

「ザイン! これは魔力で作られたシェルターです。内からも外からも壊すのが難しいかと…………」


 正直、これで勝ちだろ。


 閉じ込めたし、世界眼がなければこれは斬れないし。


 案外楽だったかもな。


 感覚を確かめるように誰のかも分からぬ剣をヒュンヒュン振り回していると、地面から突如、腕が生えてきた。


 慌ててジャンプし、距離を取る。


「地下か!?」


 確かに、カッチコチの魔力壁で覆いはしたが、地面には何ら干渉をしていなかった。地面を掘りながらここまで進んできたということだろう。


 飛び退き体勢を整えようとすると、後ろから剣が迫ってくる気配がした。


 身体を崩しながら後ろを振り向き、気配の薄かった女の魔族に足をかける。


 バランスを維持できず転んだ女から剣を奪い取ろうとしたが、間髪を入れずに男が魔力で構築された腕を伸ばしてきた。それをさっき拾った剣で捌く。


 最小限の動きで、伸ばしてくる腕に剣を添わせて軽くいなす。


 何回か攻撃を捌いていると、いきなり俺の剣がパリィンと砕けた。


「は!?」

「おいおい! 随分とお粗末な剣を使ってるんだなぁ!? 魔族の腕は鉄よりかてぇぞ!」


 心臓目掛けて伸びてきた腕を蹴り落としてタンッと軽く飛び、男の顔を両足で全力で蹴る。


 反動で大きく飛んだ俺は木の上に降り、一旦息を整えた。


 マジか。魔力を流して強化していたはずの剣がこうもあっさり壊されるとは。


 想像以上にタフで想像以上に硬いな、魔族。


 女の方が持っている剣は斬れ味がよさそうだが何か普通の剣と違う部分でもあるのだろうか。


 ま、今はそんなこと気にしてらんねぇな。


 今俺が持ってる武器は護身用のそこまで強くない短剣のみ。


 なら、近づいて体術、遠くから魔法のヒット&アウェイ戦法だな。


 考え込んでいたせいでいつの間にか男を見失っていた。


 女はまだ倒れているが…………どこ行った?


「余所見たぁいいご身分で!」

「ッ!? 速すぎだろ!」


 いつの間にか背後から攻撃を仕掛けてきた男の腕をギリギリで躱す。


 男の武器は腕だ。


 普通の腕2本に加え、魔力で構築された伸縮可能な腕2本。計4本の腕がある。


 近くでは4本の腕での格闘術、少し離れていても伸縮する腕を使って攻撃してくる近距離特化型。魔力で身体を強化しているためか、スピードはかなりある。


 腕2本のこちらでは対処が追いつかない。


「どうした!? そんなもんか!?」

「…………チッ!」


 どんどん傷が増えていく俺の身体。このままじゃジリ貧か。


 大きく飛び退け、風魔法で上昇気流を作り、それに乗って屋根の上へ。


 おいかけてくる男に岩魔法『ロック・エッジ』をぶっ放す。


 俺の背後から次々と打ち出される石の弾丸を両手じゃなかった4本の腕で捌く男。今回は地面に転がっている石ではなく、魔力で石を作ってから打ち出しているため、少し魔力消費が多い。


「…………クッ!」

「こっ…………のヤロッ!」


 魔法の安定に集中しているように見せかけつつ、俺の右横にも数弾石を穿つ。


「気づいてんだよ。あれが幻影なことくらい」

『ッ!?』


 大きく飛び退きながら姿を現し、驚いたように俺を見つめる女。


 さっきまで倒れていたのは幻影だ。本体は水魔法を使って姿を隠していた。


 俺が男を仕留める寸前に殺しにくるつもりだったんだろう。


「ザイン! 危険です。ここは撤退を」

「人間一人に逃げ出すわけねぇだろ!」


 そう言いながら、翼を使って高く飛翔する魔族。


「おい人間。お前になくて俺にあるものが何か分かるか?」

「引き際の悪さか?」

「お前うぜぇな…………正解は、空を飛ぶ能力だ」


 そう言いつつ、さらに魔族は高度を上げる。


 女の方は後ろの方に下がり、これから来るであろう大技の範囲外に避けたのだろう。


 まぁ、わざわざ魔力の収束を待つ必要はないんだが。


「『ストーン・スティア』」


 地面から、二階建ての高さまで岩柱を伸ばす。


 建てた柱に横付けする形でどんどん新しい柱を増やしていく。


 空を飛べない?


 なら足場を作るまでだろ。


「んで? 空がなんだって?」

「マジかよ!?」


 魔力を練ることに集中していたせいか、それとも俺がこの高さまで上昇できるとは思っておらずに油断していたのか、がら空きすぎる男の胴に風魔法をぶち込む。


「『ウィンド・スピア』」

「グハッ!?」


 地面に突き落とし、俺は風魔法で速度を殺しながらゆっくりと降下。


 魔族を落とした時の衝撃で家が数件壊れてしまった。…………後で親父呼ぶか。


【あとがき】


 フレンドに頼めば一人くらいフリーナの特産品集めさせてくれるやろ~と思っていたのにみんなフリーナを引く恐怖。


 詰んだ。

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